谷 好通コラム

2012年05月09日(水曜日)

サービス業の特異性.その3(カレーと洗車・コーティング)

カレー専門店のCOCO壱番屋さんは、本社が愛知県一宮にあって、
国内外に1,300店舗以上のチェーン店を展開しています。
食材は愛知の本社と栃木、佐賀の工場で一括製造され
全国の店舗に配送しています。
典型的なセントラルキッチンと呼ばれる形態の外食産業です。

 

店舗で行うのは、トンカツなどのセットされている揚げ物を揚げることと、
辛さに合わせてカレーのルーを調整して作ること、
それらを盛り合わせて、お客様のご注文のカレーを作る。などなどで、
造られたカレーは全国どの店舗で食べても
“味”で期待を裏切られることはほぼありません。
送られてきた半調理済みの食材を決められたようにキチンと造れば、
キチンとしたCOCO壱番屋のおいしいカレーが出来るのです。
訓練された店員さんが、手際よく造ってくれる様は気持ちがいいものです、

 

この店舗の本部の社是は「ニコニコ・キビキビ・ハキハキ」で、
スタッフさんはニコニコ、キビキビ、ハキハキを、
かなり徹底されていて、
概して気持ちいい店舗ばかりです。

 

私はCOCO壱番屋のカレーが大好きなので、
月に何度か食べるCOCO壱番屋ファンの一人です。

 

しかし、何年か前に、名古屋市のあるCOCO壱番屋に入った時、
なんとなく店が汚く、
店員さんの元気もなくて、歯切れが悪く、
少し気分が悪かったことがありました。
COCO壱番屋さんでは
「少し気分が悪い」とお客様が感じることを、
ホスピタリティに欠けるという言い方をするようですが、
店が汚かったり、空気がよどんでいたり、
スタッフの元気がなかったり、返事が鈍かったり、そんなことなのでしょう。
味はどうだったのか憶えていず、記憶に残るほど変ではありませんでした。

 

COCO壱番屋のホームページを見ると、
7年ほど前までは、急激に店舗数が増えているのに、
それ以降は、あまり増えていません。
聞いた話では、
増加する店舗の分だけ
ホスピタリティに欠けた店舗を次々に閉店し、
一般のFC店の募集もやめて、
ほとんど増えない時期があるのだそうです。

 

カレーの味は食材の工場生産と、
店舗での調理マニュアルがしっかり実行されていれば、
滅多に味が変わることはありませんが、
カレーのような単純な料理は”味”だけではなく、
店舗が気持ち良くなければ、お客様がリピートしてくれない。
感じの悪い店では、いくら料理の新メニューを提供したりしても、
「あの店感じ悪いね。」でお客様が離れてしまうし、
味の面でも不安が残る。
チェーン店全体のイメージが悪くなるのでは、
そういう店舗があること自体、むしろマイナスだと考えたのだろうと思います。

 

そこで新規出店を一生懸命やりながら、
そのかたわらで、全体の店舗数が減少しないレベルで、
ポスピタリティの欠けた店舗を積極的に閉鎖して行き、店舗品質を守った。
そういうことらしいです。

 

サービス業とは
「店舗で、店舗の設備と道具、材料を使って、
店舗のスタッフの技術と労力で商品を作り、提供する。」としました。

 

しかし提供する商品が人間の技術で造られる以上、
その品質には人間の技術次第でムラが出ます。
だから、まず、出来るだけ多くの部分を工場で、同品質で造り、
人間の手が加わる部分を極力少なくして、
店舗で作る部分は、その技術をマニュアルで決め、
訓練で技術の均質化も図り、
出来上がった商品の均質化を図ります。

 

しかし、造るその人が、お客様の為においしいカレーを造る気がないと、
おいしいカレーは出来ないのです。
マニュアルどおりに造れば、
気持ちがなくても、同じようにおいしいカレーが出来るように思えます。
しかし、
きれいな店で、
ハキハキとした口調で注文を受け、
キビキビとした店員さんが造り、ニコニコと出してくれたカレーと、
汚い店で、
グズグズとした口調で注文を受け、
ダラダラとした動きで造り、ブスっとした表情で出してくれたカレーでは、
おいしさはまったく違うだろう。
味自体もたぶん、ずいぶん違うことは容易に想像できます。

 

いくらセントラルキッチンで均質な食材が提供されても、
いくらマニュアルで店舗でのカレーの造り方を訓練されても、
お客様に、
おいしいカレーを、
食べてもらいたいと思わなければ、
マニュアルをキチンと実行しようとはしないだろうし、
お客様に気持ちよくしていてもらいたいと思わないので、
店をきれいにしておく気にもならないだろうから、店は汚いし、
お客様を歓迎していないので、キビキビもハキハキもしない。
それでは、決しておいしいカレーは出来ないのだと思うのです。

 

お客様を歓迎し、おいしいカレーを食べて、喜んでもらおうと思わなければ、
決しておいしいカレーは出来ないのです。

 

これはまさにサービス業だと思いました。
ホスピタリティとは、まさにお客様を歓迎する気持ちであり、
お客様に喜んでもらいたいという気持ちなのでしょう。

 

 

私たちの洗車やコーティングでも
同じようなことが言えるのではないかと思うのです。

 

決まった材料、ケミカルと、道具、設備を使って、
決まっている施工マニュアルに沿った技術でキチンと施工すれば、
所定のキレイさ、所定の性能を創りあげることは出来ます。
間違いなくお客様には喜んでいただけます。

 

しかし、お客様が望んでいるきれいさもさまざまです。
だから、
お客様が望んでいるきれいさが、どんなきれいさなのか、
コーティングをしたあと、どんな洗車をどこで誰がされるのか、
そんなことをキチンとお聞きし、
お客様が望んでいるキレイさを知る必要があります。
さらに、お客様のお車の形はさまざまであり、
汚れ方も千差万別で、洗車やコーティングの施工も、
まったく同じような作業では、同じようにはきれいになりません。

 

お客様の車を、本気でキレイにしようと思わなければ車はキレイにならず、
お客様の望むキレイさを知らなければ、
お客様が喜ぶこともありません。
なにより、本気でお客様に喜んでもらおうと思わなければ、
お客様を喜ばせる事はできません。

 

その代わり、本気で、お客様に喜んでもらおうと思って、
キチンとした技術で、キビキビと洗車・コーティングした車は、
とても、普通の人が洗車したり、市販のコーティング剤で施工したものとは、
別次元のキレイさが実現できて、
間違いなくお客様は、ものすごく喜んでくれるでしょう。

 

本気でお客様に喜んでもらいたいと思ったら、
いつも店舗は気持ちよくキレイでしょうし、
お客様との会話もハキハキすることでしょうし、
作業も、動きも、自然にキビキビしたものになります。
施工マニュアルをはずしたり、汚れを見逃したり、
コーティング漏れを造ったり、拭き残しを作ったりはしません。

 

サービス業とは、
「店舗で、店舗の設備と道具、材料を使って、
店舗のスタッフの技術と労力で商品を作り、提供する。」だけでなく、
本気でお客様を歓迎し、
本気でお客様に喜んでもらいたいと思った時に、
成功するものだと思います。

 

カレー屋さんもそうであるように、
洗車・コーティングのビジネスも、
まさにサービス業だと思う理由です。

 

COCO壱番屋さんのホームページを見て、
会社の「社是」を「ニコニコ・キビキビ・ハキハキ」にしていることを見て、
驚いたと同時に、そんなことを考えました。

 

 

ブロッケンの輪

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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