谷 好通コラム

2007年10月22日(月曜日)

1759.ブレーキの二つの役目

車のブレーキには二つの役目がある。
一つは車のスピードを落とすこと。
もう一つは車の向きを変えることだ。

 

スピードを落とすためにブレーキを踏むのは一般的であって、
当たり前のことでもあるのだが、
もう一つの車の向きを変えるためというのは意外だと思うし、
普通の人には多分意味が分からないだろう。

 

これはサーキットなどを走っていると顕著に分かることなのだが、
カーブでハンドルを切っている時、
アクセルを踏んでいると車は外に膨らんで行こうとし、
アクセルを離したり、ブレーキを踏んだりすると車は内側に入っていこうとする。

 

アクセルを踏めばスピードが上がり遠心力が強くなるからで、
ブレーキはその逆だから、と思いがちだが、
実際にサーキット走行など限界スピードで走っていると、
そうでもないことに気が付く。
ハンドルをある程度切りながらカーブを限界スピードで曲がっていると、
まっすぐ走っているよりも抵抗があって、
アクセルを踏んでも速度はなかなか上がらない。
それでも、車は外へ膨らんでいこうとする力はかなりかかっている。
アクセルを踏むと重心(荷重)が後ろかかるので、
ハンドルが効きにくいという意味もある。
車の外への力に抵抗する形で、効きの悪いハンドルを押さえ込んで走るので、
プラスとマイナスが強い力で相殺し、車の姿勢はかえって安定する。

 

逆にブレーキを踏むと、
重心(荷重)が前に行くのでハンドルの効きが良くなる。
だから、ブレーキをチョンと踏んでハンドルを切ると、
車がハンドルを切った方向に巻き込むように(後輪が外にズルッと滑るように)、曲がる。
だからサーキットでは、車のスピードを落とす必要が無い場合でも、
車の向きを変えたい目的でチョンとブレーキを踏むことがある。

 

主に高速コーナーで、
このチョンブレ(チョンとブレーキを踏む)を使う。
富士スピードウェーの2コーナーの入り口、100Rの出口付近。
仙台SUGOの2コーナー、3コーナーの入り口、ハイポイントコーナーの入り口。
SPコーナーの一つ目も二つ目も入り口で、最終コーナーを入った所で。
(SUGOは高速コーナーの連続なのだ。)
岡山TIの2コーナーを入ってから、などなど、

 

アクセルを全開で行って、
120~150kmぐらいのスピードに乗ったところで、
少しだけ車の向きを変えたい時に、
ブレーキをチョンと踏んで、ほぼ同時にハンドルをチョンと切り込む。
すると、後輪がズルッと少しだけ外に出る感じで、
頭がコーナーの内側に入っていく。
車の向きが少しだけ変わったら、コーナー手前であろうが何であろうが、
0.1秒でも早くアクセル全開にし、
重心を後ろに乗せてコーナーを駆け抜けていくのだ。
(これを、”まるでモーターボートのように”とは、SUGOでお世話になった田ケ原選手の言葉。)

 

チョンブレの代わりにアクセルを戻すだけで行く場合もある。
(それでも重心は少し前に行く)
アクセルも踏んでいず、ブレーキも踏んでいない状態をパーシャルと言うが
駆動が前にも後ろにもかかっていず、車は不安定になるので、
あえて、チョンとブレーキを踏んで車の向きを変えるきっかけにする方が安定している。

 

それでもモテギの2コーナーとかMINE(今はもうないが)の3コーナーのように
パーシャルで回ったほうが速い場合もあるが。

 

この便利な車の向きを変えるためのチョンブレーキには、
大切な鉄則があって、
ブレーキを踏み過ぎてスピードを殺さないようにすることだ。
コーナーによってはある程度スピードも落とすこともあるが、
それでも、ブレーキを踏みすぎて必要以上にスピードを殺さないようにすることだ。
ここでスピードを殺してしまうと、タイムもガクンと落ちる。

 

ストレートエンドやヘアピン前などスピードを十分に落とすためのブレーキもあれば、
高速コーナーに入るため、あるいは脱出するための
車の向きを変えるためのチョンだけのブレーキもある。
そのチョンブレでは決して踏みすぎてスピードを殺さないことが肝心だ、
ということ。
すべて田ケ原さんからの受け売りである。

 

 

企業の経営においても似たようなところがあって、
いつでもアクセルをベタ踏みで全開、つまりイケイケドンドンという訳にはいかない。
社会情勢が変わった時とか、
会社の置かれている立場が変わった時とか、
あるいは、何らかの理由で方針を転換したり、方針を修正したりすることもある。

 

つまり、高速を維持しながらも、
車の向きを変えなければならないようなこともあるのだ。
そんな時、アクセルを踏んだまま、
あるいはアクセルを調整することによって
外に膨らみたがる車を押さえながら高速コーナーを回っていくよりも、
チョンとブレーキを踏んでスッと車の向きを変えてから、
またアクセル全開で加速した方がかえって速い場合もあるのだ。

 

企業ならば、何らかの軌道修正をする時に、
今のままの体制で調整しながら軌道修正を進めるよりも、
チョンとブレーキを踏むように、体制を変え、体勢をほんのちょっと縮小して、
軌道修正のハンドルの効きを良くしてから、
グッと一気に修正された方向に会社を持っていったほうが、
かえって素早く軌道修正が出来て、企業の事業スピードを上げることになることもある。

 

その時のブレーキは、軌道修正のためのチョンブレであって、
ブレーキを踏みすぎて、事業スピードの勢いを殺してしまわないことだ。

 

バブルがはじけた時などはすべての企業がフルブレーキングをして、
企業縮小に精を出した。

 

しかし、今、伸び盛りである企業には、
世の事業スピードを上げるためのチョンブレが必要ではあるが、
間違っても、ブレーキを踏みすぎてスピードを殺さないことであろう。

 

 

 

今日の夕方、監査法人の公認会計士の方とのミーティングの終わりに、
「社長、目が真っ赤ですよ。大丈夫ですか?」と言われた。
トイレで鏡を見たら、なるほど、目が血走っているように真っ赤になっている。
何ヶ月か前、
白目の部分に真っ赤な血の固まりが出来て、
びっくりして救急病院に行った挙句
「結膜下出血です。何の心配もありません。」と言われたことがあったが、
その様子とは全く違う。
白目の部分に血の固まりではなく血管が真っ赤になっていて、
まさに血走っている様子。
それを見たら、なんかジワッと痛くなってきた。
そう思うと、なんか体までダル~くなってきたではないか。
これはイカン。
すわっ、今度こそは一大事!と眼科の病院にすっ飛んでいった。

 

「あ~、とうとう目がつぶれるか。」とブツブツ言いながらも、
私の診察の番が来て、目医者の先生の前に座った。
この前と同じような明るい光が出る機械を使って私の目を診断した先生は、
「あっ、何か入っていますね。ハイ、ちょっとじっとして下さ~い。」と言って、
私の目に棒のようなものを入れた。
そして2秒。
「ハイ、取れました。」
・・・・・
何か目にゴミが入っていたらしい。

 

集中して話をしていたので、目にゴミが入ったのに気が付かず、
結膜を傷付け、充血してしまっただけだったのだ。
病名「結膜に異物が入った。」

 

ほぼ連続して、私の「目がつぶれるかもしれない。」の騒ぎは、
会社の諸君と来社していたお客様に、
要らぬご心配をかけただけで無事一件落着であった。

 

二度も同じことで騒いでしまったので、
私の「目がつぶれる。」は、すっかり”狼少年”になったことは間違いない。

 

無事、眼科から出て来た時、
夜空に月が出て、たぶん10,000mぐらい上空のうろこ雲に、
ブロッケン現象とはまったく違うが、それを思わせるような同心円の虹がうっすらと映っていた。
異物を取ってもらったら、異物が入る前より、かえってよく見えるようになった気がするが、
たぶん、気のせいである。

 

写真ではうっすらとした虹色までは写らなかった。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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