谷 好通コラム

2005年07月16日(土曜日)

1212.飛行機タダ乗り法

昨日の話、
飛行機を無料で乗る方法をアイビー石油の馬場さんから聞いた。
馬場さんは講演で全国を飛んでいるが、
JALの飛行機には、ほとんど“タダ”で乗っているというのだ。

 

タダ乗りと言ってもインチキではない。
ちゃんと合法的な方法である。

 

馬場さんの言うのには、
「アメックスカードのポイントが、JALのマイルレージに対して互換性があるから」
だそうだ。
最初、私にはそれが何の事か解らなかった。

 

詳しく教えてもらった。
彼は色々な支払いを「アメックスカード」で行なっているという。
ホテル代、電車代、アスクルでの事務用品などの支払い、
飲食店の支払い等などカードで支払いが出来るものは、
出来るだけアメックスカードで支払う。
カードで支払っても代金が割り増しになるわけではないのだから、
別に損にはならない。
そして、
どんなクレジットカードにもあるように、アメックスカードのポイントが貯まる。
会社の経費としての支払いも、
出来るだけアメックスの法人カードを使うので、
ポイントはハイペースで貯まっていく。
ちなみに、法人カードでもポイントが貯まるのはアメックスカードだけだそうだ。

 

貯まったアメックスカードのポイントを、JALのマイレージマイルに交換する。
そして、交換したJALのマイレージマイルを、
JALのチケットに交換して、
飛行機に乗るという仕組み。
(JALのマイルは、貯まった時には20万マイルを越すこともあるという。)
だから、JALの飛行機にはいつもタダで乗っているというのだ。

 

これで、会社の交通費という経費が浮き、
彼の会社の大きな黒字にとっては、わずかではあるだろうが一助になる
説明してもらえば、なるほどと思うが、
よく調べたものだ。

 

と同時に、これはすごいことだ。
彼の活動の広さから見ると、
この工夫で浮く費用は、ひょっとしたら年間数十万円、
ひょっとしたら百万円以上になるだろう。

 

何も工夫せずに当然のこととして使ったかもしれないこのお金がゼロになる。
このゼロになった費用は、会社の経常利益、純利益にまともに効く。

 

平均的な会社では、売上げに対する経常利益率は2%程度と言われている。
10万円の経常利益のために500万円の売上げが必要であるということで、
すると、この数十万円、
たとえば70万円が浮いたとしたら、
700,000円円÷0.02=35,000,000円
実に、三千五百万円の売り上げから出てくるはずの純利益が、
何のリスクも無しに、ポコっと生まれた事になる。
これは会社の経済効果としては実に大きい。

 

会社のスタッフに対して、
ビジネスとしての利益を厳しく追求しているだけでなく、
自分の出張旅費を、
アメックスでの支払いと、JALのマイレージに交換する事によって、
大きく節減し
スタッフらが出してくれた利益を一円でも減らしたくないという姿勢は、
経営者として頭の下がる思いである。

 

 

普通の人は、
飛行機に乗ってマイレージを貯めて何かをもらい、
馬場さんは、
買わねばならない物の支払方法を工夫してマイルを貯め、
飛行機にはタダで乗っている。
だから、飛行機に乗ってもマイルはない。

 

逆転の発想である。
この人の頭の中は一体どうなっているのだろう。

 

そういうことを現実に実践している馬場さんと
対して、同じ経営者としての私はどうであろう。

 

私も飛行機での移動が多く、
海外出張が多くなる前までは、目まぐるしく国内線に乗り、
マイルが何十万マイル単位で集まり、
時には、世界一周を二人でファーストクラスで行けるまでの大きなマイルが貯まった。
(今は海外に行くことが多く、国際便は航空会社が多すぎてマイルが絞れない。)

 

そして、その“飛行機に乗って貯めた”マイルは、
娘に、「そのマイルを好きに使っていいよ。」と、くれてやっていた。
単に娘に対するプライベートなプレゼントである。

 

馬場さんのマイレージの仕組みを逆手にとって経費節減を実践する使い方と
私の私的なマイレージの使い方、
その大きな差は、
そのまま、志の違いなのかもしれない。

 

もっともっと経営に真剣にならなくてはいけない。
恥ずかしいことをしていたと切に反省する。

 

 

そういえば、話は少し変わるが、
全国のワシントンホテルチェーンが、
「ワシントンホテルに泊まってポイントを集め、キャッシュバック1万円!」
というキャンペーンを張ったことがある。
サラリーマンに「お小遣い制」が多いことを逆手に取った企画で、
私は経営者として非常に不愉快であったことを憶えている。

 

会社の経費でワシントンホテルに泊まると、
本人に現金が戻る制度。
これは、個人別の小さな収賄システムではないか。

 

賄賂(ワイロ)を受け取ること=収賄というのは、
「特定の取引相手から個人的な金品を受け取り、
自分が持つ権限をもって、その特定の取引相手に利益を与えること。」

 

「出張者が、一万円のキャッシュバックという金品を目的に、
どこへ泊まるかという自らの権限を持って、ワシントンホテルに利益を与える。」
こんなのだって、
サイズはあまりにも小粒だが、
意味的には立派な収賄ともいえる。

 

一生懸命活躍してくれているスタッフに対し、
あまりにも細々した事にまで、禁止を張り巡らすことは懸命なこととは思えないが、
ワシントンホテルの場合、
キャッシュバックという“現金”であり、
それを堂々とあからさまに宣伝し、えげつなさを感じさせたので、
出張スタッフにワシントンホテルの利用を禁じた企業が少なくなかった。
私たちの会社でも、公式ではなかったが禁止に近い話をみんなに伝えたことがある。

 

そう考えれば、航空会社のマイレージだって、
そんな意味を持っているとも言える。
その対象が“現金”ではないので、えげつなさを感じさせないが、
大きな意味では、同じ傾向を持っていることは否定できない。

 

そのマイレッジの仕組みを逆手にとって、
馬場さんは会社のために貢献する利用の仕方を実践していた。

 

よく考えなければならない。
その姿勢を学び、自分を見直さなければならない。
年間数十万円の節約の話だけではなく、
その姿勢が肝心なのだろう。

 

しかし、マイレッジは航空会社の支配地図までに強い影響を与えた。
強力な力を持っている。
それは事実である。
JALとJASが合併したのもANAのマイレッジに負けた事に一因がある。
それほど強力な影響力を持つ。

 

この話では、マイレッジ集めて利用する側からの話であったが、
次の話では、マイレッジをビジネスの中で使って行く側に立っての話をしたい。

 

JALとANAの戦いは続く。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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