谷 好通コラム

2009年04月14日(火曜日)

2184.大したことのない幸運

中部空港から仙台へ飛んだのは朝8:55。
安定した飛行であったが、着陸30分前、しばらくして降下が始まる頃
「この先、気流の関係で警戒すべき場所を通過します。」と、
機長からの機内アナウンスをあった。
ほーっ珍しいことを言うなぁ。と思ったが、
別にたいした揺れもなく、順調に着陸した。

 

仙台ではキーパーPROSHOP研修会。
比較的PROSHOPの少ない東北地区でも現在48軒が登録されている。
新潟を除いたほぼすべてのプロシッョプが参加された。
(新潟からの参加はやはり難しかったのか、今後、新潟での研修も考えるべきかも知れない)
研修会ももう6回目を数え、大いに盛り上がったことは当然だ。

 

 

仙台は、今、桜が満開となっている。

 

 

午後3時過ぎ、実技が始まる前に会場を去った。
本来はすべてのスケジュールが終わり午後7時の飛行機で札幌へ向かい、
明日の午前中から、快洗隊の新店「中川店」で使う新プログラムノンブラシ洗車機の
テストと試運転を行う予定であった。

 

しかし、歯が、また久しぶりにインプラントが入っている部分の歯茎が腫れてきたのだ。
これは出来るだけ早く堀田歯科に行かねば、
最後の砦であるインプラントが取れてしまう。
これは話をすることが仕事である私には、本当に緊急事態なのだ。(不運)

 

そこで、仙台16:40発の飛行機に乗り、18:00名古屋到着で帰って、
19:00まで診察がある堀田歯科に駆けつけ、また堀田先生の名人技で治療してもらい、
翌日、明日の午前7:30の飛行機で札幌に向かうことにした。(解決)
これなら、朝8:00からの快洗隊チーフ朝会を欠席することになるが、
待ったなしの快洗隊中川店用のテストには十分に間に合う。
快洗隊チーフたちには申し訳ないが、
インプラントの腫れは、どうしても私には緊急事態なので、勘弁してもらおう。(残念)

 

そんな計算をして仙台空港に到着したら、
仙台16:40発の飛行機が欠航になったと出ていた。(不運)

 

使用する飛行機に修理が必要になって欠航になったらしい。
機体は例のボンバルディアQ400-800。
あの飛行機はトラブルが多くて、修理が必要ならば欠航で結構。良かった。(幸運)

 

しかし、その後の便は17:25発で中部空港には18:40着だと言う。
これでは堀田歯科の19:00までの診察時間には絶対間に合わない。(不運)
ではどうするか、
いろいろ考えに考えて、
明日の朝一番9:00に堀田歯科に行き治療してもらってから
中部発12:00、千歳13:40着の便で札幌に行くことにした。
これなら現場に15:00には到着できる。
遅れる間に、テストは担当の増田係長に進めてもらっておいて、
最終段階をしっかりと確認し、修正して一発必中で成功を狙う。(解決)

 

17:25発の飛行機の出発はかなり遅れた。
しかし今日は名古屋に帰るだけなので、遅れても別にどおってことない。
じきに搭乗のアナウンスが流れ、乗り込む。
16:40の欠航した便の乗客(私も)が17:25発に合流したので、機内はかなり混んでいた。

 

飛び立った飛行機はずっと揺れっぱなしであった。
それでもトイレの用を済ませるためにか、
かなりの揺れのままシートベルトのサインが10分ほど消えた。
サインが消えればCAさん(機内乗務員)たちも飲み物サービスをせざるを得ない。
しかし短時間のサービスだったので、
飲み物をもらったのはほんの一部の乗客だけであった。
私は一番前の席だったので、冷たいお茶を一杯いただけた。(ちょっとだけ幸運)

 

やがて、中部空港付近まで機は近づき
「着陸態勢に入りました。電気製品の電源をお切りいただき・・・・」のアナウンス。
揺れはずっと続いている。

 

単に横風だけではない。ガタガタという感じでもない。
上下左右にズシッズシッと揺れ、気流が渦巻いている感じの揺れだ。
パイロットが揺れを操縦桿でねじ伏せている。
尻がシートから浮くようなダウンバーストでもない。
やがて、滑走路の誘導灯が機の下に見えてきて、着陸寸前。
しかし機体の揺れは着陸できるような感じがしない。
「これ、やばいよな」と思ったら、
次の瞬間、ジェットエンジンがフルパワーになる轟音がして、機首が上に上がった。
着陸を中止して急上昇である。(不運)

 

上昇してすぐ15分くらいで空港を旋回し、
再度アタックする。
このような場合、上空で天候の回復を待つのが今までの経験だが、
この機長はやる気満々のようで最小限の時間で二度目のアタックを始めた。(不運? 幸運?)

 

二度目の着陸への進入は、一度目よりも揺れがひどいように思えた。
「これって、さっきよりやばいよ」と思ったら、
次の瞬間、再び、ジェットエンジンフルパワー、機首上げ、急上昇。(これはやっぱり不運)

 

二度続けての着陸中止は初めてである。
ちょっと、これはやばいよな。天気の良かった仙台に戻ろうよ。と本心で思った。
上昇中し始めてすぐ、
目の前にいるCAさんに連絡が入った。(この人が「こゆき」似の美形なのだ)・・(幸運)

 

そして、そりCAさんがすぐ機内アナウンスをする。
「二度目の着陸を試みましたが、強風のため中止しました。
着陸の時間が遅くなりまして申し訳ありません。すぐにまた着陸態勢に入ります。
シートベルトをしっかりとお締め下さい。」

 

おいおい、また、すぐにやるのかよ。
ひょっとしたら、燃料があまりないんじゃないのか?(ひょっとしたらすごく不運?)

 

三度目の着陸進入は、また、最短時間で始まった。
今回はさすがに、シートの肘掛をしっかりと握り、少し前傾姿勢になって座る。
それを見た「こゆき」似のCAさんの唇が「すいません」と動く。
CAさんの表情も、笑顔を造りながら、明らかにこわばって怖がっている。

 

千回以上は確実に飛行機に乗っている私ですら初めての経験なのだ。
しかも、この飛行機の機長は、強気一点張りの機長なのか、
はたまた、ひょっとしたら、燃料が本当に少ないのか。
だいいち、空港が混雑しているこの時間に、
三回も連続して着陸アタックをさせるのには、何か理由がなければおかしい。
真剣に、これはやばいかな。と思ったのだ。(本気で不運?)

 

ふと、
これで死んだら・・。と考えた。
「これで死んだら、たましいが光になって、宇宙に飛んでいって、・・・」
「それでもいいな。」なんて頭が勝手に思って、そう思う自分が不思議だった。
・・・

 

なんちゃって、
三度目の着陸はナイスランディング!
見事に機体の揺れをねじ伏せ、無事に着陸した。
この機長は本当に凄腕だ(幸運)

 

タイヤが滑走路についた瞬間、
こゆき似のCAさんがホッとしたように小さくガッツポーズ。
私を見てニコッとした。(幸運)

 

私は、後ろを見て、
さぞかしみんなホッとしているだろう。ニコニコしているだろう。
と、思ったが、
ほとんどがビジネスマンのようなオジサンたちは、
ま・っ・た・く・そんな様子もなく、みんな仏頂面で、ブスっとしている。

 

「あんたら、たまにしか飛行機乗らんから、わからんかっただろ。もっと嬉しそうな顔しろよな。」
と、名古屋弁で、思い、なぜか真剣に怒れた。

 

 

珍しい経験をした。
本気で、ひょっとしたら死ぬかもしれないと思ったが、
不思議に恐怖感は全くなかった。
あったのは緊張感だけ。
この分だと本当に死ぬ前も怖くないかもしれないな。と思えたのは儲けものであった。(幸運)

 

幸運と不運は予期せずに交代にやってくるものようだ。
では、あの「こゆき」似のCAはどうなったのか?
飛行機を降りるときに、ちょっとだけニコッとしてくれただけであった。(大したことない幸運)

 

 

ボーイング737-500 ずいぶん古い飛行機である。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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