2010年02月18日(木曜日)
2428.あまりにも、むごい話
この話は、事故の再発を防ぎたいの一念で書いたものです。
あまりにも悲しい事故で、ご家族の心境を思うと、
載せるべきか載せるべきではないか、迷いに迷いました。、
しかし、この事故はいつどこでまた起きてもおかしくないことであり、
普段から危ないと思いつつ、しかし、あまりにも当たり前になっていて、
なかなか聞いてもらえなかった事なので、
あえて、書こうと決心して書いたものです。
愛知県大府市にあるアイ・タック技研本社の目の前に
出光マークのガソリンスタンドがある。
本社の社用車は必ずこのスタンドで燃料を入れている。
私も月に一度くらい給油にお邪魔する。
昔ながらのフルサービスのスタンドで、
お客様の車が入ってくると、スタッフが走って出てきて、
燃料を入れてくれて、窓を全部拭いてくれて、
満タンになったら、給油口を閉め、お客様は伝票にサインする。
道路端まで小走りに行き、お客さんを誘導、
店の出口でお客様の車を「ストップ」と止めて、
道路の左右を確認し
走ってくる車がなくなると「どうぞ」と言って、道路へお客様を導き、
「ありがとうございましたー」と挨拶をする。
この店はもう70歳になろうかというお父さんと、お母さん。
お父さんから経営を継いだ長女と、次女と、三女。
そしてかなりのお歳のおじさんが二人。
典型的な家内営業のガソリンスタンドである。
キーパーの本社の目の前にあるが、
「年寄りと女手だけだから、ちょっと無理だなぁ」とキーパーはやっていない。
しかし、皆さんすごく感じがいいし、店もきれいで、
みんな気持ちよくそのスタンドで燃料を入れてもらっていた。
いつも軽トラックに乗っている常連のお客様が、いつものように給油にきた。
ただこの日は、軽トラックではなくFFの普通車バン。
給油が終わって、いつものように店の出口まで走っていって、
お客様の車を誘導する。
社長を継いだ長女である。
いつものように「はーい、ストップ」と、
店の出口で、お客様の車の前で、手を出して止めようとした。
お客様は、いつものように、ブレーキペダルを踏んで止まろうとした。
止まろうとしたが、
踏んだペダルは「ブレーキ」ではなく「アクセル」だった。
FF車は構造上、ペダル類が内側にオフセットしていて、
いつもの軽トラックのブレーキペダルの位置には、FF車のアクセルペダルがある。
止まるべき長女の前で、車は急発進して、
猛スピードで長女をはねた。
はねて、車は片道二車線の道路を突っ切り、かなり高い中央分離帯を乗り越えて、
反対側の二車線も突っ切って、向こう側の歩道に乗り上げて止まった。
はねられた長女、娘さんは、即死であったそうだ。
私たちが、事故が起きたことに気がついたのは、すぐであった。
しかし店の反対側にバン車が乗り上げていたのを見えただけであったので、
単なる物損事故かと思っていたが、
娘さんが亡くなった事故であることを知ったのは15分後。
店に行ったら、
お父さんは店で背中を丸めて下を向いて立っていた。
お母さんは目に涙を浮かべて顔中に力が入っていた。
姉妹の二人の娘さんは、一人は店の中に座りこんで、
一人は顔をこわばらせてじっと立っている。
みんな涙がこぼれる前に、愕然とし、呆然としていた。
道路に撒き散らされた娘さんの血を、おじさんが水道のホースで流していた。
信じられない、あまりにもむごい光景であった。
私は真剣に提案したい。
SSでお客様を店から道路に誘導するのはやめませんか。
あれは危険です。
私の約25年間のSS現場経験でも、
誘導の場面で「あぶないっ」と思ったことは何度もあった。
今の私は、給油の場面では客だが、誘導をありがたいと思ったことはあまりない。
あれは、SSの人にとって、あらゆる意味で危険なだけで、
ありがたいと思うお客様が少ないのなら、やめるべきではないだろうか。
少なくとも、
車を誘導する時、
絶対に車の前に立つな。
絶対に車の後に立つな。
絶対に車の進路からほんの少し外れた斜め前、斜め後ろで誘導しよう。
何年か前、目の前にバイパスが開通したと共に新装してみんなでがんばっていたが、
1kmもない先に、千坪以上もあるセルフSSが出来た。
それでも、お父さんとお母さんと三姉妹とおじさん、
みんなでがんばって、それでも店はにぎわっていたのに。
あのあまりにもむごい光景は、お気の毒という言葉でとても言い表せきれない。
心よりご冥福をお祈りします。
南無阿弥陀仏。
*こちらに掲載しておりました写真(現場検証の遠景)、皆様からのご指摘を頂き、削除すべきと判断し削除いたしました。
*また、この事故の加害者は飲酒運転であったことを後で知りました。
飲酒運転と言う憎むべき犯罪がこの事故の原因のすべてであったことを付け加えます。