谷 好通コラム

2002年05月03日(金曜日)

411話 ふと考えたこと

昨日さびしい事があった
若い子が一人、会社を辞めると言う
学校を卒業したばかりだが、自分の思いを強く持つ子で
2年後、3年後をとても楽しみにしていた

 

半年前に面接して、入社までの間に
実は、別の事もやりたくなっていたのだという
迷ったまま、入社して、研修中に
その別の事をやりたいと思う気持ちが大きくなってきたらしいのだ

 

会社としては、予定が狂ってしまう事と
研修にかけてきた経費を考えると、文句の一つも言いたくなるのだが
その子の気持ちを考えると、全く解らないでもないし
色々と、私自身の考え方を伝えた上で、送り出すことにした
お互いに、早いうちで良かったのかもしれない
しかし、何か一つだけでも、やり遂げた経験をして行って欲しかったが・・
仲間と考えた人が去っていくのは、いずれにしても寂しいものだ

 

 

昼から大阪に行った
単なる打ち合わせのつもりで行ったのが
話をしているうちに
だんだん大きな話になってきてしまい、うれしいやら、ちょっと当惑もしている
新大阪から、大阪駅に行き、駅から目的地まで、少しだか歩いたのだが
先週の日曜日のレースのダメージが今頃出てきて、足が痛い
大阪の雑踏も東京に負けずすごいもので
人ごみで揉まれているだけでドッと疲れてしまったような気がする

 

それにしても日本の都会は人が多い
雑踏の中で
何ヶ月か前に訪問したドイツのことを思い出してしまった

 

ドイツは訪れた街が田舎の方であったこともあるが
実感として、人の密度の違いはものすごい
実は、ドイツも日本も国土の広さそのものと、人口は大きく変わらない
しかし、実質的な人口密度は圧倒的に日本のほうが高い
日本は山国であり
狭く少ない“平野”部分に、ほとんどの人間が集まってしまっている
それに対してドイツは、北海道のような地形で
国全土、平らな土地がほとんどであるという

 

国土の面積そのものは日本と変わらないが
人が住むのに適している有効面積とでも言おうか
人が住める土地の面積は、はるかにドイツの方が広いのだ
だから、実質的な人口密度は、ドイツの方が圧倒的に低いようだ
信じられない程、のどかな風景が延々と続く

 

今日、新大阪から大阪駅まで、ほんの5分間、在来線に乗った
かなり混んでいた
横並びのベンチイスはビッシリと人が座り
立っている人も多かった
そこで気がついたこと
イスに座っている人の全員が目を閉じている事

 

眠っている訳ではない
その証拠に、大阪駅で、誰も乗り過ごすような気配もなく半数の人が降りた
では何故、目を閉じているか

 

見ないため
座っている自分の前に、年寄りとかが来ても
自分はそれを“見ない”
つまり、席を譲る気は全く無いよ、ということだろう
目を閉じて、“見ない”ようにしているのである
それどころか、足をこれ見よがしに広げて座っている若者
荷物を横に置いて平気なおばさん
気の重い5分間であった

 

生き物は、一定の面積に住む数が過密になると、攻撃的になるという
凶暴性をも持つという
生き物は過密の状態で
やさしさを失う
人もそうなのか

 

過密な状態では、時間が早く流れるようだ
過密に置かれたものは、激しく競争をせねば生き残っていかれない
だから、休むことなく競争し、あくせくし、時間が早く流れてしまう

 

たかが電車のイスなんかでも
困った人が居ようがいまいが、我存ぜぬ
自分の場所をできるだけたくさん取らなくては損であるように
足を広げ、目を閉じる
あくせく流れる時間の流れの中では、古いものは生き残る余地などないのか
人のことを思いやる暇などないのか
真新しいもので世の中が埋め尽くされていく

 

ドイツで古い建物をいっぱい見た
別にそういうものを見て回ったわけではない
どこにも、当たり前のように
古い建物がいっぱいあって、自然に溶け込んでいるのだ
日本も古い物を大切にしていくことを、しっかりと考えるようにしなくてはなぁ
などと思い

 

自分の今までの人生とか、これからとか
ふと、考え込んでしまった

 

ページのトップへ ページのトップへ

  • 最近の記事

  • プロフィール

    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

  • カレンダー

    2024年11月
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
  • リンク集

  • 過去の記事

  • RSS1.0

    [Login]

    (C) KeePer Giken. All rights reserved.