谷 好通コラム

2025年08月03日(日曜日)

08.03.この間まで嬉しかったのに、今日は悔しい。

 

スーパーGT第4戦は、スーパーGT史上初めての変則開催でした。

いつもはだいたい2時間半から3時間半程度の距離を

途中で燃料補給とタイヤ交換の為にピットインして

二人のドライバーが交代して戦うのだが、

この第4戦はスーパーGT史上初めての試みとして、

1日目(土)を

300クラスと500クラスの混走で、

1人のドライバーだけで、1人分の距離35周のスプリントレースとする。

多くの場合、このレースにはAドライバーが担当する。

2日目(日)は、

300クラスと500クラスを別々にして、、

それぞれを1人のBドライバーがスプリントレースとして走る。

 

しかも、全車ノーウェイトで、

それぞれのチームのエンジニアとメカニックが

車の作り込みとセッティング力が試される。

ドライバーも、それぞれが自分の好みのセッティングで

スプリントを一人だけで走るので、

自分の力量がもろに出る訳であり、言い訳が全く効かない。

 

言ってみれば、チームを作っているエンジニアとメカニック、

Aドライバー、Bドライバーと、それぞれがガチンコで勝負する事になるのだ。

 

私が見に行ったのは、その1日目の300と500クラス混走のスプリント。

ドライバーは大湯選手。

 

第2戦目で優勝している#38 KeePer CERUMOは、

当然、シリーズチャンピオンをも狙う。

その為にも、

#38のレースカーそのものとしての実力が試される第4戦は意味が深い。

 

昨年は、#38 KeePer CERUMOとしての1年目であり、

どこまで戦えるのか未知数であったが、

数年ぶりに三位で表彰台に上がることが出来、チーム全体が感涙した。

上り調子で迎えた2年目の今シーズンは、

1戦目こそスタート直後のスピンで、車が大破した。

しかし、

メカニックたちの頑張りで

2戦直前までに見事に#38は復旧し、

2戦目の富士では、ポールtoウィンで、ふっちぎりで優勝した。

 

何年ぶりかの優勝でチームは大いに盛り上がった。

3戦目のセパン戦は詳しくは知らない。

久しぶりの4戦目の富士戦は変則開催として行われ前半戦が終わる。

 

1日目の混走スプリントは、Aドライバーの大湯選手が走る。

優勝した第2戦は、

#38がノーウェイトであったのに対して

ライバルの#36 au TOM’Sは1戦目を優勝しているので、

シリーズポイント20Pを稼ぐと同時に60kg?のウェイトを積んでいる。

何年か前までは「ハンディキャップウェイト」と言っていたが、

今は「サクセスウェイト(SW)」と言っている。が、

車にとってはハンディキャップ(障害)その物であって、

ウェイト50kgについて1ラップ1秒遅れると言う。

まさにウェイトを積んだ車にとってハンディキャプになっているのです。

だから、

第2戦の優勝は、

初戦優勝の#36が60kgウェイトを積み、#38はノーウェイトなので、

#36を一周につき1秒ずつ引き離した#38の独走の優勝は、

ある意味、このウェイトが成したものとも言える。

しかし逆を言えば、

#36と#38がノーウェイトのガチならば対等であるとも言える。

両チームのエースドライバー、

#36の坪井翔選手、#38の大湯都史樹選手が、

その両方共が、ファンたちと共に「俺が一番」と思っているので

両雄がまともにガチで戦う注目の一戦であるとも言える。

 

予選は#19ウェッズスポーツが1位で、#36が2位、我らが#38は3位。

しかし#19は、

ヨコハマタイヤを履いていて、

最初の一発は早いが、すぐに垂れてしまうのでレースでは問題外。

実質的には#36がポール、#38が2位とも言え、

この2台がタイム的にも拮抗していて、レースはこの2台の戦いになる。

 

 

決勝のスタートは緊張の一瞬であった。

レース前、大湯選手は言っていた。

「坪井はどうしても速い。追いつけるのだけど抜けない。

だから、スタートで#19がらみでゴチャゴチャしている内に、

#36をどさくさ紛れに抜いて、

(#19はすぐに落ちていくだろうから)

あとは#36を抑えて、

(#38も十分に速いので、そう簡単には抜けない)

最後まで走り切り、トップでゴールする。」

と言っていた。

 

その作戦通り、スタート直後の1コーナーで#36を抜いた。

しかし、すぐに次のコーナーで抜き返され・・・、デッドヒート。

しかし、その後すぐに#14 ENEOS Rookieがどれかの車に押されて、

コースアウト中破して止まった。そのままセーフティーカー(SC)が入る。

何周かSC先導で回って、再スタート。

2回目のスタートでは、一発勝負の集中力が効かなかったのか、

我が#38は、#36の後を、周回を続けた。

その差、わずかに1秒半から3秒。まったく開きもせずに詰まることもない。

 

 

#36と#38だけが別格で1位と2位でぐるぐると周回を重ね、

その後ろ3位以下は10秒以上離れて、さらに徐々に差が開いていく。

 

たぶん、この間#38大湯は、

本気で#36坪井を追い詰め、抜こうと追っていたのでしょう。

セクター1とセクター2では#38大湯が速いのだが、

セクター3とラストまでは#36坪井の方が速く、

結果的に、まったく追いつけない。

この間の大湯の焦りとイラ立ちは大きかったのではなかったか。

 

途中で雨が少しだけ降って来て、

ひょっとして、#38大湯選手にチャンスがやってくるかと思ったが、

すぐに止んでしまって、何事もなかった。

 

結果的に、#36坪井はトップでコールし、

#38大湯は2位に甘んじた。

 

 

私はゴールまでサーキットにいたが、表彰式までは見なかった。

しかし、あとから送られてきた写真を見ると、

大湯選手は、せっかく2位に入って表彰台に上がったのに、

まったく嬉しそうではなく、むしろ憮然としているようだ。

 

昨年は3位で泣いて喜んでいたのに、今年は1勝して、

このレースでは2位に入っているのに、悔しそうにしている。

 

 

この変わりようはすごい。

このチームは、シリーズチャンピオンを本気で取ろうとしている。

 

このチームの何かが大きく変わった。

ひょっとしたら、今シーズン1戦目の岡山で、

スタートドライバーの石浦選手がスタート直後の1コーナーゴタゴタで、

大スピンの末に#38を大破させ、

車の大半が新しくなったことが転機になったのかもしれない。

速い大湯選手の存在が石浦選手の大きな刺激になっているのかもしれない。

 

何がどう変わったのか分からないが、

シリーズ8戦を、8回レースをやる1年。

から

1戦1戦のそれぞれを優勝に本気でこだわって、

結果として、それを8回戦うになったのではないだろうか。

もちろん以前だって、

いい加減にレースをこなしていた訳ではない。当然だ。

しかし、本気で勝とう。優勝しようと思って戦うレースは、違うものだ。

本当に優勝を狙って戦うと、

2位でも「負けて2位になった」になって、

勝って3位のなった時とは全く変わっている。

 

私達の仕事でも、

1週間・1か月間を過ごす仕事の仕方と、

1日1日、一つ一つの仕事に集中してかかり、

それが積み重なって1週間、1か月が過ぎていくのとは全然違う。

 

我々も、一つ一つの仕事で全部優勝するつもりでかからなくてはならない。

環境の良い過ごしやすい所には、必ず、時間を過ごす仕事のやり方の人がいる。

特に我々経営者が、一つ一つの仕事で全部優勝するつもりでやれているか。

この2位の表彰台で、不機嫌そうな顔をしている大湯都史樹選手を、

我々は見習うべきだろう。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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