2011年05月27日(金曜日)
2795.長崎その2.「与える」「上げる」「教育する」
「与える」「上げる」「教育する」とは
長崎でお会いした尊敬する経営者のおっしゃったこと。
「与える」とは、
安心して働けるために安定した生活が出来る所得と環境をまず与える。
みんなが安心して働ける会社にするには、
安定した会社の財務内容を構築することが最低条件。
それを安定して持続させるには販売実績を飛躍的に上げることが必要。
そのためには働く人が、その気にならなければならない。
みんなで飲んだり、いっぱい話をしたりして、会社との一体感を与え、
この会社で一生懸命に働くことが、
会社のためになり、それが自分のためになる会社であること理解させ、
一生懸命働くことに安心感を「与える」。
「上げる」とは、
みんなが一生懸命働いて、成果を上げたら、
はっきりとみんなが解る形で、給与を上げ、待遇を上げ、地位を上げる。
自分が一生懸命働いて、努力すれば、
それが必ず“公平に”評価される仕組みを持った会社になったことを実感させる。
働いた分、きちんと評価され、
その評価が「プラス」つまり「上げる」という形で
働き、成果を上げた人に返ってくる仕組みを構築し、実践する。
「教育する」とは、
文字通り、教え育てること。
「知識・技術研修」「訓練」「OJT」「自己啓発」、
すべての人が、公平に、自己の能力を高めるための教育を受ける機会を作る。
積極的に学ぼうとする人に、学ぶ機会を与える。
どの項目も当たり前と言えば当たり前のことだが、
肝心なのはその順番だと思った。
普通は、
まず「教育」をして成果が上がったら「上げる」「与える」の順番だ。
つまり、会社としてまず社員教育をして、
一生懸命働いてくれた結果、成果が上がったら給与を上げ、地位を上げる。
その結果、会社の業績も上がり、財務内容も改善され、
社員が安心して働け、安定した生活を得られる環境を与えられる。
そう、普通は「教育する」「上げる」「与える」の順番だ。
ところがこの会社の場合、
「与え」「上げる」「教育する」の順番になっている。正反対。
ここが肝心なところだ。
この会社は、以前に大きな投資に失敗して経営状態に窮していた。
だから目先の資金繰りに追われ、目先の損得に目を奪われて、
お客様に感謝し、喜んでいただく姿勢を見失い、
目先の売り上げだけを追い、お客様の満足を忘れた。
結果的に多くの社員さんが一生懸命働く意味を見失い、
働く意欲を見失っていた。
顧客満足CSと従業員満足ESとは必ず連動するものである。
これは経営の鉄則であり例外はない。
しかし会社の資金的都合が優先され、
CSがおざなりになり、そこにESが存在するべくもなく、
満足を求める本来のお客様が離れて行って、業績は下がる一方。
やがて破綻に追い込まれたこの会社に、送り込まれたのがT副社長。
日本でも有数の大企業であり超優良会社の精鋭であったT副社長は、
この会社に着任と同時に
当時の社員さん達みんなと一通り「飲んで」コミュニケーションを持ち、
現状の把握と、これからは違うと一人残らずに伝えた。
ここに根幹となるポイントがある。
会社がCSとESをおざなりにして、
士気が下がりきっている状態のまま、まず教育をしたとしても、
技術の研修でも、知識の研修でも
ただ「研修を受けさせられている」であり、
そこで教えられる事を
自分の身に付けることに対する目的をまだ持っていないから、
みんなただ受けるだけ、
時間と費用が無駄になるだけとなり、
決して良い成果が生まれるものではない。
良い成果を上げられなければ、会社の実績は上がらず、
みんなに安心して一生懸命働けるような環境を与えることは出来ない。
だから、順番が逆になる。
まずやるべきは、
従業員と会社は一体であり、
お客様の満足を創り上げる共通の目的を共有している意識を徹底させる。
この活動の主体が、まず「飲む」と言うことだった。
お客様の満足を作り上げることが、会社の実績を上げる最も有効かつ唯一の方法である。
それを従業員と会社が一体となって実現することで、
みんなが安心して働けるような安定した経営基盤を造り出す事になり、
それが頑張ってくれた従業員一人ひとりに安心を「与える」ことになる。
安心して頑張り、働けるような環境を造るための業績アップを共通認識として「与える」。
まず「希望を与える。」
あるいは「夢を与える。」ということだろうか。
そして、みんなが一生懸命に働いて会社の実績を上げることが、
直接みんなの所得が「上がる」ことにつながり、
待遇が「上がり」、地位が「上がる」ような「公平な評価の仕組み」を作る。
徹底して「公平な評価の仕組み」を作る。
みんな誰だって、安心したい。安定したい。所得を上げたい。
待遇を上げたい。地位を上げたい。
そのためには、
自分自身と自分たちの店舗の
「接客力を上げたい。」
「技術力を上げたい。」
もっと「知識を得たい。」
「・・・たい」ほど強力なパワーはない。
みんなが学びたいと思った時にこそ、
あらゆる「教育」がもっとも効果がある。
真剣に学びたいと思って受ける研修ほど「力が着く」ものだ。
十分に力を着けた人たちが、
お客様の満足を作り出したいと思って、
心を込めた「接客」「技術」「知識」を活かした仕事は、
十分に付加価値が高く、
お客様の満足を作り出さないわけがない。お客様は喜ぶ。
お客様が喜ぶと、社員さん達も嬉しい。
みんなが精一杯に作り出した商品であり付加価値の高いサービスを
お客様は「欲しい」と思う。
お客様が「欲しい」と思って買っていただくのだから、
妙な値引きなど必要ない。
正々堂々と提供した付加価値に見合った、あるべき報酬を得る。
きちんと付加価値の高い良い物を、良い物として買っていただくお客様は、
いいお客様とも言える。
そんな店にはいいお客様がいっぱい集まる。
CSとESが見事に連動して実現した。
百人が百人とも力を出すのだから、これこそ百人力だ。
業績はみるみる上がって、悪かった業績も一挙に好転し、
銀行に管理されていたような会社の財務内容が、
なんと無借金会社にまでになった。
たったわずか2年半の出来事である。
まず
「希望を“与える”。」
「公平な評価の仕組みを作り、給与や待遇を“上げる”。」
そして、
みんなに「・・・たい」という意欲を作り出して、
徹底して“教育して”力を着けさせる。
この順番が正解なのだ。
私の勝手な解釈ではあるがたぶん正しいと思う。
これは、会社の建て直しの時だけでなく、
普通に経営されている会社においても、
より活性化を図りたいなら同じことが言えるのだと思う。
わが会社、わが経営を自省する。
私は、たくさんのことをこの会社、
とりわけ副社長から学んだ。
一昨日は「花月」で「男たるやいかにあるべきか」を学んだ。
そしてたくさんの話の中から、「与える」「上げる」「教育する」の意味を学んだ。
遠野副社長。
男と経営の「芯」を教えていただき、心より深く感謝いたします。