谷 好通コラム

2009年02月11日(水曜日)

2133.北極海はピントがどうしても合わない

第二班の快洗隊研修のスタートを、
午前10時から午前9時半に30分早めてもらった。
どうしても30分だけみんなに話をしたかったのだ。

 

ドイツに行く飛行機が中部空港を午前11時55分発だったので、
午前10時すぎに会社を出れば、
午前10時45分過ぎには空港に着き、余裕でチェックインし余裕で搭乗できるはずだった。
国内線は出発時間の1時間前に空港に到着しておくのがセオリーだが、
慣れてしまって、たいてい30分前に空港到着で十分である。
国際線は2時間前がセオリーだ。
国内線が30分前で充分なので、当然、国際線は1時間前。
だから今回は、1時間以上前に空港に到着するのだから十二分すぎるハズだった。

 

こんな書き方をすると、出発に間に合わなかったように聞こえるが、
出発には十分間に合ったし、誰にも迷惑をかけたわけでもない。

 

ただ、このルートで座るべきシートが取れなかった。
それで、やっぱりもっと早く空港には来なきゃイカンなと思っているだけ。

 

座るべきシートとは何か。
進行方向に向かって右側、A席とは反対側の窓側のシートである。

 

今日の飛行は「中部⇒フィンランド・ヘルシンキ」と「ヘルシンキ⇒ミュンヘン」。
中部空港から飛び立つと、
飛行機はほとんど真北に向かって飛ぶ。
北海道を右手にして、北上してサハリン沖をとおりロシアに入る。
ロシアのハバロフスクを左手にして少し北西に機首を振り、
シベリアを北西に上がって、
北極海を右手にかすめながら北欧のフィンランドへ向かう。
どんどん北上するので、
太陽は徐々に地平線に近づいていく。
太陽が夕日になって沈んでいくように見えるが、
西に向かっているので時間はほとんど進んでいない。
だから夕日になって沈むのではなくて、
北に地球を登っているから、太陽が地平線に近づいていくだけなのである。

 

北極海をかすめている時が一番緯度が上がった地点で、
その時は西を向いているが、
最も緯度が上がった地点からフィンランドへ緯度を落としていく時は、
こんどは南下していくことになる。
西に向かって飛ぶので時間はほとんど経たないが、
今度は太陽が地平線から離れていくように見えるはずだ。
西から夕日が昇ってくるって感じだろう。

 

A席では、何が都合が悪いかといえば、
ずうっと、窓の外の正面の地平線近くに太陽あり、
その太陽がどれだけ飛んでもくっついてくるのである。
直射日光がまぶしくて下の景色がまったく見えないのだ。

 

つまり、地球の北端を特に冬、昼間飛べば、
地球的に言えば太陽は必ず南の方角にあることになって、東から西へ飛ぶ時、
地球的に言って進行方向に向かって左側、
つまりA席側はずっと南の地平線近くに有る太陽を目の正面にして飛ぶことになる。

 

北海道沖を北上している時はまだ太陽が後ろの方にあるので
流氷などの下の景色を楽しむことが出来るが、
もっと北西に飛んで、大好きなシベリアの厳しい風景が見えてくるはずの頃には、
太陽が目の前に来ていてしかも地平線の近くいて、
まぶしくて窓を開けて下の景色を眺める気にならないし、
だいいち我慢してもまぶしくて見えない。
Aの席は日本から北極回りでヨーロッパに行く時、必ずそうなのだ。

 

出発の1時間前、中部空港の「Fin Air」カウンターで
「すいません、Aと反対側の窓側を下さい。」とお願いしたが、
「すでにAの席で予約されていますので、変更すると真ん中の席になってしまいます。」
と残念ながら変更できなかった。

 

国際便は今、世界同時金融危機でガラガラだと聞いていたので、
多分1時間前でも充分に変更できるだろうと、
たかをくくっていたのだが、
今のシーズン、学生さんの「卒業旅行」という訳の分からない旅客で、
中でもフィンランドはオーロラ見物で
学生さんたちに人気があるらしく、Fin Airはけっこう混んでいるのだ。

 

だからA席で、外は見たいが、まぶしいし、
反対側のトイレの窓から、写真はせっせと撮るが、窓が小さいからかピントが合わない。
ただでさえ、ボヤっとしている風景であるし、
北極海はほとんど真っ白で、カメラがピントを合わせる基準がないのであろう。
何となくボヤ~っとした写真しか撮れなかった。
A席に座ることになったのは、チェックインが遅くなったからかもしれないが、
それでみんなに少しでも話が出来たのだから、もちろん、後悔などするものではない。

 

 

SARS騒ぎの時や、9.11同時テロの時、
国際便はガラガラになって、私は海外出張の飛行機でずいぶん楽をしたが、
今回の世界同時金融危機、
航空業界全体、特に国際便はあの時よりも搭乗率が大きく落ちて
ずっとずっと厳しくなっているそうだ。

 

そんな、近来まれにみる経済危機よりも、
学生さんの「卒業旅行」需要はずっと強いようで、平和と言うか、
ただの出張男は、そう思ったのである。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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