谷 好通コラム

2007年10月07日(日曜日)

1746.開発という名の自殺

日曜日の朝日新聞朝刊に、絶望的とも思える記事が載っていた。

 

以下、記事より抜粋。
「インドネシアで森林火災が多発し、大地に堆積(たいせき)していた泥炭(でいたん)が広範囲にわたって燃えている。熱帯の泥炭は湿地に守られていたが、近年、農地開発などで乾燥が進み、焼き畑の火が延焼するようになった。この火災で出る二酸化炭素(CO2)は、日本での総排出量を上回るほどの量にのぼる。地球温暖化にも大きな影響を与えかねず、国際社会の対応が必要な事態になってきている。
・・・・・
地球上の熱帯地域の泥炭面積の半分があるインドネシアでは、農地開発などで泥炭地の乾燥が進んだ1980年代ごろから、焼き畑や農地を広げるために放たれた火が延焼し、森林と泥炭の火災が相次ぐようになった。
カリマンタンの火災現場に入ると、木々だけでなく、地面から数十センチの深さまで泥炭がえぐれるように焼失していた。専門家によると、自然界が数千年かけて蓄えた炭素が一度の火災で放たれた計算になるという。日が暮れても、地面はくすぶり続けた。
例年、乾期の6~9月ごろにとりわけ火災が多発する。インドネシア林業省によると、今月2日に衛星から観測された火災の数は、全土で約1200カ所に及んだ。
国際湿地保全連合(本部・オランダ)が昨年末に公表した報告書によると、インドネシアの泥炭地から大気中に放出されるCO2は年平均20億トン。日本の排出量13億トンを上回り、全世界で化石燃料の消費に伴って排出される量の8%に相当する。このうち14億トンは火災で直接発生し、残る6億トンは、乾燥が進んで活発になった微生物の活動で「冷たい燃焼」と呼ばれる分解が進み、生じているという。

 

湿地である泥炭地に溝を作って、水を排泄し、
湿地の乾燥による微生物の活発化によるCO2と、
その地に火を放つことによって樹木が燃え、その火で泥炭が延々と燃え、
日本国中から排出される二酸化炭素(CO2)総量の1.5倍ものCO2が排出されるという。

 

 

湿地に溝を切って水を排泄し農地や宅地に使える土地にする方法は、
昔、釧路湿原で「原野商法」という詐欺集団がとった方法と同じだ。
自然の宝庫であり、大量のCO2を消費し減らしてくれる湿原を壊すだけでなく、
微生物が活発化し大量のCO2を発生する。
地球環境を考えると最悪の方法である。

 

その上に、火を放つことは「焼き畑農業」と言って、
世界中の未開発国で行われている原始農業の形である。
新聞に載っていた現地の人に対するインタビューでは、
「焼けた跡に作物を植えると良く育つ。2~3年使ったら、次の森を焼いている。」
とあった。作物とは主にトウモロコシ。

 

そして、その焼畑作りによって泥炭地では泥炭が燃え、
ただの焼畑よりも桁違いに大量のCO2が出ていると言うのだ。

 

絶望的に思えるのは、
この泥炭地での焼畑が近来急激に増えている要因。
なんと、バイオ燃料の生産が増え、
トウモロコシなどの穀物相場が高騰しているからなのだと言うのだ。

 

バイオ燃料とは、
トウモロコシなどを発酵させて自動車の燃料に使えるエタノールなどを差す。
バイオ燃料はCO2の発生を抑える”エコエネルギーと言われているが、
その訳は、穀物が育つ時にCO2を吸収して育つのだから、
その穀物から出来た燃料を燃やしてCO2が発生しても、
全体で考えれば相殺されて、CO2を発生することにはならないという論理だ。
しかし穀物を運ぶためのトラックから出るCO2や、
穀物を発酵させバイオ燃料を製造する過程でCO2が発生するので、
ブラスマイナスゼロとは行かない。

 

しかも、そのバイオ燃料の製造が増えてきたために穀物相場が急騰し儲かるため
穀物の生産が上げるために、焼き畑などで農地が急激に増えているのだ。

 

CO2を吸収しているのはジャングルであり、森林であり、湿地である。
そこに育っている膨大な植物が、世界中のCO2を吸収してくれているのに、
そのジャングルを切り開き、森林を潰し、湿地から水を抜いて乾燥させ、
植物群を全滅させながら畑が作られている。
しかも、しかもだ、農作物が良く育つ畑ができるからと言って、
火を放ち、大量にCO2を発生さながら焼き畑が行われている。
もっとしかもだ、焼き畑を作るために放たれた火によって、
数千年がかりで蓄積された炭素が、
数千年からすれば一瞬とも言える火災によって、
CO2という形で、一挙に大気中に放出されているのだ。
その量たるや、日本国中から排出されるCO2の総量をはるかにしのぐ桁外れの量。

 

自動車によるCO2の排出量は、CO2全体の20%程度だと聞いたことがある。
CO2の半分は火力発電からのものだとも。
その20%のCO2を発生する車のホンの一部が
CO2を何割か相殺するバイオ燃料を使って、
世界中の穀物相場を引き上げた。
穀物が儲かる商品になったことによって、
CO2を吸収するジャングル、森林、湿地が破壊されて、畑が作られている。
しかも、絶望的にも、
その畑が作られる過程によって、総量をはるかに越えるCO2が発生している。

 

こんなバカげた循環が、地球灼熱化によって地球の破壊をペースアップしているとしたら、
それをやめられない人類は、やっぱり絶滅するしかないのかもしれない。
開発という名の自殺行為。

 

 

私が昔、ガソリンスタンドを経営していたころ、
たまたま売り上げが思うように上がらず、収支が悪くなったとき、
あせって、金をかけて物くれ集客イベントをやったことがある。
そんなイベントは一時的な集客にしかならず、
莫大な経費がかかっただけで、収支がかえって悪化しただけであった。
こんな時は、まず、最初に経費を抑えることだろう。
経費を抑えることを実行した上で、
経費をかけることなく、
店舗としての接客力、技術力、商品力を上げることに全力をあげることだ。
お客様が来たくなり、繰り返し来たくなるような店作りをすれば、
お客様は必ず増える。
収支が悪くなると言うことは、お金が無くなることであり、
そこにお金でお客様を“集める”手法を取れば、もっとお金がなくなることになり、
破滅的に収支は悪化する。
お金が無くなってきたら、まず、お金を使わなくすることだ。
その上で、お金が入る力と体質を作り上げること。
あせって、お金を使ってお客様を無理に集めることではない。
これは、私がガソリンスタンド時代に学習した鉄則である。
会社の経営にも共通した鉄則ではないだろうか。

 

微々たるCO2の抑制のために、
抑制効果の何百倍、何千倍のCO2を発生することになっている愚は、
愚として早く学習すべきではないだろうか。

 

自らの迷彩能力を信じて、
カメラを10cmぐらいに近づけても、
ひたすらジッとしているこのカエルの方が、本当は人間よりも賢いのかもしれない。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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