2004年04月30日(金曜日)
945話 クラウンとベンツ
今日久し振りに事務所にいて、大変勉強になる事があった。
実は、私達の会社にはいっぱいパソコンがあって、
今まで数えた事が無かったが
今度、コンピューターウィルスのワクチンソフトを買おうと思って
あらためて数えたら
なんと、全部で53台もあったのだ。(サーバー、宅配用のPCまで入れて)
アイ・タック技研の社員が全部で41名
快洗隊がアルバイトさんまで入れると37名
それから考えるとパソコンの数がいかに多いか分かる。
その中で、会社の業務に関わる中核のPCが
?納品書・請求書を作るための“蔵・商奉行”というソフトが入っている1台。
?佐川急便の“飛伝”というソフトが入っている発送伝票を作るPCが1台。
?アイ・タック技研の窓口になっていて、色々なデータを加工するPCが1台。
?KeePreタイムスの発送名簿などデータベースが入っているPCが1台。
?会計ソフト“JP???”何とかいうのが入っている経理用のPCが1台。
この5台がバラバラに動いている。
納品書は?のPCで作り、発送伝票は?のPCで作り、商品を出荷し、
?のデータを?のPCに写し、加工して販売実績など色々な新しいデータを作る。
KeePreタイムスは?の別のデータからタックラベルを作って送る。
それとはまったく関係なく、お金の動きは?のPCで作られる。
それぞれがまったく連動せずに、PCが動き
業務がバラバラに進んでいく。
本当は、
たとえば、一つの新しい客先の売上データが入力されれば、
自動的に納品書が作られ、
自動的に請求業務のデータベースに蓄積され、
自動的に発送伝票が作られ、
その売上先が、自動的にKeePreタイムスの発送先に登録され、
自動的に販売実績のデータとして入り、分析されるべきデータベースに蓄積され、
自動的に会計勘定にも蓄積されていく。
一つの入力されたデータが、
色々な用途のデータベースに自動的に分配され、
それぞれが連動した働きを持って、役に立つデータに加工されていく。
そんな連動した動きが一番効率的であり、データとしても正確なのだ。
それでこそPCを使う意味があるといえる。
なのに、現状では1台ごとのPCがバラバラのソフトで、バラバラに動き、
それぞれに、いちいち手で入力される形で、バラバラに蓄積されているのだ。
手入力がそれぞれに介在するので、
当然どこかの過程で間違いが発生する確率は増える。
人間は本来的にファジーなので、融通も利くが、間違いも多い。
そこで、今の状況を分析してもらった上で
本来の理想的なPCのシステム環境を作り出そうと、PROにお願いした。
そのPROとは、あるベンチャーキャピタルからのご紹介で知り合った
実績の面でも十二分であり、
その社長、スタッフの方もキャラクター的に大好きな人達で
パートナーとして十分に信頼できる会社である。
しかし、その作業にかかる費用は、
びっくりするほど莫大なものであって、
私たちのような貧乏零細企業には、身の程知らずの買い物のように思えた。
普通車の値段のもうひとつ上の桁なのです。
しかし、今後のことも考えると、これは絶対に必要なことであり、
清水の舞台から飛び降りる気持で発注することにした。
まず、調査。
2ヶ月に渡って驚くほどの綿密さでヒヤリングが続き、
一通りの調査が終わった。
調査するうちに次から次へと問題点が見えてきて、
それが解決したら、どんなに素晴らしいだろうと思った。
さて、調査の結果報告。
分厚いプレゼン用のレジュメを前にして、目次を見て、
後の方に“見積もり”という項があったので、とりあえずそれを見る。
金額を見てびっくり、
私が聞いていた「清水の舞台から飛び降りる覚悟の金額の2倍ほどの金額」が
しっかりとプリントしてある。
ガックリときた。
「こんなん払えるわけ無いじゃん」
「この資料は見ないことにします。プレゼンもお受けしません。
最初聞いていた倍以上の金額のプレゼンを聞いても仕方ありません。」
「これはですね、“クラウン”を買おうと思ってディラーに行ったら、
勝手に“ベンツSクラス”の車が用意され、説明をされるようなものです。
そんな説明は聞くつもりありません。」
と、丁重にお引取りいただいた。
プレゼンをしようとしていた方は、とても熱心な方で、
本当にこの会社の業務を改善して、役に立とうとしてくれていた方だったので、
このような仕打ちをするのは、大変心苦しかったが
出せないものは出せないので、
どうしようもなかった。
「たとえ」であるが
私は“クラウン”が要るのであって、ベンツSクラスは要らないのである。
しかし、何日か経った今日
その会社の社長を伴って、先日の方があらためて相談に来られた。
当然、
私はベンツSクラスのような“システム”は要らないことを告げた。
こちらの意向を知っている上で、はるかに上級のシステムの説明をしようとするのは、
こちらの意向を無視していることであって、
受け入れられないことを、はっきりと告げた。
その上で、先方の考えをお聞きした。
そして、不覚にも納得してしまった。
請求業務と出荷業務と、
販売管理と、
データベースの活用と
経理の一元化は、必要なことであるが
今後のアイ・タックの展望を考えると、データの差別化はやはり必要であり、
Web上でのシステム構築はいずれはやらなくてはならない。
そして足元を見れば、
倉庫の中の煩雑さは限界を超しており、
第2倉庫の存在は無駄な経費であるだけでなく、効率の低下を招いている。
倉庫の仕組みと出荷業務自体に手を入れなければ、
本来の正確さと効率化を生むことは出来ない。
ならば、バーコードによる出荷・在庫・入庫管理の導入はもう遅すぎるぐらいであろう。
会社を伸ばして行きたいという、私達の意志を考慮に入れれば
この提案は当然過ぎることだ。
私が求めたものは必要性「MUSTの提案」であって、
でも、こう有りたいという姿は実は「WANTの提案」であり、
そして、今後こうなりたいと思っている姿を実現するには「WILLの提案」のはずだ。
そう実に分かりやすく3つの分類された提案にしてプレゼンされた。
参った。
こちらの上昇志向を実に良く見抜いて
これから新しいシステムを構築するなら
「WILLの提案」以外考えられないことを納得させられたのだ。
それにしても、その提案の費用はとても出せる金額ではない。
お願いして、私の苦手な値引き交渉をさせてもらい、
何とか出せる金額にまで落としてもらった。
このシステムを使いこなせるどうか、不安ではあるが、
それが出来ないようでは、目指すべき私たちのビジョンも実現できない。
こちらの意志をしっかりと読み取って、
あるいはしっかりと掴んで
買うつもりでなかったものを、
本当はこれが欲しいのでしょ、と気が付かされて、
納得して買ってしまったようなものだ。
エンジンの静かさとスムーズさが欲しいなら、
6気筒より、8気筒、
8気筒より、12気筒の方が良いに決まっている。
「たとえ」で言うなら
クラウンを買いに行って、ベンツの12気筒S600を買ってしまったようなもの。
相手の気が付いていない本当の欲求を、
開発するという意味では、営業の鏡であり、洗車にも通ずることだ。
相手をより満足させるためには
相手の持っている理想を実現させるためには、
本人が気が付いている欲求以上のものを、的確に提示することは、
ビジネスとして大切なことなのかもしれない。
それが本当のCSなのかもしれない。
勉強になった。
ちなみに、
私は、ベンツにまったく興味は無い。
私は、4気筒の、しかも思いっきり乗り心地の悪い
ホンダのインテグラ・タイプR“が”大好きだ。そして十分に満足している。
それでいいのだ。
※本文とはまったく関係ないが
相模原店のオープンで、「カエル」になった鶴見部長。