谷 好通コラム

2010年06月04日(金曜日)

2518.先頭を走ることの意味

先日のレースで私はゴルフ5のクラスで4台中2位になった。
総数9台中7位。
対して同僚の畠中君は予選でトップを取り、スタートから先頭で走り、
ゴールまでトップを譲ることなく、1位でゴールした。
総数9台中1位である。

 

トップの畠中君のレース中のベストラップが2分11秒1 (131.1秒)であり、
ドベからスタートした私のベストラップは2分12秒4 (132.4秒)であった。
率で言うと99.018%である。

 

しかし、総合1位の畠中君と7位の、レースでの差は約30秒。
畠中君がトップでゴールインしてから約30秒後に私がゴールしたと言うことである。
レースは10周である。
1.3秒×10周=13秒。
スタート時の差が約5秒。
(トップがスタートラインを越してから5秒後に私がスタートラインを越した)
残り12秒 (30-13-5=12)は、
10周回る間に、私のタイムにムラがあって、
ベストタイムの差以上に私の方が遅い周回があって、
ベストタイム以上の差が大幅についたと言うことだろう。

 

それは、私の走りにムラがあり畠中君の走りの方が安定しているということもある。
たしかにそれもあるが、それだけではここまでの差は出ない。
私と畠中君とはどのサーキットでもいつも1.5秒の差であって、
周回によってのムラはお互いにある程度あり、
ならしてみれば1周1.5秒からは大きく離れない。

 

なのに、なぜベストのタイムの差に加えて13秒分も余分に離れてしまったのか。

 

先頭を走る者と、後を走っている者では走っている環境がまるで違うのだ。
レースは雨が土砂降りであった。

 

先頭を走っている者は、前に車が走っていないので、
降ってくる雨がかかるだけで、
ウィンド撥水コーティングで水を弾けば、ワイパーが要らないくらい。
しかし、9台中の9番目からスタートした私は、
前の8台が巻き上げる「水けむり」(ウォータースクリーン)をまともに浴びることになる。
まるで滝の中を走っているようなものだ。
ワイパーも全開で目まぐるしく動かしてやっと走る。
(それほどオーバーに言うほど激しい雨ではなかったが)

 

先頭を走る者は、自分のペースで、あくまでも速く走る努力をすれいい。
しかし後から走っている者は、
前の車が巻き上げる水しぶきを浴びながら、
前の車を何とか抜こうとして、速く走るだけを考えた走りではなく、
後からプレーッシャーをかけたり色々やる。

 

このレースの中で私は前を行く2台を抜くことが出来た。
2台ともストレートから1コーナーへのブレーキング勝負で抜いた。
最終コーナーで追い詰め、
ストレートを走る中で出来るだけ並び、
ストレートエンドでのフルブレーキは、
前の車が、先に、ブレーキを踏むまで絶対に踏まない。
相手がブレーキを先に踏んで、自分の車より後ろに下がったことを確認してから、
こちらも必死になってブレーキを踏む。
どこ地点までにブレーキを踏まなければならないかも考えない。
だから、前が見えなくてもかまないのだ。
前の車が、後に行ったら、ブレーキを踏むだけ。
これで抜ける。
抜いたあと、ブレーキを踏むのが遅すぎて
コーナーを回りきれずコースから飛び出ることもあるかもしれないが、
少なくとも雨が降っていれば、今までにそういうことはなかった。
雨が降っていると、当然、路面は滑りやすくなっているので、
みんな早くブレーキを踏みたくなるので、
1テンポ遅くブレーキを踏んでも、絶対に間に合うのだ。
ABSを信じて床までブレーキペダルを踏みつければ、まず正常なコーナリングが出来る。

 

話がそれた。
とにかく、後を走る者は色々とドラマがあって、
ある意味では楽しめるが、色々な苦労もある。
だから、後方を走る車はタイムが安定せず、余分にタイムを使う。

 

対して、先頭を走る者には、何もない。
とにかく後の者が追いついてこないように速く走ればいいのだ。
だから淡々とコンスタントにタイムを刻むことが出来る。

 

先頭を走る者には、
後から走る者にはない大きなメリットがある。
一番良い環境で走り、しかも他者と直接的に戦わなくてもいいのだ。

 

先頭を走る者はそういう意味で、圧倒的に優位なのである。

 

 

同じようなことがビジネスにおいても言える。
たとえば、
ビジネスとして他社が持っていない優れた商品を持ったとしたら、
その会社は、競争相手がいないわけなので圧倒的な優位性を持っている。
その商品を、どこまで広く紹介して、
どれだけのスピードを上げて普及させられるかが勝負だ。
トップを走っている優位性がそこにはある。

 

しかしどんな商品でも、
ある時点まではその会社が独占的であっても、
いつかは研究され、開発し、対抗してくる商品が現れる。
そういつまでも独走はさせてくれない。
先行している間は独占的に市場を開拓できるが、
競合商品が出現してくると、商品の普及努力とは別にそれらとの戦いが始まって、
比べ物にならないくらいパワーを使うようになる。
時には負けることもある。

 

 

レースにおいても、トップを独走している間は思い通り走り続けられるが、
後から走ってくる車に、トップの車の走行ラインを学習されたりして、
いつ追いつかれてくるかも分からない。
いざ追いつかれてしまったら、
後からプレッシャーをかけてくるし、
ストレートでスリップストリームに入られて、エンドでインでも取られたら、
スバット抜かれること必須だ。
トップを走る者はとにかく二番手を引き離すだけ引き離す努力をすべきなのだ。

 

 

ビジネスにおいても、
優れた商品を開発し、独占的に販売できるような状態があったら、
必死になって市場を必死になって開発しきってしまわなければならない。
独占のぬるま湯にのんびりしていると、
あっという間に追いつかれ、後から追い回され、
市場を後から来たものに席巻されるなんてことはよくある話だ。
しかし、しかし、独占している者は、
独占しているがゆえに、その危機感をまったく感じないのが一番歯がゆい。

 

トップはとにかく必死で逃げなければならないのだ。

 

 

 

先日のレースでトップを走っていた男の8年前の写真を見つけた。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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