谷 好通コラム

2010年10月15日(金曜日)

2631.マニュアルは絶対必要。しかし運用するのは人間

今日は東京で一日仕事をして、今は品川駅から新幹線で名古屋に向かっている。
さっきの品川駅でのこと。

 

いつものように「みどりの窓口」で切符を買った。

 

身障手帳とクレジットカードを出して。
私「19時30分で名古屋まで、一人、喫煙を。
乗車券はこれで(身障手帳) お願いします。支払いはカードです。」
窓口スタッフ
「はい。(コンピューターを操作して) ・・・
「喫煙でしたら、19時30分の”のぞみ”なら席でおタバコを吸えますが。」
私「はい、19時30分と言いました。」
窓口スタッフ
「・・・・・・、(機械を操作して切符を出す) こちらにサインをお願いします。」
私「・・・・・」サインをする。
窓口スタッフ、座ったまま
「では、19時30分で名古屋までです。」

 

この中で二つのマニュアル違反がある。
一つ目は、
クレジットで金額を入力する前に、
「お支払いは○,○○○円になります。クレジットで切らせていただきます。」
クレジットを切る前に、金額確認を言わなければならないのに、黙って切った。
二つ目は、
切符を渡す時、新幹線の窓口スタッフの場合、
席を立って切符を説明して渡さなくてはならない。

 

これらは決まっていることなのに、この人は守らなかった。
若いちょっとイケ面で、明るく感じいい声を出すこの窓口スタッフは、
二つのマニュアルを実行するのをサボった。

 

私が19時30分の列車であることを言ったことを忘れて、
「喫煙でしたら・・・・19時30分がお席で・・・・」の言葉に対して、
私が「19時30分とさっき言いました。」と言った事が気に入らなかったのだろうか。
自分が忘れたことを言われて少し気分を悪くされたのかもしれない。
あるいは、いつもそうなのかもしれない。

 

一週間に何度も新幹線に乗る人はあまりいない。
一般的には、頻繁に新幹線切符を買う人は自動券売機を使かったり
事前に携帯で予約購入しているだろう。
しかし私は身障者割り引きを使うために
自動券売機を使えず、必ず窓口で切符を買う。
窓口を頻繁に使う珍しい存在である私だから
二つのマニュアル違反があったことはすぐに分かっただけであり、
たまに使う人でこのマニュアル違反に気がつく人はほとんどいないだろう。
だから、
あのスタッフは、サボるが常習になってしまったのだろうか。

 

しかし、切ってくれた切符が列車の一番端っこの席であり、
これだけ空いている列車ならば、
真ん中あたりから席を切っていくのが普通なので、
あのスタッフはやはり、私の言った事が気に入らなかったのだろう。
それにしても何か自分が気に入らないことがあったら、
席を操作するのは、やはりルール違反ではあるだろう。
とするとこのスタッフは、三つのマニュアル違反をしたことになる。

 

 

 

仕事をするにあたってマニュアルは必要だ。
絶対に必要だ。
それはサービスの質をある一定レベルに保つ意味もある。
たとえば洗車とかコーティングの作業商品のマニュアルであれば、
商品の造り方を示すマニュアルは品質を維持するために絶対に必要である。
マニュアルなしの作業は考えられない。

 

それは、お客様に対して安定した商品品質を提供する意味と同時に、
作業をするスタッフが何をどうすればその商品を高いレベルで造れるかの指針である。
マニュアルなしで、技術を規定せずに、
「とにかくお客様を満足させる商品を造り出さねばならないのだ。」
と、精神論だけを言われても、出来るわけがない。
作業マニュアルとはきちんとした技術の集合体であり、
一つ一つの技術にはそれぞれきちんとした理由があって造られている。
だから、マニュアルから外れた作業とは、たいていの場合は手抜きであり、
商品としての品質を落とすことがほとんどだ。
マニュアル崩しは洗車・コーティングの品質を落としキレイにならない。
洗車・コーティングの品質の維持とは「勝手なマニュアル崩し」との戦いである。

 

では、マニュアルを守ってさえいれば車がきれいになるかと言えば、
そうではない。
車のボディは千差万別の形をしており、
千差万別の塗装の状態であり、
千差万別の汚れがついている。
それに対して作業マニュアルをきちんと守るだけでは対応しきれないのだ。
マニュアルに従って作業を進め、
それでもなお、お客様から見てキレイになっていないと感じたら、
マニュアルから外れた作業が加えられるのは当然だ。
お客様に「きれい」と思っていただかなければ、このビジネスは成り立たない。

 

ならば、お客様からオーダーをいただいたメニューからはみ出た作業を、
どこまで実施したらいいのか。
普通の洗車を注文いただいても、
洗車をしても水垢が着いていて、それが取れなければ、
キレイではないと思ったらそれも落とすべきか。
それは出来ないし、
してはいけないことだ。
たまたまその時は店が暇であったので、
親切心で水垢落しをしてしまったとしたら、
お客様は洗車を注文すれば水垢まで落としてくれるものだと思われるので、
(今日はたまたま暇だったのでと注釈をつけても)
次回来店され洗車を注文された時が暇でなければ、水垢は落とされないので、
お客様は、「裏切られた」と思う。
そんな時に
「ご注文の洗車では水垢は落ちません。私はマニュアルどおりに作業しました。」
と、自己主張でもすれば、
お客様の「落胆」は「怒り」に変わってしまうことは必須だ。

 

 

しかし、
たとえば、受注の段階で「気になる汚れ」を聞き、
お客様が「水垢がついていて気になる」とおっしゃれば、
水垢が落ちるメニューをご提案すべきであろうし、
水垢が着きにくくなるコーティングのご案内もすべきであろう。
その上で「やはり洗車で」とおっしゃれば、
喜んで洗車をさせていただけば良い。
きちんと水垢についてのご案内をしていることによって、
洗車をして、水垢が残っていても、
その水垢が洗車では落ちないことを、ご案内の中でお客様は知っているので、
「がっかりされることはない」だろうし、
「今度は水垢を取ろう」と、
ホワイトキーパーやクリスタルキーパーの施工を思われるかもしれない。

 

お客様に、お客様が持っていらっしゃるご要望をお聞きすることは、
決して「売り込み」ではない。
お客様に喜んでいただきたいと思う気持ちの表現なのだ。
「売り込み」が目的でお聞きすれば、
それはすぐにお客様に通じて、
スタッフに答えてくれようとはしないし、
話を聞いてくれようともしないので
会話は不成立だ。

 

本気で「お客様に喜んでいただきたい。」と、本気で思ってお聞きすれば、
それはお客様のためにお聞きしていることなので、それが通じて、
お客様は自分の気持ちを話してくれるし、
こちらの提案も聞いてくれるはずだ。
ここで初めて会話が成立する。

 

売らんがためのセールストーク、
自分のためだけのセールストークが逆効果であるとはこういうことだろう。

 

しかし、トークにもマニュアルはある。
たとえばクリスタルキーパーを施工した後、
お車の引渡しの時に、お客様にご案内すべき点がたくさんある。
・一ヵ月後のコーティング点検があること。
・その時は無料で洗車をさせていただくこと。
(普段の洗車でどのようにされているか聞いて)
・普段のお手入れは洗車だけでいいこと。水洗いでもシャンプー洗車でも良いこと。
・ご自分で洗う場合、シャンプーは中性の物を使っていただきたいこと。
・私どもで洗車もさせていただくと嬉しいこと。
・虫、樹液、鳥フンなどが着いたら早めに洗っていただきたいこと。
・コーティングは保険の対象になるので、施工証明書を大切にしていただきたいこと。
・何か洗車で取れない汚れなどがあったら、ご相談いただきたいこと。
・何か不都合があれば、喜んで手直しをさせていただくこと。
など、など、など、
お客様に安心してカーライフを楽しんでいただくための
ご案内がマニュアルで決まっている。

 

このマニュアルは、世間のコーティングにありがちなクレーム逃れで
お客様に「あれをしたら責任をもてない。これをしたらだめです。」など
お客様の行動を制限するような、自分の責任逃れのためのトークではない。
あくまでも、お客様のためのマニュアルだ。

 

本気でお客様のためにするトークなので、
お客様との「会話」が成立する。

 

マニュアルは必要だ。
それが作業マニュアルであろうと、トークマニュアルであろうと、
マニュアル破りは品質を確実に落とす元凶であり、
戦い続けなければならない。

 

しかしマニュアルとは、品質を保つ「道具」であり「手段」でしかない。
私たちの「目的」は、
車がきれいになることでお客様に喜んでいただき、感動していただくことだろう。
それによって初めて私たちの喜びも造り上げられる。

 

マニュアルとは一つの指針であり、
自分のために外すことはいけないが、
マニュアルどおりにやっていれば良いわけではない。
「目的」であるお客様の満足であり感動を作り上げるために、
その目的を実現するための行動と会話をすべきだ。
それは本気でお客様のことを考えることなしでは、実現できない。

 

実に難しいことでもあり、
本気でお客様のことを考えることさえできれば、意外に簡単なことでもある。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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