谷 好通コラム

2005年05月11日(水曜日)

1171.まずは経営者から

今日は、鳥肌が立つような経験をした。

 

恐ろしい経験をしたわけではない。
すごく感動してしまったのだ。

 

今、とても大きなプロジェクトに参加しているのだが、
そのプロジェクトを進めているある大企業の幹部の方々の所にご挨拶に伺った。
そこでの場面だ。

 

私たちの研修で2番目に厳しい研修「総合洗車スクール」を、(一番目は快洗隊研修)
たくさんの方に受けていただく。
「具体的な訓練を実施し、やれるまで“やる”」が、この研修のテーマ。
一回のスクールに研修生6~9名。
対するインストラクターは2~3名。
今までにないスクールの数の開催となり、
私たちの会社にとっても総力を挙げてのプロジェクトとなる。

 

「どうせやるなら、出来る限りの最高の結果を出したい。」
との先方の並々ならぬ意欲に
私達も出来うる限り、限界の所までやりたいと決意した。

 

このプロジェクトの総責任者の言葉。
「やるからには、経営者も同じように訓練を受け、実践をするべきだ。
現場の人だけをいくら訓練し指導しても、
経営者がこれからやることをよく理解しなければ、どんなことも成功しない。
そのためには、経営者も同じ訓練を受けた方がいい。
そのためには、まず、“私たち”が先行して訓練を受けるよ。
いつもと同じようにビシビシやってくれていい。その方がいい。」

 

“私たち”って、大会社の経営者幹部の方達のことだ。
いつもは運転手付き黒塗りの社用車に乗っていらっしゃる方達のこと。

 

そんな方達が、まず、率先して訓練を受けるとおっしゃっている。
そして、「いつもと同じようにビシビシやってくれていい。その方がいい。」なんて。
私は耳を疑った。

 

そして、
「予定の研修が終わったら、それぞれの現場の経営者の人たちにも、
ぜひ、研修を受けてもらう。それが絶対に必要なんだ。」

 

私は、自分の腕に鳥肌が立つのを感じた。
思わず目頭まで熱くなってしまった。

 

さすがというか、
その度胸と言うか、なんと言うか、
勝ち組の経営者としての凄みを感じた一瞬であった。

 

 

私たちの会社のように小さな会社では当たり前のことだが、
何をやるにしても、新しいことは、まず自分でやってみる。
新しい所には、まず自分が行ってみる。
新しいことに関わる人には、まず自分が会ってみる。

 

当たり前のことだが、
経営者として当たり前のことだが、まず自分がやってみる。

 

最高責任者である自分が解っていなければ、どんなことも絶対にうまく行かない。
自分が解っていなければ、
社員のやったこと、仕事を正しく評価できないし、
正しく評価されない仕事は、社員にとってやりがいのない仕事となる。
社員がやりがいを持って仕事をしてくれなければ、
仕事がうまく行くはずがなく、
仕事がうまく行かなければ、いい結果が出るはずがない。

 

経営責任者の仕事とは、
会社としてあるべき仕事をよく理解し、あるべき指針を出すこと、
そして、社員の仕事が出した結果を、理解し、正しく評価できることであると思う。
だから、
経営責任者の仕事とは、あるべき仕事をよく理解することから始まる。

 

今の私はどうだろうか。
「なんでも自分でやってみる。そしてよく理解する。」を、
もっぱら実践してきたつもりだったが、
今の自分はどうだろうか、

 

見るべきものを見ずして、
電話で、結果だけ聞いていることもあるような気がする。
初めての事を、指示だけして、実際を見ないこともあるような気がする。
グループ全体でたった100名そこそこの会社の経営者のくせに、
すでに、「まず、経営者が・・・」をおろそかにしている場面があるのではないか。
私は、この大会社での出来事に会い、自分のことを考えた。

 

そんなことを考えながら、ふと、昔のことを思い出した。

 

昔、10年以上も前のこと
まだ私もキーパーの導入講習を自分でやっていた頃、
寒い冬の雪国で、
雪の中、導入講習をしようとした時、
そのスタンドのマネージャーが、
「洗車はその二人が担当だから、そいつらに教えといて。」
と言って、
新入生とも思える若い子をフィールドに残して、
自分は建物の中でストーブにあたっていた場面があった。

 

「マネージャーも一緒に話を聞いて、一緒に作業を憶えてくれませんか。
大切なお客様の車に対しての技術ですし、洗車収益に必ず貢献できるはずですから。」

 

「やるのはこいつ達なんだから、こいつらが憶えればいいすよ。」
と言って、ストーブのそばから離れようとしない。

 

私は、その様子に怒りがこみ上げてきたまま、
あきらめて、その二人の若い子にキーパーを教え始めた。
教える私のその語気は厳しく、よっぽど怖い顔をしていたのだろう、
若い二人のスタッフは、怯えたように体を硬くしていた。

 

それに気がついた私は、この子達を怯えさせた自分を恥じた。
ちょっと気を取り直し、深呼吸をして、
いつもの通り、キーパー導入講習を進めた。

 

上の者が楽をして、つらいことは下の者にやらせておく、
その店はもちろん今はない。
その会社自体ももうとっくにない。

 

 

今日の大会社の幹部の方の言葉、
「まず、経営者からだよ。
そのためには、まず、“私たち”が先行して訓練を受けるよ。
いつもと同じようにビシビシやってくれていい。その方がいい。」

 

これにはしびれた。
ビリビリにしびれた。

 

私には、このようなことを言えるだろうか。
果たして言えるだろうか。
自省せねばならない。

 

 

今日はつらいこともあったが、
このことだけで十分に充実した一日であったのだ。

 

今日の富士山。
名古屋からの途中まで雲が低かったので、絶対に今日は見えないと思ってたのに、
不意に見えた富士。

 

 

今日最後の仕事、とても力のありそうな人との面接のあと、
鶴見部長と大貫君と一緒に早めの晩飯を食べた。
純アメリカ式のステーキ屋さん。
ダイエットの敵の食事であった。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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