2010年11月02日(火曜日)
2646.変わった上海と、変わらない上海
上海に来るのは久しぶりで、たぶん1年以上のご無沙汰だ。
中国では色々な沢山のことがあって、
一時は存在した上海事務所も閉鎖し、
アイ・タック技研として直接の中国での活動を停止してから三年以上経つ。
今は上海の頼さんがKeePer製品の中国総代理店として活動し、
香港では蔡さんが香港内と東南アジアでの活動をしてくれている。
今は、本当にこれで良かったと思っている。
過去にはかなりの金額の実にならない投資もしたし、
社員スタッフも何十回となく中国に行き、
私自身も約七十回も中国とりわけ上海に出かけたが、
結果としてはほぼ無駄であった。
その上で、今は、頼さんに任せることになって良かった。
何年か前に方針を大きく変えて良かった。
頼さんの洗車屋としての仕事も。やっと安定してきて、
持っている店舗六軒のうち三軒をキーパープロショップとして名乗っている。
営業活動も、曹さんというこれ以上ない良き相棒を得て、
営業専用スタッフ5名と
一時はアイ・タックの社員でもあった楡(字が少し違う)さんと共に活動して、
ここ数ヶ月で急激に伸ばしてきている。
頼さんの奥さんは、自前でコーヒーショップを六軒も経営するようになった。
頼さん達は、今絶好調なのである。
しかしそれまでには、
何度か危機的な経営の状況に陥ったこともあったそうだが、
そんなことを私たちにまったく気が着かせないほど、頼さんは楽天的に見えた。
そう見えたのは頼さんが芯の部分で強かったからだろう。
上海において頼さんは、七年が過ぎるうちに劇的に変わった。
台湾から東京に留学中であった頼さんは、
7.8年前に、上海に嫁いだ自分の姉さんを頼って上海にやってきた。
頼さんとは上海に行く前からの付き合いで、
頼さんが上海に行ったので、私も何度か上海に行き、
それがアイ・タック技研が中国の活動を始める直接の要因であった。
あの頃から比べると、上海自体も変わった。
大きく変わった。
この頼さんの小さな洗車屋「キーパープロショップ」は、
場所がいいこともあって月間13~15万元(約170~195万円)の売り上げがあるという。
普通の上海の洗車屋の4倍~5倍の売り上げである。
若い店長と一緒に記念写真。
頼さんの奥さんが経営するコーヒーショップ。
現在6軒あると言っていた。
中は非常に清潔だ。
今回行って驚いたのは、街がものすごくきれいになっていたことだ。
上海万博のおかげだ。
海外からたくさんのお客様を向かえるために、
上海の街は見違えるほど整然として、
道路の工事中がなくなり、しかも「ゴミがない!」。
街路樹はきれいに刈り込まれ、
道路に自動車とオートバイを分ける柵が出来ていて、
車とバイクが混じって走っていないのは不思議な光景だ。
一言で言って、上海がキレイになったのだ。
昔、日本が東京オリンピックと大阪万博をきっかけに街が整備されたように、
中国も北京オリンピックと上海万博で、きれいになって整然とした。
少なくとも第一印象はずいぶん変わったので、
その成果はあったのだろう。
上海は、表面だけでしかないかもしれないが、明らかに変わった。
この写真を見て、よだれを流すのは私と酒部君ぐらいだろう。
「臭豆腐」発酵した豆腐を揚げたものだが、きわめて”臭い”。
私の大好物である。
今回、急遽上海に行ったのは、
「このままだと工場がつぶれます。一刻も早く上海に来てください。」
と、タオル工場の陶さんが悲鳴を上げてきたからだ。
今、タオルの原料である綿花が急騰し、
それ以上に綿糸の価格も急激に上がって
今の単価では赤字が膨らむ一方で、工場を維持できないというのだ。
私も調べたのだが確かに上がっている。
それも今までなかったような急激な上がり方だ。
タオルは一般のアパレルのよりも、綿糸の原料コストの割合が大きい。
だから綿糸の価格上昇はタオルの生産コストを直撃する。
過去何年かにわたって、
タオルは何回か仕入れ単価が上がっている。
大きいのは人件費の上昇で、保険加入の義務化もあって、
実質的な生産コストとしての人件費は7年前の二倍近くにまでなっている。
洗車屋を営む頼さんも、人件費の上昇とインフレによるコストアップを嘆いていた。
それでもドル建てで輸入しているので、
過去に一度、何年か前、みなさんにも製品価格のアップをお願いしたことがあるが、
それ以降は円高メリットで、輸入価格の上昇を吸収して来られた。
それがここにきて原料コストの急騰で、
1.5倍もの製品価格アップを懇願されたのだが、
今度はドル安円高で輸入メリットだけではとても吸収できない。
赤字になることは目に見えている。
かといって、
ドル安円高ムードが高まっている今の状況では、
とても二回目の値上げをお願いできるものではない。
今の綿糸の急騰は国際的な投機の色合いが強いので、それほど長くは続かないと考え、
日本においての製品値上げをしないまま、
一時的にでも輸入価格のアップを受け入れざるを得なかった。
中国の「元」も対ドルに対してじわじわと高くなっている。
かつての日本と同じ状況だ。
何十年か前には日本製品が、製品の圧倒的な安さで世界の市場を蹂躙したが、
円が高くなり、人件費も高くなって、インフレであらゆるコストが上がって、
日本においてのコスト的なメリットがまったくなくなった時、
それまでに築いた技術力の進化と、品質の向上によって、
コスト的なメリットをカバーするだけの付加価値を製品に実現して、
世界第二位の経済力を築き上げた。
しかしその間、国際的な状況の大きな変化についていけず、
旧態依然のまま昔ながらの生産を続けた町工場は、合理化できず、
コストの上昇と、円高による輸出製品単価の低下に耐え切れず倒産し消えた。
周りの情勢が大きく変わっていく中で、変われなかったのだ。
上海で7年経って、陶さんの工場はまだ何も変わっていない。
同じ機械で同じ工程で大量の人の手によってタオルが作られている。
とても真面目で、正直な陶さんは、
7年間、同じ工場で真面目に働いて経営してきた。
しかし今から7年後も、
今のままで存在することはあり得ないだろう。
大きく工場が合理化されるか、革新的な製品付加価値を生み出すことが出来るか、
あるいはこの工場がなくなっているか。
そのいずれかの一つであることは間違いないだろう。
願わくば、時代の変化につれて、愛すべき陶さんが大きく変化してくれることを願う。
再び、頼さんの「キーパープロショップ」。
上の階に頼さんの会社の本社がある。
この店は上海の少し郊外にあるが、
それでも月間1万元(130万円)以上の売り上げだという。すごい。
洗車をしているスタッフの後ろの右上に何か見覚えのある写真が。
上海に土井君がいた。
店長と、営業の責任者。
名前を聞き忘れた。ごめんなさい。
頼さんの会社の幹部たち。
非常に優秀な人たちである。
上海万博が終わった後の上海浦東空港の様子。さすがにガラーンとしている。
上海のみならず、中国はこれからが正念場となるようだ。
昨日の夜11時近くに上海から中部空港に帰ってきて、
翌日の今日、朝9時の飛行機で仙台に飛んだ。
このところ一週間、毎日飛行機に乗っている。