谷 好通コラム

2013年02月26日(火曜日)

2.26.本当に怖い話だと思いました

「不二家」は創業100年の老舗であり、
誰でも知っている優良企業であり名門です。
その不二家が約6年前、
期限切れの材料を使って製品を作ったと問題になり、
長年かけて築き上げた信用を、一瞬のうちに失墜させてしまいました。
長期に渡る生産中止、企業縮小を強いられ、多くの人が職を失い、
やっと山崎製パンの子会社となって再建の道に入り、
つい最近、ようやく配当を出せる会社にまで
復興したとニュースに出ていました。
新しい会社幹部の血の出るような努力があったとも伝えていました。

 

長い年月をかけ、
数え切れないほどの人が、汗と涙で築き上げてきた企業の、
もっとも大切な財産である「信用」が、
期限切れの材料を使うなどというケチ臭い、情けない行為で、
一瞬のうちに吹き飛んでしまうものです。
信用を失った会社はどこまでも堕ちていくしかありません。
たくさんの人が職を失い、つらい境遇に落ち、
従業員の子供たちや家族は後ろ指を指され友達を失ったのでしょう。
何とも恐ろしい事実です。

 

企業が大きくなると、
たとえばアイ・タック技研㈱のようにまだまだ小さい会社であっても、
従業員が200人を越すような規模になってくると、
一人一人の価値観がバラバラになってきます。
あってはならない事、してはいけない事が、
目先の損得や、身勝手な感情や計算によってされてしまうことがあります。
しかも、
その多くが決して本人に悪気があってするのではなく、
本人としては良かれと思ってされることも多いのです。
自分はいいと思ってする事が、
とんでもない事態を生み出してしまう可能性は、
人数が多くなればなるほど「加速度的」に増えます。

 

人数が少ない時はそれでも、誰かが全体が見えているので、
間違いは事前に止められるものですが、
人数が多くなると「分業化」が進んで、
それぞれが全体が見えなくなってきて、
一つの行為が重大な事態を呼ぶものとは気がつかないまま、
成されてしまうことがあります。
だから、不測の事態の危険性は、人数の増加に正比例で増えるのではなく、
それ以上の加速度的な増え方をするのです。

 

 

それを防ぐ良い方法があります。
一人一人が自らの言動や行動をいつも明らかにしておく習慣です。
自分が言っていること
自分がやっていること、
自分がこれからやろうとしていることを、
いつも、みんなあるいは一定の人に明らかにしておくことです。

 

今はITが発達しているので、
「メールにいつもC.C.を入れる。」
「スケジュールソフトを常に更新し公開しておく。」
たったこれだけのことで、確実に実現できます。
ある意味、報・連・相はもう時代遅れで、
この二つだけで必要な報・連・相の80%までが実現してしまいます。
(あと20%は顔を突き合わせてのアナログなコミュニケーションで)

 

面倒な報・連・相に時間を裂かなくても、
「メールにいつもC.C.を入れる。」
「予定ソフトを常に更新し公開しておく。」
普段の行動としてこれを実践すれば何の手間もなくできます。

 

しかし、これが本当に出来ません。
アイ・タック技研㈱も、過去に、
かなり一生懸命、実行しようとしたのですが、
今でも実行できている人はごくわずかです。

 

その中でも大阪営業所は、
全員(たぶん)が実行しています。

 

外部のお客様へのメールから部署内の連絡まで、
例外なしで上司、部署との共有を実行しています。
だから、大阪営業所全体がどんな所へ、どんな働きをしているのか、
どんな仕事をしているのか、よく理解できていて、
なぜ実績の伸びが高く安定しているのか理解できています。
だからチームワークがいいのでしょうし、
スタッフのみんなの仕事が一つの方向に向いているのが判ります。

 

時々、私が「それはちょっと間違っているのでは、・・」とコメントを送ると、
山戸所長がキチンと説明し反論してくれます。
それで私達はものすごく納得して、また安心して仕事を任せていけます。
スタッフはそれを見て、安心して山戸所長の指示を守り、ついて行けます。

 

他の営業所、店舗、部署も、まあまあはやっていますが、
やれている人とそうでない人がいて、
大阪営業所ほど全員やれているわけではありません。

 

実行できていない人の問題ははっきりしています。
C.C.を付けるかどうかを、メールによって選んでしまっているのです。
「このメールはC.C.を付けるべきだけど、こっちのメールは付ける必要ない。」
C.C.を付けるか付けないかを
メールを送る本人が選んでいるのです。
これをやっているうちは、絶対に出来ません。

 

「C.C.を付けるべきか、いらないか。」その基準は、
あやふやなもので、「付けなくてもかまわないメール」の基準の中に、
そのうちに、「C.C.を付けたくないメール。」や
「付けにくいメール。」が混じってきて、
しまいには、上司のC.C.を「付けられないメール」が送られるようになります。

 

 

上司のC.C.は付けられないメール、
つまり上司には見せられないメールとは、一体なんでしょうか。

 

スケジュールソフトの書き込みも同じようなものです。

 

もう一つ出来ない理由があります。
見張られているようでイヤだ。
監視されているようでイヤだ。
覗かれているようで・・・C.C.はイヤだ。
これはかつて、
営業マンが「携帯電話」を持たされるようになった時、
時代遅れの営業マンが、携帯を持つのを嫌がった理由とまったく同じです。
これは、子供っぽくってクダラナイの一言しかありません。

 

こんなことは、
みんなを監視したいから言うのではなく、
会社を守り、みんなの生活を守りたいから言っているのであって、
つまらないことで、かたくなにC.C.をつけない恐竜のような輩には、
いい加減うんざりします。

 

ある意味見習うべきは東京の萩原君かもしれません。
彼は必ず自分のメールにC.C.を入れているようで、
そのメールの中の文章に対して、
私からしょっちゅう「お前、何でこんな書き方しかできんのか」と、
注意のメールが送られますが、
「以後気をつけます。」と、懲りずに自分のメールに部署C.C.を入れてきます。
そんなやり取りで、いい加減にしろ、とは思っても、
彼をあきらめる気持ちには決してなりません。
むしろ、どこまでも付き合うぞ、の気持ちです。

 

ドジだとは思っても、信頼できます。
少なくとも、私は彼のことを良く知っているわけですから、
何かヘマをやれば、すかさずサポートできるのでそれほどは心配しません。
むしろ。隠す人間には、いっときの油断も出来ないのです。

 

上司あるいは誰かに言うべき事。
それがたとえば、不二家の場合ならば、
使用期限の過ぎた原料を使って製品を作ってしまった”以前”に、
「それは絶対にやるべきことではない」と、
誰かが、上司あるいは誰かに言うべきだったのでしょう。
あるいはそういう行為があるということが、
C.C.で誰かに知れていれば、防げたかもしれません。

 

材料を無駄にしないという方針が、
どこかでゆがめられて、
期限を過ぎた材料を使う行為になってしまったのは、
誰かがどこかの段階で知るべきが、知らないまま始まってしまったのでしょう。
そんな会社を滅亡に陥れるような大きなリスクがあるだけの行為を、
会社の経営者のみんなが知っていて
そのままやらせていたとは到底思えません。
知ってさえいれば、誰かが止められたはずであり、
不二家に関わる多くの人たちの不幸はやってこなかったはずです。

 

物事の事柄によるでしょうし、
その人のポジションにも依りますが、
それが重要であることを知っていて「言わない。」のは、
本人的には「言わなかっただけ」ですが、
客観的に見れば、言うべき事柄を、
知っていて言わない「背任」という「犯罪」にすらなることなのです。
意外と気がつかない落とし穴です。

 

つまらぬことが原因で、
まったく予測しなかった不測の事態が起こって
不二家のようになってしまったら、すべての人が不幸になるだけです。
恐ろしいことです。本当に怖い話です。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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