谷 好通コラム

2002年12月17日(火曜日)

595話 人の物.自分の物

街中で、走っている車から
火がついたままのタバコを、ポイっと捨てる輩がいる

 

自分の車の灰皿を汚したくないから
だそうだ

 

あまり見たくない光景である

 

自分の持ち物を、ホンの少し汚したくないから
人の物が燃えてしまう危険があっても
かまわない・・ポイ
精神的に、非常に幼稚な価値観である

 

しかし、これは人の事ではない
自分はどうなのか

 

今年2度考え込んでしまったことがある
私たちの研修所が、だらしなくも汚れていたのだ

 

一人一人が、少しずつ散らかして
誰も片付けず
いつの間にか、ゴミの山のような研修所になっていた
誰もキレイにしなくてはと思わなかったのか

 

私たちの研修所は
車を「キレイ」にすることを学んでもらうところだ

 

みんなの環境をキレイにしなくては、という心を失った人から
しかも、汚れた研修所で
「キレイ」を作る研修など真剣に受ける気になるわけがない
研修者はどんな気持ちで、このゴミの山の中での研修を受けていたのだろう

 

この会社は、病んでしまったのか

 

恥ずかしい
世の中に顔向けできないほど恥ずかしい

 

片付けるという自分の面倒さと
みんなの学ぶ環境が汚れる、ということを引き換えにしてしまっている

 

 

二つの考え方がある

 

自分のものは、自分のものだから、何に変えても大切する
人のものは、人のものだから、どっちでもいい
壊れようと、汚れようと、気にならない

 

もう一つの考え方

 

自分のものは、自分のものであるから
壊れても、汚れても
自分の責任である
人のものは、人のもの“だから”
壊す権利もないし、汚す権利もない、大切にしなければならない

 

単純な考え方である
どちらを選びますか?

 

もう一つの事実がある
人は、自分一人で幸せになれない、ということ
みんながいなくては
そして、みんなが自分を支えてくれなければ
決して幸せになれない
私たちは、みんなに支えられて生きている

 

だから
みんなを大切にしなければ、自分も幸せになることは出来ない

 

ちっぽけな目先の自分の得のためと
みんなの迷惑、損、不愉快、不幸を引き換えにする者
そういう者を、みんなは決して支えることはないだろう

 

ならば
その人は決して幸福になることはあり得ない

 

これも単純なこと
どちらを選びますか?

 

 

久しぶりに、大きな声を出して叱った

 

ただ単に、汚れていたことに腹を立てたわけではない
一番基本的な考え方
「研修所は、みんなのもの“だから”大切にする」
それがみんなの心の中から、欠けてしまって
会社全体が
大きなものを失いつつあることに気がついたから

 

私たちの仕事
車をキレイにする仕事は
これを失っては、成り立たないのだ

 

車をキレイにするには
車をキレイにする技術があり、マニュアルがある
みんなが、たくさんの車を洗って、磨いて、掃除して
多くの経験から作り上げた大切なものだ

 

そのマニュアルを使って「訓練」をする
訓練を通して
素人から、プロの洗車を作りだせる技術員を創り出すのだ

 

しかし、マニュアル通りに、あるいは訓練どおりに作業をすれば
車がキレイになるかというと、そうではない
マニュアルだけでは車はキレイにならないのである

 

車の形は千差万別
汚れ方もまた千差万別

 

マニュアル通りに作業しても、汚れは必ず残る
車がきちんとキレイになるためには
その汚れも取ってキレイにしなくては
という“気持ち”も必要なのである
つまり、きちんとキレイにしたいという動機が必要なのだ

 

逆に、自分の車は
自分の車なのだから、神経を使ってキレイにする
しかし
仕事で洗う車は、他人の車
その車をキレイにするために
マニュアルで決められた作業をこなす
それが与えられた仕事なのだから、それでイイ

 

これでは車はキレイにならないのだ
キレイにならないから、その車はもう来ない
お客様から支持されない店は、繁盛しない
繁盛していない店のスタッフは幸せになれない

 

仕事で洗う車は、他人の車“だから”、仕事“だから”
きちんとキレイにしなくてはならない
マニュアルどおりの作業で落としきれなかった汚れが
残っていてはならない
という“気持ち”があって
“目”で見つけ
手で、洗って、拭いて、あるいは磨いて
やっと、きちんとキレイになる

 

自分の車は、自分の車なのだから
ピカピカにしていても、汚していても、自分の好き好きだが
お客様の車は、お客様の車“だから”
きちんとキレイにする義務がある

 

きちんとキレイにすることによって
お客様から支持され
お店も繁盛し
繁盛店のスタッフは幸せになれる

 

これは、「みんなのものだから、大切にしなくてはならない」
という事と、まったく同一線上にある

 

講習会でよく
「店をキレイに出来ない人は、洗車をやる資格が無い」と言う
ましてや
みんなの研修所をキレイに出来ないものに
洗車を教える資格などまったく無いことは、当然過ぎるほど当然である

 

自省すべきである
自らを厳に戒めるべきである
特に、指導的立場にある私自身が、一番自省しなければならない

 

人の事をとやかく言う前に自分はどうなのか
深く自省すべきである

 

しかし
叱られたスタッフ達は、たくましくも
「社長に叱られちゃった」と、早速自分たちのコラムに書いている
写真まで載せている
頼もしい仲間達である
そんな彼ら達が大好きである

 

今日は東京で用事を済ましたあと、静岡に行った
静岡では、昔からの仲間、鈴木さんに会った
気持ちが解かっている人と話しをすると、ホッとする
たくさんの大好きな仲間達のためにも
頑張らねばと、自らを引き締める

 

途中、富士市から富士山がよく見えた
また、いいことがありそうだ

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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