谷 好通コラム

2007年06月26日(火曜日)

1663.伸ばすための無駄

企業が成熟してくると、
その活動を鈍らせた方が利益が出やすいという事実がある。

 

企業がある程度の大きさに成長したら、
扱っている商品は、ある程度の知名度が出来上がっており、
固定したユーザーも出来上がっている。
販売網もしっかり自立していて、
そうなると、
格別の営業をしなくても、ある程度はコンスタントに商品が売れていくものだ。
何のコマーシャルもせず、営業もしなければ
販売コストは恐ろしく低く抑えられることになり、
必然的に営業利益は非常に高くなる。

 

たとえば、
発売当時には激しい営業と、
絨毯爆撃のようなコマーシャルを繰り広げて、
知名度が高くなった商品が、
ある時、ピタリとコマーシャルを打たなくなっても、
その商品の良さがマーケットに定着したことによって売れ続け、
何年も、何十年も売れ続け、
ある商品だけで、メーカーの一族が巨万の財を成すことがある。
昔はそんな商品がいっぱいあった。
売り上げに対する純利益の率が一番高いのは、
営業活動などをやめたときなのだ。

 

しかし、時代の流れが早く厳しい現代では、
次々と新しい商品が出てきて、
どんなヒット商品でも、いつの間にか影が薄くなってしまうので、
常に新しい時代に合った新商品を打ち出していかなくては、商品の衰退が早い。
だから、昔のように、
コストのかかる営業や商品開発をせずに、
商品が売れ続けるのを左団扇で見ていてオーナーが財を成すような事は少なくなった。

 

それでも極力、営業活動や新規商品の開発を控えて、
コストを低く抑える手法は、今でも利益を上げることだけを考えれば有効だ。
何よりも人件費を驚くほど抑えることが出来る。

 

もちろん売り上げは上がらず、企業に発展性はない。
というよりジリ貧が続き、いつかは廃業の憂き目に会うわけだが、
その時点まで無駄な焦りを持たなければ、経常利益率の水準は高いままであり、
オーナーとしての蓄財にはもっとも有効だろう。

 

それとは反対に、会社を伸ばしていこうと行動すると、
伸ばすためのコストがかかってきて、
そのコストを現状のビジネスの中から捻出する事になって、
大きく利益を圧迫する事になる。

 

能力を持ったスタッフを増やそうとすれば、
まだ能力を持っていない人材を、能力を持たせるために余分に抱える事になるし、
その間の必要以上の人件費は無駄と言えるし、
能力を持つ過程で去っていく者もいて、
これにかかったコストは全くの無駄となって消える。

 

新しい商品を開発するためには、膨大な開発費がコストとなり、
完成した商品を普及させるために、また大きなコストがかかる。
それで、その商品が社会から受け入れられればビシネスとして成り立つが、
開発の方向を間違ったりすれば、すべてが無駄になる事だってある。

 

会社が発展していくためには、
伸びるために発生する大きなコストと無駄を吸収できるだけの余裕と、
タフな体質が必要なのだ。

 

またある段階を超えるために特に株式の上場などを目指そうなんて考えれば、
桁違いの余分な無駄が発生する。

 

会社を伸ばすことなんて考えない方が、ずっと儲かるのに、
なぜ伸ばそうと考えるのか。
それは、自分の中に、与えられた使命とも思える目的があるか、どうかだろう。
あるいは、もう一つ上の桁の利益を考える時か。
あるいは、押さえきれぬ闘争心の果てか。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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