谷 好通コラム

2009年06月13日(土曜日)

2229. 「使えるお金>使うお金」

赤字会社と黒字会社は紙一重の差でしかない。
解ってお金を使っているか、
解らずにお金を使っているかの差だけのようだ。

 

解ってお金を使うとは、
自分たちがどれだけの収入があって、
どれだけ使えるのかを解っていて、
どれだけ使っているかを解りながら使うということ。
解らずに使うとは、
自分たちがどれだけの収入があるかはある程度解っていても、
その収入を得るためにどれだけのお金を使っているのか解っていないこと。

 

解って使っていれば、
収入が減って
自分たちが使えるお金も減っていることに気付くことが出来る。
すると、使うのを押さえるから、使える以上のお金を使う事はなくなる。
だから、いつも「使えるお金>使ったお金=黒字経営」となって、会社に不安は起きない。

 

解らずに使っていると、
自分たちが使える以上のお金を何となく使ってしまうことが多い。
このお金を使わないより、
使った“ほう”が、収入が増えるだろうから使うなんて使い方をよくするのだ。
それによって増える収入が、
使ったお金よりも多いかどうかは解らないが、
使わないよりも使った“ほう”がいいだろうから使ってしまう。
その結果、
「使ってしまったお金<入ってくる収入」となって、当然、赤字経営となる。
あるいは、
予期せぬ事で収入が減った時、
使えるはずのお金も減っているにもかかわらず、
いつも、いくら使っていいのかを解って使っていないと、
いつものように使ってしまい、使えるお金よりも多く使ってしまうこともある。
「使えるお金<使うお金」となって、やはり赤字経営となる。

 

ついでに言えば、
使えるお金が、最小限に必要なお金よりもかなり多く、
新製品・新店の開発、新しい人材の開発・教育、などに投資できる大きさならば、
その事業は拡大する。
それでも、「使えるお金>使うお金」の範疇でなければ、
新しい事業の拡大が予定通りにいかず失敗した場合には、たちまち赤字に転落する。

 

しかし、「使えるお金」以内での活動にこだわってばかりいると、
縮こまった経営となり、そこには夢も希望も野心もなく、
夢多き人材も育たないだろうし、
世の中の変化に対応できずに、
縮小していくだけのつまらない事業となりがちでもある。

 

事業は夢と理想がなければ存在する意味がないし、つまらない。
誤解を恐れず言えば、
肝心なのは、
「収入=使えるお金」を最大限にする努力を惜しまない事と、
「使わねばならないお金=コスト」を“最小限にする事に同じだけの努力”をはらうことだ。
「最大限の収入-最小限のコスト=最も大きな事業発展の可能性」となって、
夢と理想を実現するための最大の力となる。
そこに希望を持った人達が集い、もっと大きな力となって可能性がもっと膨らむ。

 

しかし
そこで間違ってはならないのは、
決して「出来るだけ安く物を造って、出来るだけ高く物を売る。」のではない。

 

 

「出来るだけ付加価値の高い、役に立つものを、
出来るだけ無駄のない造り方で造り、
出来るだけ、多くの人に、価値を認めてもらえる売り方で提供する。」ということだ。

 

そこに「最大限の収入-最小限のコスト=最も大きな事業発展の可能性」が実現する。

 

この場合、
「解ってお金を使う。」「使えるお金>使うお金」というようなレベルの問題は、
ほとんど意味がなくなっているはずだ。
なぜならば、
「最大限の収入-最小限のコスト=最も大きな事業発展の可能性」を実現するには、
使えるお金、使うお金の意味を十二分に理解しきっている必要があるからだ。
十二分理解しきっていれば、
「使った“ほう”が何となく収入が増えるような気がする」程度のレベルで
お金を使うことは絶対になく、
「使えるお金>使うお金」の構造は必ず成り立っているはずなのだ。

 

しかしそれでも、
予期せぬ世の中の変化があったりして収入が減る事もあるはず。
今の世界同時不況など最も典型的な例で、
どこに行っても誰に聞いても危機的な状況を耳にする。
そんな時に、「収入=使えるお金>使うお金」の鉄則を十分に解っていれば、
使うお金をどこまで減らせばいいのかがはっきり解り、
状況にすばやく対応できるはずだ。

 

つまり、「いくら使うか=支出」は、
「いくら使えるか=収入」によって決定され、連動するもので、
それぞれがバラバラであってはならない。
かならず「収入」が先あって、「支出」が連動して出てくる。
「支出」が「収入」によって連動し、変化できる構造になっていなければならない。
その上で最大の収入と最小の支出の差から、新しい事業展開の可能性が決まってくる。

 

万が一「使えるお金<使ったお金」の赤字構造に陥った場合は、
どこで「使えるお金>使ったお金」の鉄則の構造が崩れたのか、
その要因を「使ったお金=支出」の中に明確に分析して、
「使ったお金」の中において対策、解決しなければならない。

 

解決は「収入」を増やす事ではなく、
「支出」を減らすところで妥協することなく解決を見出すべきであり、
「支出」を改善せずに、
「収入」を増やすことで解決しようとすると、新たな投資とコストを発生することが多く、
ほとんどの場合「使えるお金<使ったお金」の赤字の構造は解消されない。

 

「使えるお金=収入」を増やす目的は、
「最大限の収入-最小限のコスト=最も大きな事業発展の可能性」を作り出すことであり、
赤字解消の手段にはなりえない。
よくはまり込む罠である。

 

 

今日は朝から役員会で来期予算の検討をした。
(六月決算のため)
これまで世界同時不況の影響をあまり感じなかった私たちのビジネスにも、
ジワッとそれを感じさせるような兆候があり、
七月から始まる来期は、
その影響をまともに受けることを覚悟した予算にしなければならない。
まずあるべきは経費節減なのだろう。
今日の会議室は蛍光灯を全く点けず、晴れた外の明かりで会議をした。
もちろん会議には全く支障はない。
しかし考えてみれば、そんなことは当たり前のことであって、
これまでの晴れていても蛍光灯をつけていたことが、むしろおかしかった。
そんな事に改めて気がつき、無駄な文明が身に沁みていた事を恥じいった。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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