谷 好通コラム

2006年01月30日(月曜日)

1336.二人の超タフガイ

今回のアメリカ行きで、私はかなりくたびれてしまった。
そして、帰ってきてから
トニーにこんな文面の入ったメールを送った。
「今回は、自分の体力の限界を強く感じた訪米でもありました。
私がいつまでも『俺が、俺が』と、アメリカを独り占めしていては、
返ってアメリカでのビジネスが停滞しかねず、・・・」

 

これは決して弱気で言っている訳ではない。

 

今回の訪米とその前後のスケジュールは、ちょっと大変なものであった。
去年の12月中旬に休んだあと、ずっと何らかの仕事をこなし、
その上で、22日から27日までの6日間に11回飛行機に乗った事になる。

 

22日 成田⇒ロス⇒シカゴ⇒ディモイン
23日 ディモイン⇒デンバー⇒ロス
24日 ロス⇒サンダィエゴ(自動車)⇒ロス⇒ラスベガス
25・26日 ラスベガス⇒ロス⇒成田⇒中部
27日 中部⇒福岡⇒中部

 

これはちょっとやり過ぎであった。
トニーからの慰労のメールに中にこうあった。
「プロの国際線パイロットも、スチュワーデスも絶対にできないことを・・・」
たしかに、こんなフライトのスケジュールを、
パイロットあるいはスチュワーデスに組んだら、労働争議になるのかもしれない。

 

私は、飛行機での移動を、
「ただ座っているだけで、仕事でも何でもない。むしろ休憩時間ですよ。」
と言っていたが、
ここまでスケジュールを詰めてみると、
「そうでもないかな、やっぱりしんどいな」
と思うようになった。

 

飛行機は地上での1気圧が、上空に上がるにつれて0.8気圧に下がる。
1万mの上空では、外はもっともっと気圧が低いのだが、
機内は与圧してあって0.8気圧に保たれているのだ。
それでも、一回飛行機に乗るたびに
[1差圧⇒離陸上昇⇒0.8気圧⇒降下着陸⇒1気圧]の変化がある。
この気圧の変化も疲れの一因になるのかもしれない。
あるいは、飛行機が飛んでいる間ずっと続く微妙な振動と、
上下左右にかかる弱いGが、微妙に体に緊張を与え続けているのかもしれない。
それに、空港内でたくさん歩くこともけっこうダメージになる。
特に今回のように、色々なアクシデントがあって、
空港内で急ぐ場面が何度かあると、やはりきつい。

 

飛行機に乗ることで疲れたと思ったのは、
去年の東回り世界一周をやった時以来であった。

 

帰って来て、色々考えた。
私は、もう少し控えめにコントロールをするべきで、
詰め込みすぎた無茶なハードスケジュールは、実は仕事のためになっていない事を。
歳をとって50を過ぎ、
確実に体力が落ちていることを計算に入れるべきである。

 

これまでは、1日24時間をいかに効率的に動かすか、
いかに自分を効率的に使うか、
そんなことばかりを考えてスケジュールを組み立ててきた。

 

本当は、自分を最も効率的に動かすには、
じっと一箇所に動かず、集中的に仕事をこなしていくのが一番である。
外部の人との接触も自分の所に来ていただくのが、最も効率的である。
しかし、相手によってはそうも行かず、
多くの場合、相手の場所に行って用件をすすめなければならない。
あるいは、講演であるとか、場所の確認とか、調査、表敬訪問などは、
その場所に行かねば仕事自体が成り立たない用件も多い。
だから、外に出ることが多くなり、仕事の半分が外に出て行く事になる。
これは仕方のないことだ。

 

しかし外に出て行くとなると、移動と言う時間のロスが多くなって、
絶対的な効率は下がる。
だから、移動をみんなが休んでいる時にしてまでも、
無理やりあれもこれもと予定を詰め込んでいくのだ。

 

しかし、その移動で消耗して、いざ本番の仕事という時に疲れてしまっていたのでは、
結果としていい仕事にはならない事になってしまう。
これでは、何のために無理をしているのか分からない。

 

プライベートから仕事までの日常のスケジュールの立て方を、
根本的に考え直すべきであると強く思った。

 

そこで、決めたこと。

 

1.一週間のうち1日だけは必ず仕事をしない日を作る。(移動を含めて)

 

2.1日に3回以上は飛行機に乗らない。

 

3.このコラムを書くのを1日おきにする。

 

4.睡眠1日7時間を目標にする。

 

体力的に衰えて来ている自分を素直に認めて、
この4項目を実行したい。

 

特にこのコラムを1日おきにすることは、
かえって苦痛になることもあるかもしれないが、
最近、書くべき書類とか原稿を後回しにして、
ついこのコラムを書くことが多くなってきている事に気が付いていて、
これは本末転倒である、と自分を戒めてはいるのだが、
つい、これを書いている方が楽しくて、
増えてきている原稿や書類に疎かにしている傾向を是正する意味もある。

 

 

体力と気力は「食う」ことから発していると思う。
パワーのある人間で、食が細いということはまずなかろう。
力はまず食うことが始まる。
これは間違いないことだと思うのだが、
歳をとってくると新陳代謝が落ちてくるのか、食うととにかく太ってくる。
(最近また少し太ったようだ。)

 

太ってくると余計に運動をしなくなるし、
私の弱点である足に負担がかかって、移動で余計な疲れを呼ぶ事になる。
エネルギー摂取のコントロールも必要だ。

 

スケジュールのコントロール。
睡眠のコントロール。
食事のコントロール。
運動量の確保。

 

いい仕事をするために、
本当の意味で効率的な動きで、仕事量を確保するために、
自分の体力と気力に任せて、
思いっきり詰め込んだスケジュールをこなすことを自制して、
理性的なコントロールが必要であることを、今回のアメリカ出張で痛感した。

 

 

一昨日、ドイツから2人のタフガイが会社に来た。
SONAXの輸出部長Mr.クリーガーと、研究部門の責任者Dr.ピッチである。
何日か前に韓国から日本に来て、
昨日シンガポール経由でインドネシア・ジャカルタに飛んでいった。
ドイツを出発してどの国を経由して韓国に来たのか、
ジャカルタからどこへ行くのか聞かなかったが、
多分、2週間くらい連続の出張なのだろうと思う。
彼らは丸一日精力的に仕事をして、信じられないほど食って、
夜は夜で精力的に遊ぼうとする。
夜8時過ぎまで食事をしたあと、
『カラオケに行こう。』と言って、うちの社員を引き連れて繁華街の中に消えて行った。

 

彼らのタフさには、いつもながら驚かされる。
しかし、私も、自分も負けないぞと無理をしても、
何も意味がないことをもう知っている。
そんなことで勝つか負けるかというよりも、
自分に出来得る一番いい仕事をするためには、今はコントロールが必要なのだ。

 

ドイツからやってきた二人の超タフガイMr.クリーガーとDr.ピッチ。
体力では勝てないが、いい仕事では絶対に負けないぞ。

 

 

彼らは名古屋の『手羽先』が大好きで、放っておくと何人前でも食べてしまう。

 

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    代表取締役会長兼CEO

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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