2001年12月06日(木曜日)
296話 綺麗にしたい病
私達は、車をキレイにすることが仕事である
今までは、日本国中の車をきれいにしてやるぞ、と力んできたが
会社に変な奴が入ってきて
「世界に出て行きましょうよ」と、どんどん世界に出て行く話を進めていって
いつの間にか
ドイツに行ってしまったり
輸入をホントに始めてしまったり
輸出もけっこう具体的になってきたりして
「世界を相手にしなくっちゃ」が、雰囲気になってしまった
たった一人の影響力が、会社の行き先まで変えてしまうものだ
こんな勢いだと
来年の今頃は
どこで何をやっているのか
分かったものではないな、と思っている
だから今は
世界中の車をキレイにしてやるぞ、と力み過ぎて
ちょっと肩が凝ってきた
なんて、書いてくると
私がとんでもないキレイ好きであるかのように、思われるかもしれないが
イエイエ
私は、自分の車が汚くても全く気にならない
いわば、洗車屋の敵のような人間である
何故かというと
自分の車は色々なケミカルのテストで、いつもテープで仕切った跡がある
そして、決して自分勝手に洗ってはいけないのだ
決められた間隔で
決められた洗い方をして
その汚れ具合、水弾きを確認しながら
いつも、新製品などの耐久テストをしているのだ
この会社の車はほとんど、何かのテストをやらされている
ボンネットの左と、真ん中と、右が
微妙に艶が違っていたり
雨でも降ると、水弾きがくっきり分かれていたりして面白い
ときたま開発部のM元総理たちが
何かを書きながら、あちらこちらの車のボンネットを見て回っている
事務員さんの通勤車まで、彼らの餌食で
みんな、右と真ん中と、左が微妙に違う艶をしている
だから私の車も例外ではないのだ
では、それが苦であるのかというと
別にドオってことない、平気である
もともと私は、決してキレイ好きではないのだ
むしろ少々汚いぐらいの方が落ち着く
車を綺麗にするのは、「仕事」である
私達はプロであって、趣味で車を綺麗にしているわけではない
だから自分が綺麗だと思っても
お客さんが綺麗ではないと思えば、私たちの負けである
私達はプロだから
お客さんが綺麗だと言ってくれて、はじめて綺麗になったという事
自分の好き嫌いは関係ない
だから
自分の車がキレイであるかどうかということには、あまり興味がないのだ
そんなキレイ好きではない私だが
無性に「キレイにしたがり」であったことがある
もう10年以上も前
有名な高木靖男氏が主催する「モービルクリーンベース」に通って
洗車や研磨、コーティングなどを勉強していた頃
自分が驚くほど車を綺麗にすることが出来るようになって
それがうれしくて、うれしくって
車を磨いたり、洗ったりしたりを
キレイにすることを、いつもやりたくって仕方がなかった
特にスーパーマーケットの駐車場などで、汚い車が並んでいるのを見ると
キレイにしたくってウズウズした
「綺麗にしたい病」である
今回のMINEで、そんな病気にかかっている人間を発見した
ひと月半前に家族を連れて快洗隊にやってきた
独立志願のH.オサム
紙袋に入れて来た「キーパーファイナル1」と「スポンジ」と「タオル」を持って
ピットのあたりをウロウロしている
最初に、わが25番キーパーレビンをキーパーで磨いた
見事にピカピカになった
わがキーパーレビンは「KeePre」のでっかいステッカーを、貼ってはいるが
実は
キーパーコーティングをしてもらった事がなかったのだ
へな?も、へな?も
自分が走るのにかまけていて
いつか磨いてやろうと思うばかり、言うばかり
一度も磨いてやらなかったのだ
はじめてキーパーで磨いてもらった25番キーパーレビンは
見事にピカピカになった
「へえ~、キーパーってすげえなぁ」と他人事のように言ったのは
キーパー製造責任者の「へな?」か
キーパー販売促進担当の「へな?」か
H.オサムは
さあ、これからコースインと、動き始めようとしているレビンにまで
まだ磨き足りず、名残惜しそうに
しつこく擦っている
綺麗にするテクニックを憶えると
それもチョッと腕に自信を覚えるようになると
みんなこの病気にかかるようだ
「綺麗にしたい病」
車が自分の手にかかって、綺麗になっていく事が
うれしくってしょうがない
そんな病気
彼は「スーパークイックホワイト」まで持ってきていた
あらかたの車を磨いてしまった彼は
今度は、その辺に積んである本番用のタイヤのホィールをそれで磨き始めた
「もう、いいよ」
と言われながらも
黙々と
いや、嬉々として
ホィールを磨いて、とうとう全部綺麗にしてしまった
彼の病気は当分治らないだろうな、と思った
昔の自分を思い出しながら