谷 好通コラム

2012年06月25日(月曜日)

きれいさっぱりなくなって。シンメトリー

仕事を始めて、初めて新品の机を買ってもらいました。

 

今まで使っていた私の机は、
16年前に整理されてしまったある会社の社長が、
リサイクルショップで買った机を、
その会社を整理する時に私が持ってきたものだったので、
たぶん、造られてから30年くらいは経っているスチール机でした。

 

事務机なんて、何十年経った物でも、
壊れていない限り何の不便もなかったので
私自身は苦でも何でもなかったのですが、
むしろ、机の中とか上にたまったものを一掃するのに、
いっそ机を新品にしたほうが早いと思ったので、机を買うことにしたのです。

 

その新しい机が今日来て入れ替えたのですが、
一掃すべき机の引き出しの中のもの、上に積もっていた物を、
総務の事務員さんと一緒に引っ張り出して整理をし始めたのですが、
「これはとって置かねば」と思ったものがほぼ無いことに感心した。
ある程度の予想はしていたが、99%は「捨ててください。」で、
残ったものはごくわずか。
ほとんど何もなくなってしまったが、
私は何かをやるにも、ほとんどPCだけでやっているので、
仕事をするのに困ることはまずないだろう。
何かの記念にいただいたものでも、とって置く必要のあるものは意外と少なく、
これを機会にほぼすべてを処分してしまった。

 

キレイさっぱり何もなくなってしまったと言ってもいい。

 

机の中や上に貯まっていた物は、
書類でも、冊子でも、手元に届いたその時点では、捨てづらいものだったが、
それを机の上にいったん置くと、
次に届いたものがその上に乗って、前の物が見えなくなり、
その上にその次に届いたものが乗って、机の中あるいは中にどんどん積もり、
積もり積もって、それが何であったのか分からない山となる。
今日捨てたのはその何だが分からない山であって、
下に積もって埋まっていたものを見ても、
なぜそれがとって置いてあったのか、さっぱり分からない物がほとんどだった。

 

しかしその中には、いただいた手紙で、
返事を書かなくてはと思ってとって置いたのだけれど、
返事を書かぬまま時間が経って、
いまさらその手紙への返事を書けなくなったものもあり、
わが手紙不精を恥じ入ることもあった。
肉筆の手紙は心にしみるもので、
自分も書かなくてはと思っていても、
ついPCのメールばかりの現状に、大切なものを亡くしているような気もした。

 

いずれにしても、机の中、上にあった物はほとんどなくなってしまった。

 

同じようなことがあるのではないだろうか。
特に私のように60年余長く生きている者にとって、
その人生の中で残っている物は、ほとんどの物が、
いまだに在るだけで、
なければならない物は、実はほんの一部でしかないのではないだろうか。
そう言えば、
私の部屋には色々なものがゴチャゴチャあるが、
使っている物は「ベッド」とたまに少しの時間だけ点けるだけのテレビ。
そう言えば、窓のカーテンを開けて外の景色を見たこともしばらくない。
居間でテレビを見ながら食事をして、
PCをしこたまやって、部屋に帰り、本を読みながら眠ってしまうだけ。
少なくとも、私の部屋にある数百冊ある本も、オーディオも、
机も、椅子も、スタンドランプも、いろいろな雑貨も、
捨てるその時にもったいないと思うだけで、
無ければ無いで何の不自由も無いだろう。
どこかでふんぎらないとズット在り続けるのだろう。何の意味も無く。

 

人生においてもそうなのかもしれない。
何十年も経過する時間の中で発生した山ほどの出来事で、
複雑に絡まった”しがらみ”や、”こだわり”で
身動きが出来なくなっている部分があって、
それはどうしようもないことであるように思っているのは、
自分の思い込みだけであり、
実は、とっととこだわりを捨てても何も困らず、
誰にも迷惑がかかるものではないものが多いのではないか。
そう割り切って捨ててしまうと、
意外と残るものは少なく、
はるかにシンプルなすっきりした人生が送れるのかもしれない。

 

私の机の中と上からほぼすべてがなくなり、
新しい机の中はほぼ空っぽ、上はきれいさっぱり。
おまけに部屋にあった物もおおよそ無くなって、すっきりした。

 

 

ずっと机の上に在るダルマ。

 

 

大切なものと、在るだけのものと、
なくなっても困らないものと、
在るが故にこだわりから抜けられないものがあって、
そこから大切なものを抜き出して、
簡潔にすると、
シンプルで分かりやすい対称的な人生を送れるのかもしれない。

 

シンメトリー

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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