2011年02月16日(水曜日)
2723.これからどこへ行くのか中国
書き始めたのは中部空港から上海へ飛ぶ「中国東方航空」の飛行機の中。
先日ドイツから帰ってきたばかりの開発増田課長と二人で上海に向かっている。
急いで上海に行かねばならない用件が出来たのだ。
上海のタオル工場、陶さんが、
綿花の相場が上がり過ぎて、
このままでは赤字が膨らむばかりで工場を続けられない。
と言ってきた。
変な脅しや駆け引きではないことは陶さんの真面目な性格から分かる。
けっこう深刻な状況であり、放っておくわけには行かないと考えた。
今、中国では、タオルやTシャツなど
多岐に使われる布地「綿・コットン」の原料である「綿花」が
異常に値上がりしているらしい。
“投機的”な資金が大量に流れ込み、
投資家や卸問屋が「綿花」を買い占めて、値段を吊り上げていると言うのだ。
中国人は、投機が大好きだ。
博打が大好きと言ってもいい。
一所懸命働いて「稼ぐ」よりも、
値上がりする物に投資して「儲かる」ことが大好きだ。
だから「株投機」「商品先物投機」「不動産投機」に一般庶民までが熱中する。
汗水たらして一生懸命働いて「稼ぐ」より、
“頭”と”感”を使って、高くなる物に投機し、「儲ける」ほうが利口で、
アメリカ的にいえば「クール」と言うことか。(違うかもしれない)
「綿花価格」の暴騰は、中国の繊維産業に深刻なダメージを与えるかもしれない。
当分、高い価格が続きそうだ。
それに加えて、人件費の高騰。
中国の経済は想像以上に”モロイ”のではないかと私は思っている。
中国経済の強さは
まず「人件費の安さと、数の多さ」
何年か前まで、中国の労働者の給料は、日本のそれの二十分の一以下であり、
その労働者の人数は、
数え切れないほど多くいる。これが中国の強みだ。
有り余るほどの多数の人々が、
世界の先進国の労働者の二十分の一ほどの給料で働けば、
その製造コストの低さは圧倒的であり、
「安さ」の一点で、世界中の工業国から多くの仕事を奪い、
中国は世界の工場となった。
繰り返すが、中国の世界に対する競争力は
「労働者の安い給料であり、圧倒的に多い数」だ。
この一点に注目して考えると、
今後の中国が見えてくるかもしれない。
その中国で、今、人件費がすごいスピードで上がっているそうだ。
私が中語に通い始めたのは2002年だが、
その頃の、内陸から出てきて洗車場で働く若者の給料は、
400元/月くらいが普通であり、
それに保険と食事、アパート代が加わって
実質700元/月ぐらいかかる。
日本円にすると、15円/元×700元=10,500円/月
それが今では、
上海の最低賃金で1,120元/月
実際には保険と食事、宿泊を入れると実質2,000元/月くらいかかるという。
元に対して少し安くなった日本円に換算して、
13円/元×2,000元=26,000円/円。
わずか10年足らずで約2.5倍になった計算になる。
しかも特にここ二三年で急速に上がっているという。
これは実際に上海で事業を行なっている中国人から聞いた話だ。
なぜここまで上がったのかは色々な理由があるのだろうが、
いずれにしても、中国の強みであった
「労働者が安い給料であり、数が圧倒的に多いこと」が、確実に崩れ始めている。
それに輪をかけるように、
投機的なマネーゲームが中国国内の原料の高騰を招き
MADE IN CHAINAの製品価格を押し上げて、
国際的な価格競争力を急速になくしてきているのではないか。
そんなことを思った。
上海に向かう飛行機から左手に「鳴門大橋」が見えた。