2002年09月14日(土曜日)
516話 崖から飛降りる
明日、朝からドイツ行きだが
まだ、何の準備もしていない
そろそろやばいなぁ、と思いつつも
「いつもの出張と、何が変わるわけでもないし」と
舐めた気持ちもあるが
そんなわけが無い
これを書き終わったら、準備しよう
昨日は、午後から頭が痛かった
午前中に会った人からカルチャーショックを受けたのだ
車の板金の“オークション”という
新しいビジネスモデルを立ち上げ
億単位のお金を注ぎ込んでテレビコマーシャルを流し
華やかな活躍を繰り広げている
その仕組みは、実に巧みであり
納得できるものであった
その仕組みとは
「○▽×■◎」という板金のチェーン店の看板を、SSなどに掲げ
訪れた客に対して
板金の施工客を集めるネットワークを作る
「集客ネットワーク」
一方
板金の作業を引き受けてくれる板金屋を集め、契約する
「施工ネットワーク」
「集客ネットワーク」と「施工ネットワーク」を
「フランチャイズ本部」が中に入って
コンピューターで結ぶ
そのコンピュウター上で
その仕事を、どの板金屋さんが、いくらで引き受けるか
「オークション」をする
「集客ネットワーク」であるSSが
施工希望価格(SSの利益が乗っている)を提示し
セリが始まる
セリは
その希望価格から1000円刻みに、カウンターが上がっていき
ある程度上がったところで
“たまたま入庫が無くて、暇な板金屋さん”が
“その値段なら、遊んでいるよりマシ”、“施工してもいい”と思い
落札する
ビジネス成立!
その価格は、多くの場合、通常の施工価格より、かなり安い
「チェーン店本部」が、SSに車を取りに行き
陸送車で、施工店である板金屋さんに車を運ぶ(有料)
SSに対しては、「チェーン店本部」から
客の希望に応じて“代車”(有料)が支給される
板金が終わったら
チェーン店本部の厳しい検査を受け
合格の後
また、陸送、代車の回収がチェーン店本部によって行われ
SSからユーザーに車が渡される
代金は
「ユーザー」→「SS」→「チェーン本部」→「板金屋さん」
ほとんど現金で決済される
※たとえば
1.SSが、ユーザーの板金を6万円で見積もった。(ディーラーなら7万円ぐらい?)
2.オークションに、2万円の希望価格で出した。
3.たまたまヒマだった板金屋さんが、3万円でその仕事を落札した。
4.陸送費・代車料を本部に払って(金額不明8,000円ぐらいか?)仕事を出す。
5.本部は、SSから落札金額から10%のロイヤリティーを足して、SSから徴収する。
6.本部は、板金屋さんに落札金額から5%のロイヤリティーを引いて支払う。
といった具合
※そして、それぞれの利益は
◎[ユーザー=7万円-6万円=1万円のお得。]
◎[板金屋さん=3万円×95%=2万8千5百円の利益]
(ヒマな場合、この仕事が無ければ売り上げ0円だったので)
◎[SS=6万円-8千円-(3万円×110%)=1万9千円の利益]
◎[本部=(3万円×5%)+(3万円×10%)=4千5百円の利益]
(陸送代車料収入は経費だけで完全に無くなる)
※このビジネスの、それぞれのメリット
1.ユーザーは、ディーラーなどに頼むより「安く」板金がやってもらえる。
2.ユーザーは、本部の厳しい検査基準により、良質の板金が保証される。
3.ユーザーは、板金を、いつものSSに頼むことになるので、安心である。
4.SSは、自前で板金を始めるより、時間と設備が大幅に節約できる。
(板金とは職人仕事であり、人を育てるのに大変時間がかかり、大きな設備資金投下が必要)
5.SSは、ディーラーなどより安く板金を提供できるので、ユーザーに喜ばれる。
6.SSは、フランチャイズのテレビCM効果によって、大きな集客力を得られる。
7.SSは、結果的に確かな収益源を得ることになる。
8.板金屋さんは、入庫に大きなムラがある。それを、まあまあの仕事で埋められる。
9.板金屋さんは、本部が現金で回収、支払いしてくれるので、焦げ付きがない。
10.他チェーン「▽―■◎○▲×◇*」のように、40万円以上もの会費が無い
10.本部は、陸送・代車でペイすれば、後はオークションシステムで利益が出る。
11.システムそのものの販売で利益が上がる。
続くビジネスとは、あるいは伸びるビジネスとは
それに関わるすべての人にメリットがあること
特に、ユーザーにメリットがあること
(本部の厳しい検査基準が、実はこのシステムの肝なのだ)
それが絶対条件である
その条件を、このビジネスモデルは備えている
立派なものだ
今、一世を風靡しているチェーン「▽―■◎○▲×◇*」などのように
一方的に本部にお金が集中する仕組みとは
かなり、内容が違う
ここまでは、感心して済んだのだが
頭が痛くなってしまったのは
ここからの話
このビジネスモデルを普及させるために
ここの社長は
「崖を飛び降りた」のである
つまり
このシステムのインフラの1つ
?「オークションのシステム作り、本部機能作り」を終えた時点で
もう、2つのインフラ
?「施工店ネットワーク作り」
(これは、社長の元々の仕事が中古車販売の大手、事情が分かっていたので
“基礎”の部分は出来ていた)
?「集客ネットワーク作り」
これらを
大きく作り上げる前に
テレビコマーシャルを始めてしまったのだ
莫大な資金が必要な「テレビコマーシャル」と
インフラ作りを
同時に始めてしまったのだ
テレビコマーシャルによって
社会における認知度を一挙に上げ
その認知度によって
優秀な板金屋さんの、「施工ネットワーク」への参加を急激に促進し
また
その認知度によって
「集客ネットワーク」も同時進行で、急激に構築していく
その結果
システム全体が、急速に構築され
すでに広がった認知度によって、システムを強く稼動させていく
そんな戦略か
この社長は、自動車業界で実績を持っており
事情通でもあり
人脈も広く
このシステムがビジネスとして、非常に力を持っていることに
確信はあったのだろう
しかし
それにしても
テレビコマーシャルという
億単位の投資を
システムの急速な構築と同時進行でやってのけよう
ということ
つまり
急激にシステムを構築することは
何らかのアクシデントなりのリスクを必ず持っている
しかも
テレビコマーシャルでの効果は、時間に制限がある
同時進行がうまく行かなかったら
システムの構築に手間取ったりして
どうするのか
テレビコマーシャルに投じた莫大な資金は
1円たりとも戻ってこない
その心配をしだしたら、こんなことは絶対出来ない
よっぽどの、システムに対する確信と
あらゆる障害に対して
すばやく対処できる自らの実行力に対する自信
自分を支えてくれるスタッフに対する絶大な信頼
そして、そのビジネスに対する可能性を信じてもらって
銀行・ベンチャーキャピタルなどから
先行投資の資金を調達するための
プレゼンテーション能力
そのすべてが必要である
崖から飛び降りて
翼が開いて
大空に舞い上がる事が出来るか
それとも
いとも簡単に翼が折れて
地上に叩きつけられるか
・・・・・
この事業については
社長いわく
「順調」であるそうだ
単月で黒字にもなったそうだ
それは、事実である
私は、図々しくも「財務諸表」を見せてもらったのだ
この社長は、私と同じように、平然としてそれを見せてくれた
よほどの自信がないと
これは出来ない
この社長、弱冠34歳
私が同じ立場であった場合
「崖を飛び降りる」ことが出来るであろうか
それを考え始めたら、頭が痛くなってしまったのである
このビジネス
考え込んでいくと
「集客ネットワーク」であるSSにも
「施工ネットワーク」である板金屋さんにも
大きなリスクは無い
今の時点では断言できる
しかし
本部には、リスクがある
もちろん、この社長は分かっているだろうが
この先は決して安楽な道ではない
しかし、馬鹿でかい可能性は間違いなくある
先駆者とはそんなものかもしれない
※このシステムは、まだ一部の地方でだけ動いているものです。
やがては全国に出て行くのでしょう。
よろしかったらご紹介しますよ。
SSには絶対お得なシステムです。
・・・
私はどうせなら
大空には
ジェット機で飛び上がりたいなぁ
憧れのジェット機
「F104スターファイター」
ゾクゾクするような、その操縦席