2010年12月19日(日曜日)
2681.「もしドラ」の驚異的なベストセラーの基点
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーのマネジメントを読んだら」を買った。
発売以来わずか6ヶ月で100万部を突破し、
今では200万部を越しているという大ベストセラーだが、
表紙が「アニメの超ミニセーラーの女の子」なので、
いい年こいたオッサンが買うのは、ちょっと抵抗があった。
しかしさすがにベストセラーだけあって
中身はすごく面白かった。
ストーリーもまるでアニメレベルのシンプルさで非常に面白い。
しかし、まだ読んでいる途中なので、
今ここに書こうとしていることはこの本の内容のことではない。
なぜこの本が大ヒットになっているかを少し考えてしまったのだ。
本の中で取り上げられている「ドラッガー」とは、
経営を勉強した人ならば誰でも知っているその世界では超有名人なのだそうだ。
でも私は経営を学校で習ったわけではないし、
(私は「交通機械学科」であった)
起業してからも本などで経営を勉強したことがあまりないので、
ドラッガーを知らなかった。
そしてドラッガーの著書の中でも一番有名、かつ、
一番売れた本が「マネジメント」であることも、
それが経済書としては世界一売れている本であることも知らなかった。
だから、
私が「もしドラ」を買ったのは
①「もしドラ」が「ドラッガーの”マネジメント”」を題材にしているからではない。
私は野球にはまったく興味がない。
昔は、地元が名古屋なので、なんとなく中日ファンであったが、
仕事をし始めたら何故かまったく野球に興味がなくなって、
今では中日ドラゴンズの監督が誰であるかも知らない。(落合かな?)
同様に高校野球にもまったく興味がない。
だから、
②主人公が「高校野球の女子マネージャー」だから、この本を買ったわけではない。
「もしドラ」を、まだ半分ちょっと読んだだけではあるが、
内容的には非常に面白く、
「ドラッガーの”マネジメント”」が
ビジネスの本質を突いていて、きわめて勉強になることは分かった。
それを、高校野球の女子マネージャーという「極めて普通の人」に写して、
考えたことと行動を物語にしている手法は、
読みづらい経済書を、非常に解りやすくしていている。
ストーリー自体も非常に面白い。
本当の経済書を読むには、ある程度の覚悟をしないと読み始められない。
しかし、この本はその題名からしても、
「評判」からしても、読みやすいだろうことは解ったので、
私も「さぁ、読むぞ」の覚悟も決心も抵抗も必要なく、
③読みやすそうだから、気軽に買って、読んでみようかなと思えた。
そして、この「マネジメント」の内容が「会社の経営」だけでなく、
「もしドラ」においては野球部のマネジメントに置き換えられているので、
「家庭」「交友・人間関係」「普段の仕事」のマネジメントにも活用でき、
読む人が経営者あるいは経営に関わっている人でなくても、
④「広く多くの人に役に立つのだろう」ことが解る。
だから、これなら⑤「みんなにも是非読んでもらいたい。」と思った。
この気持ちが「評判」につながっているのだろう。
つまり、私は、この⑥「もしドラ」の「評判」を聞いて買ってみようと思ったのだ。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーマネジメントを読んだら」は、
読むとその価値がよく分かる。
ドラッガーはマネジメントの本質を突き、
具体的に行動が示され、読んだ人に「これなら自分にも出来る」と思わせてくれる。
「もしドラ」ではそれを難しい言葉ではなくて、
普通の女の子に写して表現しているのは見事だ。
これは広く多くの人に高いレベルで「役に立つ」本であろう。
それがこの本、この商品としての「付加価値」である。
この商品は、その代金に比して、きわめて高い付加価値を持っていて、
多くの消費者にとっては間違いなく買って得する商品なのだ。
その評判が、評判を呼んだから、この本はベストセラーに成るべくして成った。
しかしその販売に当たっては、
「内容」、「面白さ」、「みんなに役に立つ」
つまり「付加価値の大きさ」、をうまく、そして早く表現しなければ、
6ヶ月で100万部突破、
今では200万部を越したというような驚異的な販売は実現できなかっただろう。
最初たくさん売れなくても、この本の良さを解った人が、
「みんなにも是非読んでもらいたい。」と思って話をすれば、
いわゆる「口コミ」として「評判」を作り、
たくさんの人が買うようになるだろう。
しかも、現代では「インターネット」が普及しているので、
ブログとかツイッターなどで口コミの速さは昔とは比べ物にはならない。
とはいうものの、
ブログとかツィッターなどは主に若い人が使うもので、
「経済学の本」など、この人たちはあまり買わないだろう。
インターネットの力をもってしても最初の発信源が少なくては拡がりが遅い。
「もしドラ」は、若い人が気軽に読める本であり、
解りやすい物語になっている特長を、
若い人に解りやすく表現することが、ベストセラーへの早道となる。
本のキャッチコピーを工夫するか?
「世界一売れた経済書”ドラッガーのマネジメント”若い人にもすごく解りやすい本!」
とか、
「会社のマネジメントを家庭にも活用できる本!」
とか、
「高校野球の女子マネージャーがドラッガーを実践したら、甲子園に行けた!」
とか、
「世界の一流経営者が必ず読むドラッガーのマネジメントが、簡単にわかる本!」
とか、
言葉でこの本の良さを表現しようとしても、
若い人が「買ってみたい」「読んでみたい」と思うか、・・・無理だろう。
この「もしドラ」が短期間で大ヒットし
ベストセラーになったポイントは、ひょっとしたら、
表紙の「超ミニスカートのセクシーなかわいい女子高生の漫画」なのではないだろうか。
「マネジメント」というとっつきにくく難しいテーマの本の表紙に、
「超ミニスカートのセクシーでかわいい女子高生の漫画」は、いかにも違和感がある。
しかし商品はまず「目立つ」ことがまず大事。
「超ミニスカートのセクシーでかわいい女子高生の漫画」が表紙になっている本は、
⑦山のような「経済の本コーナー」の中で強烈に「目立つ」。
しかも、その違和感が、
その本が、⑧難しい内容ではないことを物語り「若い人向けの本」を表現している。
「超ミニスカートのセクシーな女子高生の漫画」が表紙の本が、
「経営学」がテーマの読み難い本だとは誰も思わない。
事実、「もしドラ」はまったく難解ではなく、非常に読みやすい本だ。
それでも、ドラッカーの言う経営の本質、
⑨マネジメントの本質をこの本は見事に突いているので、
これを読んだ広くたくさんの人が、
「みんなにも是非読んでもらいたい。」と思うだろう。
⑩若い人達は「ブログ」「ツイッター」という現代の口コミで、評判を書きたてる。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーを読んだら(もしドラ)」は、
☆「超ミニスカートのセクシーなかわいい女子高生の漫画」の表紙のおかげで、
⑦山のような「経済の本コーナー」の中で強烈に「目立つ」存在であった。
しかも、
「超ミニスカートのセクシーなかわいい女子高生の漫画」の表紙のおかげで
⑧難しい内容ではないことを物語り「若い人向けの本」を表現している。
③若い人が、読みやすそうだから、気軽に買って、読んでみようかなと思えた。
そして読んだら、
読みやすく、解りやすくて、
⑨ドラッガーの表すマネジメントの本質をこの本は見事に表現しているので、
読んだ人は、
④「広く多くの人に役に立つのだろう」と思った。
⑤そして「みんなにも是非読んでもらいたい。」と思った。
そして、
⑩若い人達は「ブログ」「ツイッター」という現代の口コミで、評判を書きたてる。
その結果、
⑥私は「もしドラ」の「評判」を聞いて買ってみようと思ったのだ。
①「もしドラ」が「ドラッガーの”マネジメント”」を題材にする本だから。
②主人公が「高校野球の女子マネージャー」だから、この本を買ったわけではない。
いい歳をしたオッサンである私には、
「超ミニスカートのセクシーなかわいい女子高生の漫画」の表紙は、
買うことに対する抵抗でしかなかったが、
⑥私は「もしドラ」の「評判」を聞いて、買ってみようと思ったのだ。
しかし、考えてみると、
私が買ってみようと思った動機「もしドラの評判」の「基点」は、
「超ミニスカートのセクシーなかわいい女子高生の漫画」の表紙だったかもしれない。
だとしたら、
この本の表紙に、
「超ミニスカートのセクシーなかわいい女子高生の漫画」を採用した人は、
マーケティングの天才かもしれない。そんなことを思った。