谷 好通コラム

2013年03月19日(火曜日)

3.19.花粉のシミの取り方・続報

花粉が塗装に着いて、
花粉が割れると中から「ペクチン」という物質が出て、
塗装に「シミ」のようなものを作ります。
これは洗車では取れないし、爆白ONEでも取れません。

 

これは「熱」「湯」によって取れることが判っています。
今年の三月号1面に載っています。
http://www.keepercoating.jp/corp/keepertimes/index.html

 

 

花粉が「シミ状」の汚い跡を作るメカニズムは、非常に変わっています。
花粉から出た「ペクチン」が塗装にベタベタと着いて、
しつこい汚れになって塗装の上から取れないとイメージしがちですが、
まったく違います。

 

ペクチンは塗装に着くと、塗装の中に入っていきます。
しかも塗装の中に入って、塗装の組織を内側から引っ張っているようなのです。

 

実験で不思議な光景を見ました。
採集してきた花粉を塗装の上でつぶしてペクチンを出し、
実験的に塗装にシミを造ってみました。
そして表面の汚れを洗い流して顕微鏡で見たら、
塗装の表面に異物は何も写っていず、
つまり、汚れはすっかり取れているのですが、
ペクチンが着いていた後の塗装部分が、凹状に陥没していたのです。
まるで月面のクレーターのようです。
凹状にへこんだ部分の縁がシミ状に見えていたのです。
塗装の上に何か汚れがこびりついて取れないのではありませんでした。

 

※花粉のシミの顕微鏡写真

 

 

花粉のシミがお湯で取れることは知っていましたので、
その部分へ、お湯の代わりにヘアードライヤーで熱風を当てて暖めました。
塗装の表面温度を測りながら熱風を当て続け、顕微鏡写真を撮り続けました。
お湯では、お湯が邪魔になって撮影できなかったので、熱風を使ったのです。

 

塗装表面の温度が高くなるにつれて、シミの様子に変化が現れました。
陥没しているクレーターの底がムクムクと盛り上がってきたのです。

 

 

そして十分に温度が上がった状態になると、
暖めただけなのに、凸凹だった表面が平らになってしまったのです。
磨いても何も触っていません。熱くしただけです。
70℃前後で、キレイになくなります。

 

 

これはどう見ても、
塗装の上についていたものが取れたという場面ではありません。
内側から何かに引っ張られて凸凹になっていた表面が、
引っ張っているものが熱で壊れて、引っ張る力が無くなったという絵です。
犯人は「ペクチン」でしょう。
ペクチンが塗装の中に浸透して、
塗装の中で組織を収縮させる形で引っ張っていると考えるべきです。

 

もう一つ「花粉」については変わった経験をしています。
何年か前、滋賀県のお客様が乗っていらっしゃるBMWに、
ミネラルが固着して着いたシミとは違う感じの、頑固なシミかついたと、
相談を受け、ミネラルの固着したシミと同じように、
コンパウンドとポリッシャーでシミを削り落としました。
その場ではまったくシミは残っていないキレイな状態に磨けたので、
お客様も大変満足をされたのです。
しかし一週間後、きれいに削り取れたはずのシミがまた、
研磨する前と同じように大量に着いたと連絡があって、驚きました。
通常ならば、
一週間の間にまた塗装の上に何かが大量に乗ってシミを作った。
と考えがちですが、
そのお客様は、用心の為に、約一週間ほぼ密閉された車庫に入れていたのです。
ほとんど乗ってもいなかったそうです。
私達は、車庫の中で、
また、シミだらけの状態に戻ってしまったBMWを目の前に唖然としました。

 

そこでBMWジャパンに問いあわせをしました。
聞くは一時の恥です。
そうしたら意外な答え。
「そのシミは、いくら磨いても、また出てきます。」
「でも、夏まで放っておくと自然に消えます。」
まさかの回答に、我々は今までの常識を無視して考えざるを得ませんでした。
よくよく考えて、実験もしてみて、
ペクチンが塗装の中に浸透して、
塗装の中で組織を収縮させる形で引っ張っていると考えると、
つじつまが合います。

 

つまり、ペクチンが浸透し内部から塗装を収縮させて出来た凹状のシミは、
コンパウンドとホリッシャーでの研磨で、消したつもりでも、
それは凹状の壁の部分を滑らかにしたことによって
消えたように見えたとしても、
塗装の内部にペクチンが残っていて、
時間が経った時に、収縮が進んで、またシミが出来たように見えたのでしょう。
それが「それはいくら磨いてもまた出てきます。」の言葉の通りであり、
夏になって暑い日に塗装表面が70℃前後になったら、
ペクチンが分解されて
「でも、夏まで放っておくと自然に消えます。」の言葉の通りになります。

 

その場で花粉のシミを消すには、
70℃を越すお湯 (カップラーメンを作るぐらいの熱いお湯) で
十分に塗装面が70℃前後になるくらいに熱くする必要があります。
ボディが冷たい場合は、
お湯を掛けてもすぐに冷めてしまうケースがありますが、
根気良く、何度もお湯を掛けて塗装の温度を時間をかけて熱くします。

 

※花粉特有のシミがついている塗装面

 

 

※熱いお湯を掛けた後、シミがキレイになくなっている。

 

 

中途半端なお湯では、うっすらとシミが残ります。
それでも、それをポリッシャーとコンパウンドで研磨すれば、
とりあえずキレイになって、
シミが落ちたように見えますが、
塗装内部にペクチンが残っていないとは限りません。
むしろ残っていると考えるべきでしょう。
一週間とか、かなりの時間をかけて収縮が進んで、
また、シミ状になる可能性が大です。

 

花粉のシミをその場で落とすには、
70℃、80℃の十分に熱いお湯で塗装を熱くする必要があります。
お湯でシミを溶かすのではありません。
塗装を熱くするのが目的でお湯を掛けます。
ですが、車体に掛けてもお湯の温度はすぐに下がるので、
根気良く、お湯を使い、確実に塗装の温度を上げることが必要です。
ドライヤーを使う方法もありますが、
ドライヤーは塗装を熱くし過ぎて、傷めてしまう可能性があります。
根気良く熱いお湯を掛け続けて、
塗装内に入り込んだぺクチンを破壊する事をお勧めします。
この作業には時間がかかることがありますので、
「お客様にお時間を頂く」ことも必要かと思います

 

コンパウンドとポリッシャーで消すと、再発の可能性が大です。
やはり、根気良く熱いお湯で消しきることです。

 

弊社店舗でも、すでにこの方法で何台か除去しております。
特に、クリスタルキーパー、ダイヤモンドキーパー施工車は
あっさり取れ、さらにお客様にも立ち会って頂くと、
「コーティングしていて良かった」と大変喜ばれます。

 

以上、添付しましたキーパータイムス4月号、1面、
「花粉のシミの取り方」に合わせて、続報として書かせていただきました。

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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