谷 好通コラム

2007年09月16日(日曜日)

1732.鈴置君のお父さん

[鈴置君のお父さんの車に水シミが着いた]

 

アイ・タックの若き役員である鈴置力親君がしていた話。

 

「私の親父は、車を大変大事にしていて
雨の日に車で帰ってきた時には、ガレージに車を入れる前に、
水道の水をホースで車全体にかけてからガレージにしまっているのですが、
それでも水シミがいっぱいボディ全体に出来ていて、
ひどい状態になっています。
親父もそれを見て
『一体どうすればキレイにしていられるのだろう。』と、嘆いています。」

 

彼の親父さんにすれば、
雨道を走ってきたあと泥をちょっとでも落としておきたいのと、
「雨水よりも水道水の方がきれいに決まっている。」という概念で、
汚れた車に水道水をかけてからガレージにしまうという習慣になったのであろう。
しかし残念ながら、この習慣が、
車にいっぱい出来てしまった水シミの原因なのだ。

 

 

[雨水はどうやって出来るのか]
まず主に海の水が蒸発して、その水蒸気が上空で冷やされて凝結し
小さな水の粒子となって雲を作る。
その小さな水の粒子がごく小さなうちは気流に乗って雲を形成しているが、
水蒸気が補充され続け大きな水玉に成長すると、その重みで地上に落ちてくる。
小学校の理科で習った雨の仕組みだ。
その原理からいえば、雨水は蒸留水そのものであるが、
水が凝結する時、上空に舞い上がっているたとえば黄砂のような固形の粒子を核となり
その核からミネラル分が溶け込んだりしていて
必ずしも水分子だけから出来た蒸留水とはかなり違う。
まして近来の大気汚染で、
大気中の亜硫酸ガスとか窒素酸化物が水に溶け込んで
ひどい場合には「酸性雨」として自然界を破壊する原因にもなっている。
それでも、しかし、
雨水は自然の中で一番きれいな水と言えるものだ。

 

[川の水には大地のミネラルが溶け込んでいる]
その雨水が大地に降り注いで、
大地にたっぷりと含まれているミネラルや有機物を水の中に溶け込ませながら、
地下に潜って地下水になったり、地表を流れて河に集まってくる。
地下水も、河の水も、その水の中にはたっぷりとミネラルが溶け込んでいるのだ。
そのミネラルとはカルシウムであったり、マグネシウムであったり、珪酸であったりする。

 

[水道水は河の水濾過・殺菌した水]
水道水とは、地域の近くを流れる川の水を浄水場に引き入れ、
大きな沈殿槽で固形物を沈殿させた上澄みとしての水をさらに濾過して有機物を除去し、
塩素を使って殺菌したりして、
人間が飲用に使っても大丈夫にした水である。
水道水の原料となる河の水から、人間に害のあるものを取り去った水なのだ。

 

[ミネラルを多く含んだ水=高度の高い水=ミネラルウォーター=美味い水]
カルシウム・マグネシウムなどのミネラルは人間に害ではない。
だから、水道水はミネラル分を除去していない。(簡単には出来ない)
むしろ、ミネラル分を多く含んだ水、つまり硬度がある程度高い水を、
美味い水、「ミネラルウォーター」としているぐらいだ。
その硬度は、浄水場に引き込んでいる河川によってかなりの差がある。

 

[ミネラルが水シミの犯人]
人間の飲料としては美味い水の要因であるミネラルは、
車にとっては、水シミの素となるやっかいな存在である。
ミネラル分を含んだ水道水(地下水も同様)で車を洗ったり、すすいだあと、
水を拭き上げずにそのままにしていると、水は蒸発してなくなってしまうが、
蒸発しないミネラル分は塗装上に取り残され固形物として析出する。
析出したミネラル分は塗装上に白く残るが、大部分は拭き取れば取れる。
しかし、少しの時間放っておくと塗装面の組織と反応して塗装に固着してしまうことがある。
これが水シミの現象であり、
固着してしまったミネラルは非常に硬く簡単には除去できない。

 

[洗車後、水を拭き取る理由]
また、固着していない粉状も拭き取るときの摩擦で、塗装に傷をつけることにもなる。
だから、洗車などが終わった後、
乾いてしまう前に、つまりミネラルが水に溶け込んでいる間に、
水を拭き取らなくてはならないのだ。

 

[海水はNaClというミネラルが大量に溶け込んだ水]
ミネラルといえば、NaClで表される“塩(しお)”も代表的なミネラルだ。
海水はそれが大量に溶け込んでいるだと水と言える。
水道水に溶け込んでいるカルシウム・マグネシウムなどのミネラルの量は、
海水の塩の量に比べれば桁違いに少ないが、
海水で洗車をしてそのまま乾かしてしまったら、
車全体が塩で真っ白になり、ひどい状態になることは誰でも容易に想像できる。
程度の差は大きいが、
水道水でも洗車をした後そのまま乾かしてしまったら、やはり真っ白になってしまう。
程度の差こそあれ、同じ現象なのだ。

 

 

[鈴置君のお父さんはプールのあと、海水のシャワーを浴びさせていた?]
私は今グァムに来ているが、
海で泳いだ後、必ず水道水が出るシャワーで体を流さないと、
海水の塩が体に粘りついて気持ちが悪い。

 

鈴置君のお父さんの話を思い出して欲しい。
彼のお父さんは雨の日、車をガレージにしまう前に、
ザバっと車全体を水道水ですすいでいたという。
車が大切にしているからだ。
しかしよく考えてみると、ミネラル分が少ない雨に濡れた車を、
それが泥を落とす意味があったにしても、ミネラル分が入った水道水をかけるのは、
洗っていないのだからだから当然拭き上げもしないし、
まるで、プールに入った後に(塩というミネラルが濃厚な)海水でシャワーを浴びて、
そのまま体を乾かしてしまうのと、
似ているのでないだろうか。
かえって、車にとっては迷惑なことだったのではないだろうか。
それで、お父さんの車にはミネラルのシミが出来てしまっているのではないのだろうか。

 

 

鈴置君のお父さんの話は、ちょっと特殊な例かもしれないが、
水道水にミネラルがたくさん溶け込んでいることから、
じつは、洗車に多くの制約が生まれているのだ。
たとえば、洗車の後に必ず水を拭き上げるのは、ミネラルのせいであって、
水だけならば、そのまま乾かせば何も問題がないのだ、
むしろ、拭き上げることによって、
車の塗装を乾いた状態にまで擦ることになるので、デメリットも多い。
それを解決するのが「純水」なのだが、
純水については、話が長くなるので、また明日以降書くことにする。

 

 

鈴置君のお父さんの名誉のために言うが、
誰だって、雨水より水道水の方がきれいだと思っているし、
人間が飲んでも大丈夫な水道水に、
車にとっては害になるものが溶け込んでいるなんて思ってもいない。
お父さんの車を大切にする気持ちがそうさせていただけなのだ。

 

鈴置君は、お父さんに、もうすぐ発売になる純水機をプレゼントすべきなのであろう。

 

 

この話は、次号のキーパータイムスの記事の原稿の元になる。
休暇中であっても、
小学生が夏休みに宿題をもらうように、
私もしっかりと原稿書きを持っているだけで、
ちゃんと、私は休暇らしく休んでいる。ご心配なく。

 

グァムの海と空と雲、そして太陽。

 

 

海から蒸発した水蒸気が凝固して、小さな水の粒で出来た雲となり、
その粒が成長して、自分の重さに耐え切れず、雨となって落ちる。
南の海の空、一番単純な水の循環が、ここにある。

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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