谷 好通コラム

2010年05月19日(水曜日)

2504.小さなおせっかい、大きなお世話

昨日泊まったホテルは毎度のビジネスホテルであった。
初めて泊まった浅草近くのホテルである。

 

本所の東京本部近くでいつも泊まるのは
東横イン駒形と、チサンイン浅草であるが、
この二つが満員だったからなのか分からないが、
近くにもう一つ初めてのビジネスホテルを探してくれたらしい。

 

全国チェーンのビジネスホテルであるが、
長い間、このチェーンのAホテルには泊まったことがない。
以前に何かいやな事があって、
Aホテルには泊まらなくなったのかもしれないが
なぜだったのかを私は憶えていない。

 

フロントもロビーもこぎれいで、
フロントマンの笑顔も言葉遣いも満点である。
部屋もチェックインが遅かったからなのか広い部屋をシングルで貸してくれた。
部屋にはLANもあり、まあまあこぎれい。
テレビも小型ながらも液晶テレビで快適だ。

 

いつものように顔を洗って、歯磨きをして、
PCにたっぷり受信したメールをチェックして整理、一仕事してからベッドに入る。
いつものように夜12時ごろ。
ベッドに入って横になり、しばらくして、
私がこのSホテルのチェーンを嫌った理由を思い出した。

 

早速、フロントに電話をする。
「すいません。この平ぺったい枕じゃなくて、普通の枕もらえないかな
低反発スポンジを使ったこの変な形の枕、私は大嫌いなんですよ。
同じように、この低反発スポンジ使ったベッドも大嫌いなんですよね。
これ“が”好きな人もいるかもしれないけど、嫌いな人“も”いっぱいいると思うよ。」

 

フロントの返事は
「すいません。他のタイプのものは用意してありません。」とのこと。
ベッド脇には、この枕とベッドがいかに素晴らしいを、
「エコノミークラスの料金でファーストクラスの寝心地」
として、
「この枕とベッドが科学的に理想であり、(二つの世界的に有名なホテルの名を上げ)
かのグレース王妃もこれがないホテルには泊まらなかった。」
とパンフレットが置いてあった。
おまけに
「この素晴らしい枕を、このホテルで●,●●●円で販売してします。」
とまであり、
この枕とベッドが大嫌いでいつまでも寝付けない私を余計にいらだたせた。
そして、絶対に二度とこのSホテルには泊まらないぞと、
何度も決心をしたのだった。

 

といいつつも、午前二時くらいには眠ってしまったのは、
私が言うほど繊細な神経の持ち主ではないと言う証拠だろう。
大したものではない。

 

しかし、このホテルは致命的な失敗をしている。
ある人にとっては素晴らしいものであったとしても、
それが通常の物とは、かけ離れた形状と材質が合わない人だって必ずいるのだ。
誰が泊まるか分からないホテルの枕は、普通のもので十分であり、
普通の枕が好きな人にとっては、
大嫌いなものである可能性が十分にある。

 

嫌いな人が、好きだと言う人よりも少なかったとしても、
それが致命的なものであることに違いはない。

 

その変形の枕が好きだという人がいたとしても、
その人が、このホテルにその枕とベッドがあるからという理由“で”、
リピートする確率があるとは思えないだ。

 

ホテルを選ぶ基準は、

 

1.自分の行動に便利な場所にある。
2.値段が高くない。
3.清潔である。
4.ホテルの食事がおいしいか、おいしく食事をするところが近くにある。
5.うるさくない。暑くない。寒くない。
6.フロントが感じ良い。
などなど、
複数の基準でホテルを決めるが、
優先順位は、私は1から6の順だ。
だから、誰かにホテルの手配をしてもらう時は、
1.と2.と3.の要素だけでだいたいOK。
しかし、
それ以前に、「●●●ホテルは、・・・だから絶対ダメね。」がある。
ダメなホテルのリストがあって、
そこは絶対に取らないように頼む。

 

「枕とベッドが大好きだから▼△ホテルのチェーンにして下さい。」
なんてほとんど、いや、絶対にない。
選択の基準は複数あるが、
拒否する要素は、一つでもあればダメなのだ。

 

いくら便利な場所にあっても、
安くても、清潔であっても、おいしい食事が出来る所があっても、
大嫌いな枕しかないホテルは絶対に選ばない。

 

どんなに気を効かした物のつもりであっても、
それが選択の動機になることはまれであり、
それが拒否の動機になり得るものならば、それは絶対に持ってはならない要素と言える。

 

顧客満足(CS)とは、よりお客様の満足度を上げることも必要かもしれないが、
むしろ、お客様の不快、お客様の不満をいかに減らし、いかに無くすることの方が、
もっとも重要なことであると思う。

 

お客様を迎える側が独善的にお客様の満足を考えた時、
お客様の決定的な不満と拒否の選択に気が付かなくなる時がある。

 

私はあのAホテルには、たぶん二度と泊まらないだろう。

 

我々は、独善的になっていないか。
我々の店舗は、我々のサービスは、提供する側の自己満足に陥っていないか。
自省しなければならない。
いつも、謙虚に、外からの声とお客様の心情に、
自らの耳を傾け、自らの感性を率直に傾けなければならない。
自省せねばならないと何度も思いながら、
低反発スポンジの平ぺったい枕にイライラしながらも、
午前2時、深い眠りに入っていった私は、やはり繊細さとは無縁であったのか。

 

小さなおせっかい、大きなお世話

 

 

 

そんなことを考えるについても、
いつも私のお手本になっているすごい店がある。

 

何度来ても、お客様の居心地の良さを実にうまく作り出していて、
派手さはまったくなくても、
センスの良さで気持ちいい店作りを実践し
素晴らしいスタッフ達のいる一軒のキーパープロショップに、
SONAXの二人を案内した。
もちろん、その喜びようは格別であった。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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