2024年04月20日(土曜日)
04.20. 37話.「一番働いている私達だけ何で給料もらえないの?」
私の尊敬する起業家の一人に、CoCo一番屋の創業者である宗次徳二(むねつぐとくじ)氏がいます。彼が最初に起業した最初の店舗は尾張の小さな街の喫茶店でしたが、独自の発想でカレー専門店「CoCo一番屋」(のちに世界一のカレーチェーン店)を創りました。その多店舗展開の手法で「ブルームシステム」という「のれん分け」でFC店を増やしていく仕組みがあります。
その仕組みは実に巧みで理に適っているのですが、その中でも一番大切なのは「独立して自分の店舗を始める時には、必ず夫婦で始めること。」これは本当に大切なことです。私も起業してもうすぐ40年経ちますが、今思うとこれが無かったら、私と私の会社の今はありません。いろんなケースがあるのでしょうが、これは間違いない鉄則なのです。
たとえば、私が起業してから随分経った頃、企業としては軌道に乗っていたのですが、私は新しい事を次から次へとやっていたので、資金的に非常に苦しい時がありました。そんな時にも、当然、社員の給料、仕入れの支払い、借金の返済は、絶対に止められないので、しばらくの間。自分と妻の給料の支払いをしませんでした。そんな状態が暫く続いた時、妻が「一番たくさん働いている私達だけ何で給料もらえないの?」と悲しそうに言いました。本当に家にお金が無くなっていたようなのです。それも自分たちの給料を取らなかった時期はほんの何か月だけと思っていたのですが、この間、その事を聞いたら何と6か月間も取っていなかったのだそうです。それでは妻が嘆くのは無理もない訳です。
それで、次の月からちゃんと自分達の給料も取るようになったのですが、その為に私が何か新しいことに金を使うことを控えめにしただけで、私は自分たちの給料を払うことを忘れていたのでした。
しかし、これは結構大事な問題であって、零細企業の場合、こんなことを境に、自分の給料は、給料の形としては取らず、会社の金を個人の支払いにも使うようになってしまい、個人のお金と会社のお金の境目が無くなってしまうケースが多いのでないでしょうか。会社の経営で公私の区別のきちんとつける事は、ものすごく大切なことで、経営者が公私の区別を着けられないような会社は、隅々までだらしない公私混同の塊りのような経営になって成長することは絶体にありません。
多くの男性は、特に起業するような男性は、仕事自体が生活そのものなので、公私の区別なく働き、良い意味でも悪い意味でも公私の境目があやふやになりがちです。しかし夫婦で起業すると、かえって公私の区別をつける事になるのではないでしょうか。起業とは夫婦で始めるべしと思う所以です。
こう書いてきてふと思い出したのですが、二十数年前、半年間取らなかった私達の給料はどうなったのでしょうか。あれは私はちゃんと取ったのでしょうか?