2003年01月07日(火曜日)
612話 何が違うのか?
今日、久しぶりに「ムツゴロウの動物王国」をテレビで見た
ムツゴロウとは畑正憲
動物好きの変わった人物として
今では誰でも知っている有名人だ
私はこの畑正憲を、高校生の頃から知っていた
彼の本が大好きで
一冊残らず夢中で読んだ
最初に読んだのが「ムツゴロウの青春記」
それから「ムツゴロウの少年記」「ムツゴロウの結婚記」
これらの本に何が書いてあったか
今でもハッキリ憶えている
あれから、100冊以上はあった
ムツゴロウは超一流の作家、物書きなのである
http://www.interq.or.jp/world/naoto/book/mutsu.html
特に最初に読んだ「青春期」は、私に鮮烈な印象を残している
彼の妻、純子さんとの物語は
今でも思い出すと胸が締め付けられる
本屋に行く度に、新しい畑正憲の本が出ていないか探し
運良く見つかると必ず買った
でも今、手元には30冊ぐらいしかない
読んで欲しくって、いろんな人に上げてしまったから
親父が二十年ぐらい前に入院した時
「お前が大好きなムツゴロウの本、持ってきてくれよ」
と言われた時は、嬉しかった
あまり理解しあえていなかった親父が、私が好きな本を「読んでみたい」
と言うのだ
こんなに嬉しいことはなかった
畑正憲は、東京大学理学部生物学科卒
研究室での凄まじいまでの活動は、「ムツゴロウの動物日記」にあった
筋金入りの動物学者で
ただの動物好きではない
そして、何よりもすごいのは
彼が、あらゆる動物と本気で友達になること
あらゆる動物と
それが猛獣であろうと、何であろうと
本気で仲良しになる
それは、決して芸当でもなんでもない
何故仲良しになれるのかは
「どんべえ物語」を読むとよく理解できる
どんべえとは“ヒグマ”のこと
彼が家族と共に、北海道の釧路の近く
霧多布の海岸から数百m沖に浮かぶ無人島「剣暮帰島」で
子熊であったヒグマ“どんべえ”と
自らの全存在を賭けて心を通わせた物語
彼は、動物に対して
人より劣るもの、畜生、下等な生き物などと、まったく思っていない
生きているものは
それが人であろうと、動物であろうと、何であろうと
“存在”という意味で、それ以上でもなければ、それ以下でもない
自然の中において
自然を構成する100%対等な仲間
だから本気で仲良くなりたいと思う
強く思う
だから、相手のことを真剣に知ろうとするし、学ぶ
そして、知れば知るだけ、もっともっと好きになる
自然の中で
この世という存在の中で、すべてが、存在という意味で
みんな“同じ”であることを知っていて
だから、必ず仲良くなれることを信じている
同じであるのだから、相手を尊重し、謙虚に学ぶ
学び知ることが出来れば、何も怖くない
知らないということが恐怖の源なのだから、知れば怖くない
畑正憲は、本気であらゆるものと仲良くなってしまう
その本気というところと、動物という相手を学ぶ能力において
彼は世界で最高の能力を持っているのではないか
私の価値観は
ひょっとしたら、彼のたくさんの本を読んだことで
形成されたのかもしれない
動物と人と何が違うのか、どう違うのか
私たちが存在する宇宙が
ビックバンによって誕生してから140億年
銀河系が出来、太陽系が出来、地球が生まれてから何十億年か
生物が誕生してから何億年か
人と同じ2足歩行を得ながら、人とは違う方向へ進化を遂げ
2億年もの繁栄を持った恐竜の時代があって
最後に、人とわずか1.4%しか違わないDNA遺伝子を持った類人猿から
人、ホモサピエンスが進化・誕生したのはわずか数百万年前
そして、人が“文字”という「知識の蓄積手段」を得て
文明を持ったのはたった数千年前
医療、工業生産の手段を得
加速度的にその種の増殖を始めたのがせいぜい2百年前
地球は今、人だらけ
わずか200年で10倍の数になった“人”
そして今、人は進化の終局を迎え
地球規模での生態系破壊を本格化している
自らもその生態系の一部でしかないことを忘れたかのように
自らが住むべき地球を破壊しつつある
誰もそれを止められない
2億年の繁栄を極めた恐竜と
その百分の一ほどのわずか数百万年の繁栄の末
すべての種もろともに滅びるかもしれない人と
どちらがどうなのか
脳細胞の発達という、地球の歴史上かつてない進化を持った人は
種として、優れているのか
他の種より尊いのか
人は謙虚に
存在として、すべてのものと同じであることを認めても
いいのかもしれない
久しぶりにムツゴロウを見て
狼と、ライオンと、犬と、戯れる彼の姿を見て
昔読んだ本のことを思い出しながら
ぼぉーっと
そんなことを思ったのでした