谷 好通コラム

2003年04月12日(土曜日)

686話 君は綺麗好き?

会社への朝の通勤道路で
ものすごく渋滞する橋がある
会社にごく近いところにある大きな橋で、そこを過ぎれば5分で会社に着く

 

8時30分過ぎならば5分で通過できるが
通勤渋滞にまともに引っかかると30分以上かかってしまうことすらある

 

直進車線が1km以上つながって
右折車線が約200mつながる

 

ずるい車がいて
直進車線に並んでいる車を横目で見ながら
右折車線の方をずっと走ってきて
右折待ちの車につっかえると、左にウィンカーを出して
直進車線に割り込む
そんな車がいっぱいあるので、直進車線が余計に進まない

 

そんな割り込みをさせまいと、直進車線に並んでいた車も
目いっぱい車間を詰めたりして抵抗するが
敵もさるもの
ウィンカーを出して、ジリジリと割り込んできて
いずれはチャッカリ割り込んでしまう

 

私は、この交差点で本当に右折するので
どんな車が割り込みをするのか、何台かウォッチングできるのだが
意外とごく普通の人が多い
特に目立つのは、若いオネエちゃん
困ったような顔をして
「すいません」というような手のそぶりを顔の前でして
ご丁寧に「すいません」と口まで動かして
割り込む

 

そんなオネエちゃんに共通することを発見した
割り込んだあと
“お化粧を始めるのだ”

 

困ったような感じで割り込んだあと
さっさと鏡を出して、車の中で化粧をしている(渋滞に並びなから)
何度かそんな車を発見しているうちに
それが“いつもの人”で、10人ぐらいいるのだ
いつもの人は、いつも割り込んで
いつも、車の運転席で化粧をしているのだ

 

そのことを発見したとき
私は、つい、マジマジとその人を見てしまった
そうしたら、逆にいやな顔をして
「なによ、こいつ、人をじろじろ見て、いやな中年のおっさんね」
そんな風に、プイッとされてしまった

 

もう一つ共通していること
“一見、すごく可愛いおねぇちゃん”なのである
きっと、化粧も完成に近いところなのであろう
私は決して面食いではないが
その人たちが、自分の容貌に自信のある人たちであることは分かる
きっと綺麗好きなのであろう

 

お~~~こわいっ

 

あの化粧の下には
いつも、困ったような表情を芝居して
いつも、割り込む
自分勝手で、わがままな顔が隠されている
そんな怖い人を、私は自分の通勤路で約10人も知っているのだ

 

51歳にして憶えた世の中の怖いお話でした。

 

 

今でこそ専務がやってくれる場合が多くなったが
面接は、たくさんやってきた

 

面接のときは、相手も構えているし
面接用の格好をして、面接の模範解答をも用意しているので
その人が、この会社の仕事に適しているかどうか
なかなか分からない

 

面接の時と、いざ出社してきた時の顔が
全く別人と思える、そんなことも往々にしてあるのだ

 

面接の時、こんなことを聞くことがある

 

私「君は綺麗好き?」
○「はい、そのつもりです。」
私「車の灰皿は、何に使ってる? 私は小銭入れに使っているけど」
○「私は、領収書入れに使っています」

 

私「タバコは吸いますか?」
○「ハイ、吸います。」
私「私も吸いますよ。やめなきゃいかんと思うんだけど、なかなかやめられない。」
○「はい、わたしもそうです。」
私「車を運転していて、渋滞してる時なんか、イライラしてつい吸っちゃうもんね」
○「そうですね」

 

私「吸殻はどこへ捨ててるの?」
○「えっ?」
私「だから、吸ったタバコの吸殻はどうするのって聞いてるの。外へ捨てちゃうの?」
○「え~、たまには」
私「じゃ、たまじゃない時にはどこへ捨ててるの?」
○「缶コーヒーの空き缶を使います・・・」
私「空き缶では、タバコの灰うまく入らないでしょ? 車の中汚くならない?」

 

こんな場合、火の着いたままのタバコをポイ捨てしている人であることが多い
(本当に別に灰皿を用意して、車の灰皿を使わず、ポイ捨てをしていない人もいる)

 

こんな引っ掛け話は、卑怯である
しかし、どうしてもその人の話に違和感を持ったときなどに
同様な質問を使ったことがある

 

世の中
火が着いたままのタバコをポイ捨てする人が多い
こういう人たちに言わせると
「自分は綺麗好きだから、車を汚したくない」らしい

 

“綺麗好きだから、自分の車の灰皿すら汚したくない”
だから、火の着いたタバコが危険であろうと
何であろうとかまわない

 

割り込み+お化粧のオネェちゃんと
タバコのポイ捨てには、共通項がある
「人に不利益があっても、自分が良ければ、それでいい」
そんなところか

 

人には、それぞれの考え方や価値観があって
私が聖人づらするものではない
私もタバコを吸い
(車では必ず灰皿を使うが)
歩いていて
道路にタバコの吸殻を捨てることも皆無ではない
もちろん火は確実に消すし
ほとんどの場合排水溝に入れるか、消したタバコを箱に戻す
それでも手に荷物がいっぱいある時など、道路に吸殻を残すこともあった
(長い言い訳でした)

 

しかし、自分の灰皿を汚したくないからと
火を消さずにタバコを道路に捨てたことは一度も無い

 

しかし、それでもなお
人には、それぞれの考え方や価値観があって
それの善悪を言うつもりは無い

 

しかし、しかし
「自分の車は綺麗にしていたいから、他人の・・・・・・・」
そういう価値観では
少なくとも、プロの洗車は出来ない
プロの洗車は、プロであるがゆえに
“人の車”を綺麗にする職業だ
だから
綺麗好きが、自分の車に限られていて
人の車が綺麗になるかどうかは、全く価値を感じない
どちらでもいい

 

そういう感覚の人では、人の車を綺麗にすることは難しい
一言で言えば、無理だ

 

「きれい」というものは、感性のものであって
「仕事」だから「ちゃんときれいにしますよ」と言うのは、長くは続かないし
本当にきれいな車を作ることは出来ない

 

お客様の車をきれいにして、自分も、お客様と一緒に喜べる
少なくとも、そんな価値観を持っていないと
プロの洗車は出来ない

 

「きれい」は、「きれいにしたい」と思えなければ、作り得ないもの
洗車は作業でなく、きれいを創り出す仕事

 

だから
「うまい」ということに興味の無い人は、料理人にはなれないし
お客様に「うまい」と思って欲しいと思っていない人は、一流の料理人にはなれない

 

「美しい」ということに興味の無い人は、芸術家にはなれない
みんなが「美しい」と感動してくれることに興味の無い人は、売れない芸術家

 

「かっこいい」ということに価値を感じない人は、デザイナーは無理だし
「安全」と「平和」に価値を感じない人は、警察官になってはいけない
「部下の成長・幸せ」を願わない人は、上司になってはいけないし
「客の満足」に価値を感じない人は、商売に失敗する

 

「人の車」の「きれい」に価値を感じない人は
そして、「きれいになった喜び」を客と共有できない人は、プロの洗車が出来ない

 

私たちが誇るインストラクターの仲間たちが言う
「スーパーなんかの駐車場に並んでいる車見てて、
汚い車があると、
洗いたい!って、つい思っちゃうんですよね」

 

また、全国の洗車に関わる人たちと話していて
「自分の車は、走りゃいいと思ちゃうんですが、
お客さんの車は、時分のプライドをかけてきれいにする。
そして、お客さんが喜んでくれると本当にうれしい。
自分の車まで、神経回らないなぁ~」と屈託なく言う人がいる

 

こんな人は、「人の車のきれいが好き」
プロの洗車をやれる人

 

もちろん「自分の車も、人の車のきれいも大好き」
これも、プロの洗車をやれる人

 

だけど「自分の車はきれい好き、人のことはどっちでもいい」
そして「自分の車も、人のこともどっちでもいい」
こんな人には、プロの洗車は無理である
お客さんの車をきちんときれいにする感性を持ち合わせていないから

「“人の車”をきれいにしたい」という気持ちと
「時分の車をきれいにしていたいから、タバコをポイッ・・」とでは
まるっきり反対の価値観なのです。

 

君はきれい好き?
どっちのきれい好き?

 

 

今日は土曜日
午前中にキーパータイムスの編集会議をやった
世の中の車をきれいにするために
一生懸命会議をやった
駐車場に止まる“自分たちの車”は、きれいな車も、そうでもない車もあるが
人の車をきれいにしたい人たちばかりである

 

※編集長がショートヘアーに変身、可愛くなってビックリ

 

 

と、かっこいいことばかりも言っていられない
この会社の玄関先に
無神経にタバコの吸殻が捨ててあることもあるのだ
社員のものであろう

 

自省せねばならない
自省をせねば

 

これを書き始めた頃
事務所には誰もいなくなった
一番好きな時間で、原稿を書くのも実に早い

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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