2004年02月05日(木曜日)
886話 人類絶滅のカゼ
10年以上前に読んだ本だと思うが
こんな事が書いてあった
核戦争によって人類が滅びる可能性はある。
狂気の独裁者が核ミサイルのボタンを押すことによって
ひょっとしたら
人類が滅亡する事があるかもしれない
しかし、それはよほど悲劇的な偶然が重なる事が必要で
その可能性は、騒ぐものより低いものだろう
誰でも死にたくないのだから
人類滅亡、すなわち自分も死ぬようなことは
誰かがブレーキを踏むものだ
宇宙から巨大彗星が落ちてきて人類が滅亡する可能性は
統計的に言えばあり得るわけだが
それを気にして人生を悲観するほどのものではない
確率的には極めて低いと言っていい
人類が創り上げた文明の繁栄が
環境の破壊を引き起こし、地球温暖化、異常気象などで人類が滅亡する?
環境問題は
大きく危惧される大問題だが
人類は絶滅はしない
誰もが自分は死にたくないのだから
どこかでブレーキがかかり
自然との共存が実現するであろう
そう簡単には人類は滅亡はしない
人類は、その知能により
自らを絶滅させ得るだけの力も持ったが
それを回避するだけの知能も持っている
誰だって死にたくはないのだから、人類の最も大きな力である知能を
自己保存の方向に使うものだ
だから、人類はそう簡単には絶滅しないのだ
ところが、一つ大きな落とし穴がある
この本によると
「人類は“ウィルスとの戦い”に負けて、非常に高い確率で絶滅するであろう。
そして、それは多分インフルエンザ、カゼのウィルスであるだろう。」
と、あったのだ
人は、誰でも死にたくはない
だから、悪いウィルスとか細菌に感染して病気になったら
文句なしに「抗生物質」を使った治療を受ける
抗生物質とは、ウィルスとか細菌を殺す物質で劇的な治療効果をもっている
しかし近年、その抗生物質が効かない細菌とかウィルスが出現している
耐性細菌?とかいうもので
抗生物質に対する耐性を持っていて、抗生物質を投与しても
一向に治療効果が出ないものだ
院内感染で大きな問題になったりしている
(私は医学に詳しくない。かなり昔に読んだ本の、うろ覚えの話である)
ウィルスなどは、非常に速いスピードで分裂増殖する
増殖するとは、生まれるということだ
人類に比べると、何万倍か何十万倍かの頻度で
子供が生まれる
親から子供が生まれるときには、遺伝子が伝えられるものだが
100%の正確さで正しく伝えられるわけではない
何万分の一、あるいは何十万分の一の確率で、遺伝子の伝達に異常が出る
いわゆる突然変異だ
これも一種の進化
突然変異によって、親とは違った特性を持った子が出来る
突然変異の確率は非常に低くても
その世代の交代が非常に早い生き物にとっては
突然変異は日常的に起こるものとなる
ウィルスとか細菌のように非常に早い分裂増殖をしている生物では
高い確率で突然変異が起こっていることになるのだ
そのウィルスなどを殺す効果の強い抗生物質で人は戦うが
たまたま、その抗生物質に対して耐性を持った突然変異が
ウィルスの中で起こったとすると
そんな進化を遂げたウィルスだけが生き残って
耐性を持たないウィルスは死に絶える
抗生物質の出現によって
ウィルスの中で“淘汰”が行われたのだ
こうなると、その抗生物質が効くウィルスはいなくなっているので
現象的には、その抗生物質は効かなくなったということになる
そこで新しい抗生物質が開発されるのだが
その抗生物質が効いているのは
突然変異によって耐性を持ったウィルスが出現し
淘汰に勝つまでの間だけとなる
抗生物質と耐性菌・耐性ウィルスとのいたちごっこは
いつまで続くのか
永遠というわけには行かないだろう
どんな抗生物質が投与されても治せない感染症がすでに今でもあるという
では、人類は抗生物質なしでは生きていけないのだろうか
そんなことはない
抗生物質自体、近年使われ始めたもので
それ以前も、人類はずっと生きてきた
細菌とかウィルスに、人類は“免疫”で勝って来たのだ
免疫とは、人類が長い時間をかけて細菌等との戦いで勝ち得てきた
病気との戦いにおける最大の武器
例えて言うならば、免疫はその細菌などを食ってしまうものなので
細菌などはそれに対する耐性を持つことは出来ない
細菌・ウィルスなどが、どんなに抗生物質に対する“耐性”を持ち得ても
人類がその遺伝子の中に持つ“免疫力”が強ければ
抗生物質無しで、平気でその細菌・ウィルスなどに勝てるのだ
ところが深刻な問題がある
ウィルスなどは、それが宿る相手が限定されているもので
人のウィルスは犬にはうつらないもので
犬のウィルスは人にはうつらない
蛇のウィルスはヤギにはうつらず、ヤギのウィルスは蛇にはうつらない
ウィルスの構造が、ある一定の生物にしか宿ることが出来ないようになっている
だから、
人は、違う種に宿るウィルスに感染することもないが
逆に免疫も持っていない
たまに突然変異で、それが、人にもうつるウィルスに変化してしまった時
そして、それが大きな殺傷力を持った暴力的なウィルスであった時
人類は自然治癒力としての免疫を勝ち得るまで
大量に死ぬことになる
昔、ヨーロッパでの
ペストの大流行のとき、人口の何分の一かまでが死んだという
現代では、そんな悲劇的なことになる前に
抗生物質という特効薬で、効果的に制圧することになる
その人類の救世主のような(一時的ではあるが)抗生物質を
今では、家畜に大量投与しているという
日常的にエサに混ぜて、抗生物質漬けにして
家畜の死亡率を下げるのだ
つまり、生産効率を上げているのだ
抗生物質の投与は、耐性を持ったウィルスを生む事に他ならず
家畜特有のウィルスなどが抗生物質に対して耐性を持つことになる
この耐性を持ったウィルスが
人に感染する突然変異を起したとき
大きな悲劇が起こる
人は、そのウィルス・菌に対する免疫を持ってない
それは、別の種の動物のウィルスなので、
そのウィルスに対する免疫を、人は持っていない
しかも、すでに、そのウィルスは抗生物質に対する耐性を持ってしまっているのだ
つまり
人類は、そのウィルスに対しての武器を何も持っていないことになる
今の話題の「鳥インフルエンザ」の恐怖とは
まさにそこにある
今の時点では
そのウィルスは、鳥から人にうつることは出来るが
人から人にうつることは出来ないという
しかし、時間の問題で
人から人にうつることが出来る能力を持つ突然変異が
いつ起こっても不思議ではない
いずれは、人の体の中にそのウィルスに対する免疫が作られるかもしれないし
効果のある抗生物質が開発されるときがあるだろう
だから
鳥インフルエンザで人類が滅亡することは
多分ないだろうが
このような事が、たて続けに起きてきたとき
人類が滅亡から逃れることが出来るかどうか
はなはだ疑問である
人は、誰でも死にたくないので
それが特効薬であれば、抗生物質を使う
それはまだしも
しかし、生産効率を上げるためだけに、抗生物質を乱用して
人類の最大の危機を作り出すことは
愚かと言うしかない
そんな事が昔読んだ本に書いてあった
そんなことを思い出しながら、鳥インフルエンザのニュースを見ていると
真剣に恐怖がこみ上げてくる