2003年04月21日(月曜日)
693話 10年のキャンプ
昨日、親父の墓参りに行った
名古屋市緑区のはずれにある禅寺にその墓はある
このお寺、ただいま新築中である
もう10年ぐらい前から工事は始まっているのだが
全体の半分の工事もまだ終わっていない
本堂は、いまだ手付かず
住職の居宅兼法事のための講堂が、ほぼ出来上がりつつあるところ
10年かかって、まだ半分以下しか工事が進んでいないとは
どんなに大工事かと聞こえるが
それほどのものでもない
普通のお寺の工事
実はこの工事
9年以上も、工事が中断したままで放置されていたのだ
10年前に住職の今までの居宅を壊して
新しい馬鹿でかい居宅兼講堂を建て始めた
柱になる材木も全部用意されて
本体の棟上げまで順調に終わった
が、しかし
ちょうど、バブルがはじけて世の中がおかしくなってきたころだ
棟上げが終わって間もなく
工事屋さんが倒産してしまった!
夜逃げだ
ここから話がややこしくなってくる
工事屋が倒産したのだから、次の工事屋さんをすぐに呼んで
工事を続行すれば良さそうなものだが
そうは行かない
上棟した材木も、刻んである大量の材木も
倒産した工事屋さんのものではなく
それを納めた材木屋のものである
いや、もう納品を受けてお金を払い終わっている“はず”の施主のものである
い~や、工事屋さんの倒産でお金を取り損ねている債権者のものである
そんな訴訟が起こされたのだ
そうなると、そのお寺に山積みしてある材木も
建物本体も
動かせなくなってしまった
棟上げが終わった建物と
施主の工事現場に積み上げられた材木は
いったい誰のものになるのか
その所在がはっきりしないうちは、誰も手を付けられない
寺の住職さんは困った
今までの住宅は壊してしまっているので
その時はもう、古くなった本堂の中に
わずか6畳ほどの隙間を作って、一家そろっての仮住まい中
そんな窮屈な生活を始めてまもなく
新しい家が建ち上がる見通しが、全く立たなくなってしまったのだ
一家は仮住まいのまま
裁判は遅々として進まない
住職さん一家は困り果てた
もともと
この改築工事、棚ボタから始まった話
この寺の脇を、第2東名高速が通り、墓地の山の一部がその工事に引っかかった
その買収金として数億円入ってきたのだ
そこで住職さん
ここはとばかりに、お寺の一切合財を改築することに決めた
しかも
その買収された分の資金だけでなく
檀家に寄金を募って
その両方で、買収金額の倍額の改築工事にしてしまったのだ
さぞかし巨大な本堂ができるかと思ったら
その工事の半分以上を、住職さんの住宅兼講堂の建築に当てていた
檀家の人は面白くない
そんなことで、檀家の中に不満の声が上がりつつあるときに
“突然の、工事屋の倒産”
一家は、本堂の中、狭い所での仮住まいのまま
「それ見たことか」
不満を持っていた檀家の人々は、困った住職さんを見ても知らんぷり
窮地に陥った住職さん一家
それから長~い長~い本堂生活が始まったのだ
暑い夏でもクーラーもない
夏、住職さんはいつもパンツ一丁であった
おまけに風呂もない
毎日、境内でタライで行水
寒い冬も本堂の文化財が心配で、ストーブも焚けずコタツだけ
炊事は外に仮設の洗い場でやっていたそうだ
まるっきりキャンプ生活
(グリット吉田のように趣味=キャンプの、楽しいキャンプではない)
「まことに情けない」と、住職さんはぼやいていた
それでも、そんな生活でがんばる住職一家に
檀家の人たちも
徐々に心を許したのだそうだ
1年経ち、2年経ち
裁判に決着がついたのが8年後
去年の暮れ、ようやく工事が再開された
住居もその姿が出来上がって、あとは内装だけの段階のようだ
やっとキャンプ生活から開放されて
新居が出来上がり
今度は豪邸生活が待っている
足掛け10年の本堂でのキャンプ生活
住職さんは、いったい何を考えて生活していたのであろうか
今日は朝一番の飛行機で福岡に飛んだ
福岡で大事な話があるのだ
そして、そのあとスーパー耐久に使う「インテグラ」の初テスト
(テストの話はまた明日)
朝の名古屋空港は雲が低く
いかにも、今日の飛行機は揺れるぞ、って感じであった
飛び立ってみると
意外と雲の高度はあって
昨日の雨で透き通った空気が、雲の下に深くまで広がって見えた
飛行機の高度が上がって
雲を突き抜けたとき
そう、この辺が、雲を突き抜けたあたりが一番揺れるんです。
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