2002年09月24日(火曜日)
530話 強いやさしさを
今朝の朝日新聞の天声人語
ドイツの総選挙の結果についての話題で
独裁者ヒトラーの著書「我が闘争」の中の一文が書いてあった
「リーダーシップのコツは
人々の関心を一つの敵に集中させて、分散させないことだ」
なるほど、と思った
第1次大戦に負けて貧窮のどん底であったドイツに
疾風のごとく現れたヒトラーは
「我々が貧しく苦しいのは“ユダヤ人のせいだ”
われら誇り高きゲルマン民族が
今のような貧しさを強いられているのは
金の亡者、汚れたユダヤ人が
富を独占しているからだ
我々は清く正しいのに
汚れた賊民“ユダヤのせい”で、こんなに惨めなのだ
ユダヤを殺せ!
ユダヤを抹殺して、人類を浄化するのだ」
ヒトラーと、その煽動に乗った群衆は
国全体を動かす力となって
200万人以上のユダヤ人を殺した
ただ単にユダヤ人であるという理由だけで
その人が、自分と同じく一つの人格を持っていることを全く無視して
自分たちは正しい
なのに
自分たちが苦しいのは
◎×▽のせいだ
仲間の結束を簡単に作り出す方法
誰かを仲間共通の敵にして
血祭りに上げるまで
そのことに集中する
理性とは正反対の狂気の沙汰
人間は弱くなったとき
こんな残酷なことに走る
しかし、こんなことは身の回りでも
当たり前のように行われている
子供は
変わった者がいると、容赦なくいじめる
背が高ければ「せいたかノッポ」、低ければ「チビ」、色が黒ければ「クロンボ」
白ければ「マッシロケ」、太っていれば「デブ」、痩せていれば「ヤセ」
足が悪ければ「チンバ」、耳が悪ければ「ツンボ」
みんなして、変わった者をいじめて
仲間意識を高揚させる
大人になると
もっと陰湿になり
影でコソコソ
しかも酒を飲んだりして理性が緩むと
コソコソ、グチグチ
人の悪口を言い合い、誰かをそしって、仲間意識を確認したりする
「人の悪口、蜜より甘い」
とは、よく言ったもの
クソッタレ!
自分が弱いから、もっと弱いものをいじめて
自分の弱さをごまかしているだけで
ヒトラーは
ドイツ国民が、貧窮のどん底であり弱り切っていたから
少数民族であったユダヤ人を
血祭りに挙げるという残酷な手法で
権力を握ることに成功した
幼児が「チンバ」をいじめるのも
中学生が「ひ弱そうな子」を集団でいじめるのも
いい大人が「出世争いの敵である同僚」の悪口で、仲間を作るのも
ヒトラーがユダヤ人を虫けらのように殺したのも
人の弱さを巧みについた
悲しい手立て
一人一人が強ければ
ヒトラーは権力を握ることは出来なかっただろうし
一人一人が強ければ
仲間を叩くより、外を見て、力強く前に進むことを考えるだろう
一人一人が強ければ
弱いものを血祭りに上げることより
人を愛すること
みんなの幸せを願うことの方が、何百倍も楽しく、幸せであることを知っている
ヒトラー「我が闘争」の一説
「リーダーシップのコツは
人々の関心を一つの敵に集中させて、分散させないことだ」
これは
人々が弱い時にだけ通用する
姑息な手段である
人は強くなったとき
やさしくなれる
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