谷 好通コラム

2001年08月04日(土曜日)

第184話 ブランドを棄てる時

昨日、東京有楽町の「国際フォーラム」という馬鹿でかい建物で
フランチャイズの説明会に出た

 

「カーセブン」という中古車買取りのフランチャイズ
ここでものすごく面白い話を聞いた

 

「カーネット車楽」という会社の社長の話
この会社、「カーセブン」のフランチャイズの加盟店なのだが
実は、「東京日産」というれっきとしたディーラー筋の会社
その中古車部門が、別会社となりフランチャイズに加盟しているのだ
そしてその店舗は、「カーセブン」一色であり、日産の日の字も無い

 

全国で、新車の販売台数が年間約500万台
これは年々減少している
また景気の動向で浮き沈みが激しい
中古の販売台数は、年間約300万台
微増している
また景気の動向によって大きくは変動していない
(この辺の数字は書き留めるのを忘れたので不正確)

 

新車の販売は
当然メーカーと関連の強い“ディーラー”で
そのほとんどが行われている
が、しかし
中古車は
ディーラー筋では全体のわずか20%しか販売されていなく
その80%、つまりほとんどが中古車販売専業店で販売されている

 

つまり中古車市場については
メーカー・ディーラーは、ほとんどそのビジネスにかかわっていない

 

ディーラーにおいては
新車の販売がそのすべてであり
中古車の部門にいるスタッフは
新車の販売について、失格のレッテルを貼られた人たちという風潮があった
設備投資も劣小であり
“陰”の部分であった
新車販売のために発生した下取り車の「処分」の部署でしかなかった
つまり新車販売のツケを押し付けられている
当然赤字

 

赤字体質が、逆に“甘え”を生んでいた
「どうせ赤字なんだし、誰も黒字になるとは当てにしていない」
がんばる動機、一生懸命になる動機が無い
不活性極まりない部署であった

 

しかし、不景気で新車の販売が減少し
ディーラーの経営は、総じて圧迫されていた
中古車部門の赤字を、必要悪として内包する余裕が無くなってきた
この部門の建て直しを
真剣に考えざるを得なくなってきた訳だ
しかし、このままでは、中古車部門の活性化をすることは難しい

 

“第一に、魅力的な商品「中古車」が入ってこない”
ガリバーなどの「車・買取り」のビジネスが普及し
人気車種がそちらに流れてしまい
売れる車が、“下取り”“オークション”では入ってこない
売れる商品“人気車種の中古車”が確保できなければ
勝負のしようが無い

 

ここで、この“カーネット写楽”の社長は
「分社化」し
「ノープランド」になる事を決意した
※カーネット写楽の社長

 

 

◎「分社化」「ノーブランド化」のメリット

 

?利益確保のためには、人気車種の確保がどうしても必要
人気車種は、「買取り」で確保するしかない
日産の看板を上げていたのでは、日産車しか来ない
他メーカーの車は来づらい

 

?他メーカーの人気車種に、自メーカーの車以上の値段をつけにくい
人気車種を確保できない(オークションでも難しくなってきた)

 

?ディーラーの中古車屋には、バラエティーに飛んだ品揃えがあるとは思わない
(日産車には人気車種が少ない)
ノーブランドにして、取り扱い車種を自由にする必要があった

 

?ディーラーで「買取り」をしてもらうと、新車の販売をされそうだ
ノーブランドにすることによって、その壁を無くする

 

?分社化によって、ディーラーの従属部署であることから解放される
スタッフに自助自立の気持ちを起こさせる
努力しだいで黒字に出来る。目標を持たせられる

 

?ディーラーは、厳しいテリトリーがある。分社化することによって
出店の自由度が飛躍的に増える

 

 

◎そして「カーセブン」に加盟した理由

 

?“ガリバー”も、積極的に検討したが、費用が高すぎる(カーセブンの倍)
いい立地がすでに押さえられている

 

?日産には「カウゾウ」という、日産ブランドの買取りショップが存在しているが
まだ未成熟であって、まだまだ時間と経費がかかりそうだ

 

?「カーセブン」は
すでに中古車販売で圧倒的な実績を持っている
“中古車販売専業店の大手”が、数社集まって作ったFC
中古車独自の「売り」のノウハウがすごい
※ディーラーは、新車の“売り”のノウハウだけ
※ガリバーは“買い”のノウハウだけ

 

?カーセブンの若いスタッフに可能性を感じた
※今回のセミナーを主催したカーセブンの若いスタッフ
屈託の無いナチュラルな語り口が、その力量を想像させた

 

 

現在4店舗が「東京日産」の看板を下ろし、「カーセブン」に変身
東京日産の名前はもちろん、カーネット車楽の名前もまったく無い
「カーセブン」一色で運営をしている

 

◎その結果

 

?若年層のお客が“ケタ違いに増えた”
これは、劇的であった。革命的な変化であった。

 

?買取り車の台数が、数倍になった。販売台数も200%以上にもなった
もちろん車種はバラエティーに富み、人気車種の確保も出来るようになった

 

?まだ黒字転換にまでは至ってないが、収益は以前に比べ
相当に改善された

 

?スタッフが、目に見えて明るくなり、活性化された

 

5号店と、6号店がまもなく営業を始めるそうだ

 

もちろんいい事づくめでは,なかっただろう
それなりに苦労もされたのだろうとは思う
しかし
タテ系列の呪縛から開放され
商売本来の目的
「客に喜んでもらうことによって、利益を出す」ということを
一生懸命追及できるようになった事は
確かなようだ

 

日産が、ひとつの部門において
メーカーの看板を下ろしてまで、利益を追求し
企業としての競争力を、高めようとしていることは
驚くべきことではないだろうか

 

そして
ディーラーという組織が
中古車販売専業者という
自分よりも明らかに「下」に位置づけていた人たちの
中古車販売ノウハウを
ロイヤリティーを払ってまで、素直に得ようとしていることは
前の時代では考えられなかったことだ

 

それぞれの企業が
系列とか
メンツとかに、こだわらず
利益を出すという、企業本来の目的に向かって
変身し始めていることに
時代を感じ
それを実行した人たちに
敬意の念を禁じ得なかった

 

※バブルの時代に出来た東京有楽町の「国際フォーラム」の中
信じられないほどの「空間」が、あの時代の豊かさを感じさせる

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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