谷 好通コラム

2004年12月10日(金曜日)

1073.日本の街≒ソウル

昨日から名古屋を出て出張に出ている。
まず一日目は韓国のソウル。

 

今回は、いつものスケジュールびっしりで鬼のような出張ではなく、
半分遊びで、リラックスした旅にしようと思っている。
だから、気心の知れた人と一緒に来ている。
一人は、私たちの大切なお客様であり、最も信頼のおける友人でもある“柴田さん”。
会社には、「仕事での出張。あくまでも仕事である。」と言ってあるそうだ。
こんなことを社員に言いながらリラックスできる柴田さんは大物だ。
旅の連れとしてはこんなに楽しい相手はいない。

 

もう一人は、プロレーサーの“松永まさひろさん”
トムス・スピリッツからGT選手権GT300クラスに出ている
バリバリのプロレーサーである。

 

このお二人には、
一緒に行こうと思ってわざわざ誘ったわけではない。
たまたま、なんかの用事で電話したか、あるいは電話がかかって来た時に
「私は中国によく行っていますけど、いつも仕事ばっかりなんですよ。
たまには遊びで中国にも行きたいですよね。」と、
そんな話をしていて、
「じゃあ一緒に行こう」ということになっただけ。

 

だからこの取り合わせもまったく偶然であって、
でもこの凸凹トリオで、けっこう楽しい旅になっている。

 

では、なぜ一日目が韓国・ソウルか?
最初は中国だけの予定であったが、
谷常務と荻野部長が9日に韓国のYoonさんに会いに行くと聞き、
ついでに私たちも韓国・ソウル廻りで上海に入ることにしたのだ。
ただそれだけのこと

 

今、これを書いているのはそのソウルが終わって、上海に行く飛行機の中。

 

ソウルには昨日の昼前に到着した。
先にソウルに行っていた荻野と、Yoonさんが空港に迎えに来てくれた。
Yoonさんと再会。がっちり握手である。

 

ソウルは不思議な街であった。
一言で言えば、日本そっくりであって、
その雰囲気から、走っているからして日本そっくりなのだ。
ただし、走っている車は見たことのないような車がほとんどで、韓国の国産車。
韓国メーカーの車は日本にはあまり輸入されていないので、
実際に実物を見たのが初めてである車が多い。
見覚えがある車は“現代”の“XG”ぐらいのもの。
でも、韓国産の車は、その雰囲気とデザインが日本車にものすごく似ていて、
まったく違和感がない。
だから、走っている車が日本にそっくりであるという感覚になる。

 

街の建物のクォリティ、
ショーウィンドウのセンスの高さ、
道路の精度の高さ、行き届いた清掃。
並木の美しさ、走っている車のマナー、クラクションがほとんど鳴らされないこと、
どれ一つをとっても、日本のレベルに完全に追いついていると言っていい。

 

私はソウルに来る前は、
韓国は日本と中国の間ぐらいのレベルの国であろうとの勝手に創造していた。
ところが、実際に来て見ると、
そのレベルの高さに驚いたと同時に、
中国にいる時の、騒然さに対する緊張感をまったく持たなくてもいいことに、
心からホッとしている自分にも驚いた。

 

韓国では、特にソウルでは、
中国にいる時の、体の芯が疲れてくるような緊張感がなくて済む。
これは発見であった。

 

この写真、日本の都心で撮った写真のようでしょ。
でも、日本車は一台もありません。全部韓国製の車です。
日本車に似ているけど全部韓国製です。

 

 

この日の目的は、韓国の洗車屋さんの実情を見に行くこと。
Yoonさんが案内してくれたのは、ソウルの中でも最もにぎやかで、
若者の憧れの街(Yoonさんいわく)である。
もちろん地価も高い。

 

センスのいい建物の間に突如現れた「洗車屋さん」
それも3軒が固まって洗車屋さんをやっている。
その様子を見てビックリ。次から次への洗車の車がやって来て、店は超大忙し。
洗車は手洗い洗車のみである。
Yoonさんが自分の車を洗車するように依頼して、それをビデオと写真に撮った。
この洗車は20,000ウォン=日本円で約2,000円である。
(このような特殊な場所でなければ1,500円ぐらい)
快洗隊の洗車とほとんど変わらない。
しかし、はっきりした値段は決まっておらず、店のスタッフとの交渉で決まるという。

 

 

洗車の手順はこうだ。
?まず、室内のマットの内“汚そうなマットだけ”出していく。
?高圧のスプレーガンで、ボディ全体をスプレーする。
?バケツに入れてあった洗剤が混じった水を、バケツで一杯ぶっ掛ける!
?大き目のスポンジでボディ全体をこすっていく。泡はかすかに出る程度。
大きな車の天井は、床磨きに使うデッキブラシのようなモップでこする。

 

 

?また、高圧のスプレーガンで、ボディ全体をスプレーする。
?大きなタオル(明らかに汚い)で、ボディを拭き上げていく。
?車を前に移動して、エアーガンでボディの水を切っていく。
?同時に室内もエアーガンで、ほこり・ゴミを吹き飛ばす。
?最後に、仕上げ吹きをして、タイヤワックスを塗る。

 

 

これだけの作業を2~3人がかりで、15分ほどで仕上げる。
しかし、

 

A.スタッフは全員私服であり、総じて汚い。
B.特に手には、厚手のゴム手袋をはめたままで、そのままハンドルまで握る。
C.車に傷が着くかどうか等はまったく意識せず、作業はすべて雑に見える。
D.車移動の運転は乱暴極まりなく、急発進・急ブレーキを繰り返す
E.店の内部はグチャグチャで、お客様の待合室はないに等しい。
F.接客はあくまでも「洗ってやる」であり、粗雑極まりない。

 

 

唖然としてこの洗車ぶりに見入る
谷常務と、荻野部長、そして野次馬二人。

 

 

こんな洗車で、
一日100~150台の洗車客がこの店を訪れるという。
そこで勝手に、この店の売り上げを推計して見る。

 

1台平均1800円×1日平均120台×稼働日数(雨日を除)22日=4,752,000円
ホホウ、快洗隊の刈谷店よりもすごいではないか。
大したものである。

 

今度は経費予想。
各数字はYoonさんに聞いた数字を参考とする。

 

この時、店にいたスタッフは7名、
ならば、多分従事スタッフ全体では12名ぐらいであろう。
?人件費(1人20万円平均)×12=240万円(韓国は人件費が決して安くない)
?地代100万円。ここはソウルの中でも特級の土地なのだ。
?この土地(約100坪)を借りる時の“権利金”3,300万円(これは戻ってこない)
償却、月50万円ぐらい
?保証金1,000万円~2,000万円
?建設費?円。たぶん500万円ぐらい。月の償却10万円
?水道光熱費、韓国は水道代が意外と高いという。月10万円ぐらい?

 

大雑把に計算して、400万円ちょっとか/月

 

まぁまぁの利益だが、
見た目の派手さよりは儲かっていないって感じか。

 

韓国はただいま急激にモーターリゼーションの成熟期に入りつつある。
車は、立派になった。
しかし、それをきれいに保ち、
傷をつけない手洗い洗車の供給が間に合っていない。

 

需要過多の過渡期である。
だから、
あんな雑で、
CSからおよそかけ離れた洗車屋さんがまかり通っているのだ。

 

そこに、Yoonさんのように
商売の勝ち負けはお客様が決める。という商売の鉄則を知っている人が、
快洗隊の仕組みを韓国に取り入れようとしている。

 

一時的な供給過多に甘えてCSを見失っている者は、
CSをきちんと備えたものの出現になすすべを持たないだろう。
韓国はすでにCSを基本においたビジネスが定着しつつある。
そういう意味において、
韓国での快洗隊の仕組みの導入は勝負を勝ち取ったも同然のように思えた。

 

何にしても、やって見なければ分らないが、
どうしても負けようがない気がして、背筋にゾクゾクッとしたものが走った。
韓国は、“やり”である。

 

 

ソウルには、たしか3回目である。
一回目も二回目も観光旅行であって、
だから、団体バスの中から見たソウルしか知らなかった。

街の風景というものは、目線の高さによって印象が大きく違う。
今回は、初めて乗用車の中からの低い目線でソウルを見たわけだ。
バスからの風景と、街の人がいつも見ている風景では、
目線の高さが大きく違うので、その印象も大きく変わる。
やはり、今回は、前に2日来た時のソウルの印象とはまったく違う印象を持った。

 

こういうことは何度も経験している。
今回のソウルでもそうであったし、
台湾でも、上海、北京でもそうであった。
仕事で行くよりも以前に観光で来た事のある街では、同じような経験を重ねている。

 

あなたが、どこか異国の街に行って、その街を知りたいと思ったのなら、
観光バスに乗って、市内見学、名所巡りなんかやるよりも、
タクシーに乗ったり、地下鉄に乗って、そして街を歩いた方が、
その街を正しく理解できる早道であると思う。
観光バスから、つまり“高い”視線から見た風景では、
その街の人がいつも見ている視線からの、
街の人の、街の風景はまったく分らない。
観光バスを使った団体旅行では、その街を知ったことには絶対になり得ない。

 

・・・・・・・・
それにしても、韓国、
空港にはヨン様ツアーというか、オバサンが溢れていて
イミグレーションが上海並みに混んでいたのにはゾッとした。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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