谷 好通コラム

2002年08月29日(木曜日)

505話 平等なチャンス

上海が急激に“変わった”ことは
何度か書いた

 

何故なのだろうか
そして、その莫大なエネルギーは、どこから出てきたものなのだろうか

 

そのヒントが、三日目の昼食の時、役人から聞いた話の中にあった

 

この日は、キーパーのデモがあった日で
昼食を
石化集団の事務所の人全員と、私達が招待された形で
一緒にした
(Mが、便秘で苦しかったあの食事会)

 

その日は、たまたま偶然にも
事務所に税務監査が入っており
その監査のお役人さんも、昼食を一緒にした

 

一応、形の上では私も主賓であり
税務鑑査の役人の隣の席に着き、このお役人さんと色々話をした

 

そのお役人さんは
見るからに質素であり
実直そうであり
そしてもちろん、すばらしく頭が良さそうな
大変好感を持てる人であった

 

「中国は今、外国からの投資を歓迎しています。
外国企業にも、
国内の企業と同じ権利が与えられています。
たとえば、、
住宅を買うにしても、
中国人が買うのと同じ値段で
同じ権利を取得することが出来ます。
車を買うのも一緒。
外資の会社が利益を上げても、
税金は、中国の企業から徴収する税金と変わりません。」
「中国人でも、誰でも、同じチャンスが、今の中国にはあります。」

 

「“平等なチャンス”が、誰にでも保障されている」と言う

 

「平等なチャンスのもと
頑張った人が、富を得て
その富を、税金さえ払えば、誰もが個人所有してもいい
それは外国企業に対しても同じだ
競争が、今の中国の活力の素
あなたの会社も、ぜひ中国にどんどん投資してください」

 

しかし
ちょっと考えてみると
この理念は
資本主義国の代表、アメリカの理念そのものでないか

 

「競争の原理」とは
平等なチャンスがあるところでこそ、その力を発揮する

 

発展を目指す時
特に、経済の発展を目指す時
競争の原理は、絶対的な力を発揮する

 

中国は、アメリカになってしまったのか
中国において、共産主義は霧散してしまったのか
そうではないだろう

 

共産主義のことについては、学生の頃
むさぼるように本を読んだ
マルクス、ヘーゲル、レーニン、そして毛沢東

 

共産主義は、元々、人間に対する平等な愛から生まれた
だから
皆で得たものを
すべて平等に分かち合おうというもの

 

それ自体は間違っていないと思う
一つのユートピアかもしれない

 

その理想を実現運営するために
革命後
権力機構、あるいは官僚機構が必要であり、発生した

 

しかし
権力の中でのその権力者・官僚機構が
終わりのない、凄まじいばかりの権力争いと
利権に対するむさぼりと
賄賂の着服を望んだことによって
革命が終わったその瞬間から
その崇高な理念は、木っ端微塵になった
いまわしきスターリン、四人組

 

権力機構は、自らの自己保存と
権力拡大、自己増殖に奔走し
民衆は、官僚機構にとって自己存在の名目的意義となり
あっという間に革命前の奴隷に戻った

 

日本をはじめ、資本主義の国にも権力・官僚機構はあり
悪しき存在の場合もあるが
その存在は絶対的なものではない

 

しかし
多くの共産主義国家では
あらゆる権力が権力者・権力機構に集中し
絶対権力として君臨した

 

だから
結果的に、自浄機能は発揮されず
絶対権力は、国家の象徴、神的な存在にまで奉り上げられ
その民衆に対する仕打ちは
奴隷的生活の強制を通り越し
大量殺戮にまで、突き進んでしまった例も数え切れない

 

当然のことながら
民衆には、権力に対する隷属のみが許され
競争原理など存在せず
経済は著しく停滞した

 

停滞した経済は
長い時間を経て、やがて破綻を迎え

 

欧州においては
権力機構の崩壊という結末で
終わった

 

それを目の当たりにした中国は
権力機構の自己崩壊を恐れたか、危機感を持った

 

「このままでは、私達の国もああなってしまう
へたしたら、私達は殺されてしまうかもしれない。」
なんて言ったかどうか、分からないが

 

共産主義革命とは異次元の
もう一つの革命を断行した

 

経済の開放!
富の個人所有容認!

 

つまり
競争原理の導入だ
その頃、インターネットという情報革命も同時進行し
中国は、劇的な変化を実現することになった

 

その結果
新たな巨大マーケットを望む膨大な外資が流入し
あるいは
経済の停滞による安価な労働力を求めて
やはり、外貨が流入した

 

「チャンスの平等」は
新しい共産主義が採用した、共産主義機構存続の決定打となった

 

その姿は、資本主義での国家と
現象的になんら変わらないものとなった

 

そしてその両者
お互いの存在が、自らの存在を
危ぶませるもので無くなった時
新たな平和が成り立った

 

これはこれで喜ばしい結果なのか
私には、それをどうのこうの言えるだけの、先見の目がない

 

しかし

 

世界第2位の高さを誇る
この88階建てのビル

 

 

中国が欧州に隷属していた暗い植民地時代
その隷属の象徴ともいえる「租界」

 

その屈辱の遺跡を、
“ライトアップ”して
まるで、ディズニーランドのようにしてしまった
その大胆さに

 

今の栄華が、一時的な物ではない事を
信じさせるには十分であった

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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