谷 好通コラム

2009年03月07日(土曜日)

2152.まだ自家用ジェットに乗っているか

経済危機が世界中を直撃しているが、
例えば製造業ならば、
この危機に面して、
どれだけ素早く、
下がった需要に適応した低い生産体制を実現できるか、
それがどんな会社においても、生き残りを賭けたもっとも重要な点だろう。

 

調整弁を全開し、余剰人員を吐き出し、
売却できるものは二束三文であっても売却し切り
排除できるコストをなりふり構わず切り捨て、
週休3日は当たり前、
週休4日にしてでも在庫を減らしてコストを下げ、
役員も真っ先に減俸を断行して、
社員にも時短減収の理解を求める。
数々の手を打って、一刻も早く業容を縮小することに集中する。
巨大な企業であればあるほど、
新しい状況に対応するスピードが遅くなると
垂れ流しとなる赤字の規模が大きく、命取りになるから必死だ。

 

さすがに日本の自動車メーカーはコスト意識が高く、
その対応も素早い。
反してアメリカのビッグスリーは
経営努力以前に、労働者の権利主張と、
会社の政府への金融支援要請ばかりが伝わってきていて、
病根の根の深さを感じる。

 

時代が大きく動いている今の瞬間、
自らをいかに時代に適応した体質に変化させることは、
会社の規模が大きいのか小さいのかに関わらず、生き延びる条件である。

 

大きな規模の会社はその図体が大きい分、
フットワークが鈍く、変化するスピードも鈍くなるのは当然なのだが、
だから、必死になって、
血を出しながらも変化し、時代に合わせた進化を実現しようとしている。

 

しかし、問題なのは、
ごく一部ではあるが、小さな規模の会社だ。
小さい体は変化し、進化しやすいはずなのに、
これがなかなか変化しようとしないのが不思議なところだ。

 

規模が小さいから構成人数が少なく、
その多くが、家族が経営の中心にいて
それぞれが持っている都合が幅を利かして
かえって会社全体が変化することを拒むことになっているのだろうか。

 

銀行の人がおっしゃっていた言葉によると、
「10人とか、20人程度で経営していて、
大きな会社から仕事をもらっているような会社では、
極端に仕事量が減っているところが多く、
経営者のみなさん、世界経済不況を嘆き、人員の削減とかの努力はされるのだけれど、
家族である役員さんたちの報酬は一向に下げようとしない。
そんな実体を決算書などで見るにつけて、
『不景気で困った』と言って融資などを申し込まれても、
ちょっと応援する気持ちが失せてしまうことがあります。」

 

こんな会社はごく一部の会社であって、
多くの零細、中小企業では正に自らの血を流して生き残ろうとあがいている。

 

しかしこの話を聞いて、思った。

 

何のために会社を経営しているのか、何のために仕事をしているのか。
これからは、そこのところを会社全体で共有できないと、
このような危機的状況においては、
アメリカのビッグスリーが救いようのない境地に陥っているのと同じ理由で、
淘汰される側に回ってしまうのかもしれない。

 

ビッグスリーの1つ「クライスラー」全体の販売台数が、
世界的なヒット車「トヨタカムリ」1車種の販売台数を下回った。
という記事があった。(間違った記憶かもしれないが、)
私も一年半前まで乗っていたトヨタカムリ。
日本ではあまり人気がないが、
私の運転で燃費13km/ℓと非常に燃費がよく、
しかも必要にして十分な馬力を静かに発生する2.4ℓの4気筒エンジンと
レクサスLS以上の室内空間を持ったボディーとのバランスは、
コストパフォーマンスにおいて正に世界一だ。と私も思う。

 

しかしそれにしても、
トヨタのたった一車種の販売台数に、
世界を制していたビッグスリーの一角であった会社が負けるとは。
それでもクライスラーの役員たちは
相変わらずも、自家用ジェットに乗って飛んでいるのだろうか。

 

これは、ひょっとすると、
先の銀行員の話しに出た
「一部の経営危機に瀕しても、最後まで家族たちの報酬を下げようとしない経営者」と、
「自分たちの事しか考えない。」という部分で、
同じ価値観を持ち、同じ属性を持った人達なのかもしれない。
自らの進化を拒んでいると、新しい時代の到来と共に淘汰されるのは解ってはずなのに。

 

わが身を振り返って、自省しなければならない。

 

若き日を思い出そう。
進化することしか考えいなかったあの頃の心を。

 

もう6年以上も前、
開拓精神いっぱいで上海に通い始めたころ。
私も、みんなも若かった。
あのころの眩いばかり心のときめきを忘れてはいけない。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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