谷 好通コラム

2010年10月12日(火曜日)

2629.日本の40年間を考え、わが身を振り返る

日本の通貨「円」が変動為替に変わる以前、
固定であったころ「円」は「360円/ドル」であった。
今は1ドル82円程度なのが、
昔はなんと1ドルが360円であったのだ。
逆に言うと、
固定相場の昔、10,000円をドルに両替しても27.7ドルしかもらえなかったのが、
今、10,000円をドルに両替すると121.7ドルももらえるようになった。
「円」が恐ろしく高くなったのだ。
このこと自体は、日本がものすごく得をして、良い事のように思えるが、
アメリカへの輸出に関わる業界には最悪のことだ。

 

つまり、昔は、
アメリカで10,000ドルで商品が売れると
輸出した会社は日本円で360万円も手に入り、
その頃の日本の人件費は安く、
40年前、1970年の大卒初任給が約月4万円(インターネット調べ)であったので、
売り上げを人件費に換算すると約90ヶ月分もの収入になったのだ。

 

それが今では、
アメリカで10,000ドルで商品を売ると、
輸出した会社は日本円で82万円の売り上げが手に入り、
平成19年の大卒の初任給が月19.5万円(インターネット調べ)なので
売り上げを人件費に換算すると、わずか約4ヶ月にしかならない。

 

円高とは、10,000円の価値が
「27.7ドル」から「121.7ドル」の価値に上がった「4倍半」の問題ではなく、
日本人全体が豊かになって、
人件費、つまりコストも大幅に上がったので
米国での10,000ドルの売り上げで、
昔は日本で「90か月分の給料」が払えたのに、
今はたった「4か月分の給料」しか払えないという
「22倍半」の問題なのでもある。

 

もちろんその間のインフレで、
日本の物価は40年間に約3倍になっているので、
40年前の初任給4万円は今の12万円に相当するので、
19.5/12≒1.6倍となって、
ストレートに22倍半ではなく、
360/82*1.6≒7.1で
米国に対して日本製品の価格についての競争力が、
40年前の1/7.1になっていることになる。

 

 

言い方を変えると、
物価が昔と変わらないことを前提にして、
昔は
1,000円のコストをかけて造り、
利益を30%付加して1,300円とした商品をアメリカに輸出すれば
アメリカの輸入業者はそれを3.6ドル(360円/ドル)で仕入れたことになり、
そこにまた30%の利益を付加して4.7ドルで販売することになる。
今は、
1,600円(所得が1.6倍)のコストをかけて造り、
利益を30%付加して2,080円として商品をアメリカに輸出すれば、
アメリカの輸入業者はそれを25ドルで仕入れたことになり、
そこにまた30%の利益を付加すると、その商品は約33ドルで販売することになる。

 

つまり、
今販売している商品が40年前と同じ種類のもので、
40年前は4.7ドルで販売できた物が、
今は、33ドルで販売しなければならない商品となったわけだ。
33/4.7≒7
つまり7倍だ。
しかし、今、造っている商品が、40年前と同じ品質と同じ性能の商品ならば
約7倍の値段で販売することは不可能であろう。

 

同じ種類の商品であっても、40年前に比べて7倍の性能と品質で
7倍の付加価値を持っていなければ、
同じ種類の商品を販売することは出来ないことになる。

 

40年の間に、
日本の技術力が世界トップレベルに高まり、
品質も世界トップレベルになって、
昔、生産した同じ種類の商品にも7倍に近い付加価値を持てたから、
安さで売りまくる中国にGDP世界2位の座は奪われても、
何とか世界3位の経済力を保ち、
インフレを差し引いた日本国民の実質的な所得は1.6倍になって豊かになった。
そう言えるのではないだろうか。

 

40年前、日本が「円」の安さと人件費の安さで、
世界のマーケットに売り込み、
「円」が200円になり、150円になっても、
まだ十分な競争力を持ちながら世界のマーケットを席巻できたのは、
円が高くなるにつれて、技術力と品質もどんどん上がったからではないだろうか。

 

かつて日本製品は「安かろう、悪かろう」の代表であったが、
今では、日本製品はその性能と品質において世界のトップレベルにある。
「安くはないが、良い製品」の代表になっている。
今、苦境の中の日本経済は、今後、どんな方向に向かっていくのか。

 

人件費の圧倒的な安さと、
「元」の為替を安くほぼ固定していることで支えられている中国製品の価格競争力。
人件費はすでに都市部においてどんどん上がっている中で、
いずれは「元」の為替も、高くしていかねばならないだろうし、
どこかで何らかの転換を迎えるだろう。
日本の40年間の変化を、
中国は何倍ものスピードで経験している中で、
中国の製品は、今後どのような方向に向かっていくのか。

 

私は経済の専門家でもないので、
この文章の中の乱暴な計算が合っているのかどうか解らないし、
製品コストは人件費だけではなく原料費や光熱費も重要な要素であっても、
それをすべて無視して、
コストを人件費の変動だけにしているのは乱暴極まりないことを
お断りしておかねばならない。
それでも、大きくは外れていないのではないのかなと思う。

 

 

ふと足元を見て、
我等がKeePer LABOは、高品質を看板に、
いつもお客様のことを考えて、ここまで店作りをやってきたつもりだ。
昨日、お客様から
KeePer LABOのある店舗の商品品質についてお叱りをいただいた。
それがいったい何を意味するのか、私たちは何をすべきなのか、
日本が40年で何を作り上げてきたのかを想い、
謙虚に、真摯に考えなければならない。

 

常に高い品質を求めて、今日は第9回のキーパープロショップ研修会。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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