谷 好通コラム

2004年08月28日(土曜日)

1005.絶対に言わないで

「私が、こちらでの生活を楽しんでいるなんてことは、
絶対に言わないでくださいね。
そんなことが分かったら、すぐに日本に呼び返されてしまいますから。」
と、香港の駐在員事務所の責任者として来ているTさんが笑って言う。

 

もちろん冗談でおっしゃっていることは解っているが、
なかなか言えない言葉である。

 

香港に駐在員として派遣されたということは、
彼のバイタリティを見込まれたということと、
今時点での能力の高さと、更なる学習能力を高く評価されたということでもある。
日本人にとって言葉の通じない中国での生活とは、
日本に比べればはるかに不自由であり、食事の面でもそれなりに苦労しているはずだ。

 

さらに、Tさんは、
「以前、私は中国料理が大嫌いでした。
だけど、香港に来て、中国の中華を食べたら、これがおいしいんですね。大好きになりました。」
と言う。

 

香港に派遣の辞令が出た時点で、
少なくとも5年の中国生活が決定したわけだ。
そこで、嫌々中国の生活をするか、
あるいは、実のある中国生活にするか、
つまり、中国への派遣命令を、
耐えるべき“試練”と考えるか、大きな“チャンス”と考えるか、
あるいは、
“我慢する”か、“楽しむ”か
これは本人の考え方の問題である。

 

「我慢」か「チャンス」か

 

Tさんは、これをチャンス!と考え、中国生活も楽しむ!ことにした。

 

香港からは、
インドネシアとかタイ、シンガポールなど
東南アジアへの航空券が大変安く手に入るという。
だから、自腹で休みの日に同僚と一緒に見学というか、見物というか、遊びに行くといっていた。
「香港にいなければこんなことは出来なかった。ラッキーです。」
今度はぜひベトナムに行ってみたいとも言う。

 

「香港は大変便利で、快適です。」
そして、このチャンスに英語と広東語(中国南部の方言)を覚えようと、
積極的に現地の人に話しかけていく。
ただ、香港は中国と違って物価が高く
飲みに行こうと思っても、
とんでもなく高くて、なかなか行くことが出来ないとこぼす。

 

夏休みということで、奥さんと子供は日本に帰っている。
つかの間の独身生活は、彼にとってチャンスなのであろうか、我慢なのであろうか?
いずれにしても、とにかく明るい。
たぶん我慢していることもたくさんあると思うのだが、明るく笑い飛ばしている。
ポジティブシンキングの発揮である。

 

 

見習うべきことと自分に言い聞かせる。

 

外国に出張に出かけると、その外国にすっかり溶け込んで、
その地で活躍している人とよくお会いする。
今日、広州でお会いした人、
JETRO(日本貿易振興機構)の広州代表・喜多代(きたしろ)さん。
最初、私は喜多代さんのおっしゃっている話がなかなか聞き取れなかった。
なんと、喜多代さんの日本語は中国訛りになっていて、
中国人が日本語を喋っているように聞こえるのだ。
言葉自体は非常にしっかりしているのだが、
発音が訛っている。
中国語を喋りすぎて、日本語の発音が中国語訛りになるなんて、
とんでもなく凄いではないか。
ここまで、外国に溶け込んでしまった人は初めて見た。

 

広州は私的には、好きな所である。

 

 

JETROの広州代表事務所のある超近代的ビル街

 

 

喜多代さんからは、重要なお話をお聞きすることが出来た。
2005年から“卸売り”の免許を持った独資での中国現地法人が
中央政府から許可になったということで、私たちもその申請を目論んでいたのだが、
その後、税務当局からの通達で、
現地法人を作っても、事実上、領収書を出せるまでに、その後、最短で一年半かかるというのだ。

 

これは、商売にとって死活問題なのだ。
中国には「増値税」という独特の税金があって、
増値税の領収書が出せないと、
相手が税金の還付を受けられないので、商売にとって大きなコストアップになる。
17%というハンディがはじめから着いて回ることになるのだ。
増値税は複雑な構造であるが、税務署発行の領収書が出せないのは、
致命的といってもいいのだ。

 

これは実にショックな話であった。
このままでは、
12月の現地法人申請を前提に動いてきた行動が水の泡になってしまう。
今からその対策を考えなくてはならない。
この情報を知らずにいたら、もっと傷が深くなっていたかもしれない。
情報の重要性を今更ながら知ることになった。

 

しかしそれにしても中国という国に対して、不信感が募る。
はたして、この国で商売をする意味があるのだろうか。
今日の夜はまた眠れなくなってしまうかもしれない。

 

イカンイカン
Tさんのように、ポジティブシンキングの塊にならなくては。

 

今日の午前中には、
あるドライブショップのような店にお邪魔した。
この店は、タイヤとかオーディオなども売っているが、
むしろ、洗車、鈑金、ウィンドフィルム、などのサービスに主力をおいた店舗で、
まずサービスそれから物販という私たちと非常に似た考え方の経営者の人たちであった。
この店については、いろいろ考えさせられてので、
日本に帰ってからじっくりと紹介したい。

 

 

夕方の便で、広州から上海への飛行機に乗る。
広州の空港は、ただただ、だだっ広くて、非常に不便である。
ただ立派なだけであり、
とりあえず建ててしまえば作り得るハードに対して、
そこで働く人間というのソフトが、まるっきり着いてきていないことに
イライラとし、
無駄としか思えず、移動距離を長くしているだけのだだっ広さに
建築デザイナーがうわ言のように“芸術的な空間“と言う馬鹿馬鹿しさを想い、
痛い足に、だだっ広さがこたえて、腹まで立ってくる。

 

 

狭い国内線のシートに約2時間かけて、上海に向かう。

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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