谷 好通コラム

2022年07月09日(土曜日)

07.09.人には「やらせる側」と「やらせられる側」の二種類があるのか

起業した人が、汗水たらして頑張って会社が成長してきたら、

「部下を信頼して任せているから」と、

もう自分は現場に入らず、キレイな格好して、

「つきあい」とか「接待」とか言って、

客先とか友人と飲み食いに歩き、昼間っからゴルフ三昧で

現場での実作業をやらなくなってしまう人が多い。

その奥さんも、起業の時は夫と共に働いていても

人が増えてくると金勘定と銀行通いだけが仕事になってしまったり、

自宅から出なくなって、

習い事とかお友達とのお付き合いだけの優雅な奥様になる方がいる。

 

私はゴルフはやったことがないので分からないが、

一緒にプレーする相手が仕事に関係する人であっても、

ゴルフが仕事になることはあり得ないと思う。あくまでも遊びは遊び。

夜の会食でも同じで、やはり遊びは遊びであって、仕事の延長ではない。

少なくとも、

起業して発展途上の会社で、社長が現場を離れて、

仕事にかこつけて、

自分が遊んでいることを正当化している人に成功している人は一人もいない。

少なくとも、私は一人も知らない。

 

起業家は元々、どこかの会社に属したサラリーマンであった場合が多いが、

その場合、自分が「使われる側」「仕事をやらされる側」なので、

その会社のオーナーであったり社長である「やらせる(使う)側」の人に、

やる仕事を制限されて、面白くないこともあり不満を持つこともあるだろうし、

その仕事から得られる利益を、使う側に搾取されて、

自分は損をしていると不平を感じて、「使う側になろう。」と思い起業する人や、

得をする側になろうと思って起業を決意する人も多い。

あるいは、そのこと自体を理不尽と感じて独立する人もいる。

 

自分の今いる立場が「使われる側・やらされる側」なので、

それで不自由であり、

それで金が儲からないのだから、

自分は反対に「使う側・やられる側」になろうと思って起業する人は、

起業したその会社がうまく行って、社員も増え、

お金に不自由しなくなると、

「部下を信頼して任せているから」と、

もう自分は現場に入らず、キレイな格好して、

「つきあい」とか「接待」とか言って、

客先とか友人と飲み食いに歩き、昼間っからゴルフ三昧で

現場での実作業をやらなくなってしまう人が多い。(最初の文章のコピー?)

 

しかし、そうなると、自分が「使う側」になったのだから、

会社の他の人、社員はすべて「使われる側」「やらされる側」になってしまい、

会社、とりわけ「使う側」に、不平不満を感じるのが当たり前になってしまう。

「使う側」と「使われる側」の利益と目的が相反する事になってしまう。

当然、お客様との利益とも反するような経営をすることになって、

そんな会社が伸びる訳がない。

早々に潰れて無くなってしまう場合がほとんどだ。

起業して何年か後、急に羽振りが良くなる人の会社は、ほとんど続かない。

社長が現場から離れて仕事をしなくなったらいずれ100%潰れる。

 

「使われる側」が嫌で、

「使う側」になろう。と考え、起業した人は、

必ず行き詰る。私もそうだった。

 

私の場合は、起業のきっかけがあったのは40年以上も昔のことだ。

当時、自分が「使われる側」にいるという意識はまるでなく、

仕事が面白くて、大好きで、成績も良く、満たされた毎日だった。

いずれは管理職になって現場を外れ、

痛い左足にはそろそろ負担になってきた現場から解放されたいと思っていた。

 

そんなころのある年末、

私がいた店舗(ガソリンスタンド)では、

年末恒例の「洗車」の列が出来ていた。

当時はまだセルフのドライブスルーは無かったので、

洗車のお客様たちは、私達スタッフに車を預けて、

私達が洗車機を使って順番に洗車をするのを待っていた。

年末その数10~20人もいて、洗う方も大変だが、待つ方も大変だった。

そんな大忙しの中、

会社の経営者の息子(社員になっていた)が車に乗って来た。

私はそれを忙しい最中に対する慰労の意味の訪問だと思ったのだが、

彼が来るなり言ったことは

「僕の車の洗車、こそっと先にやってよ。」だった。

この忙しい時に、

たくさんのお客様を待たせて一生懸命、

みんなクタクタになって働いている時に、

「僕の車の洗車、こそっと先にやってよ。」には、頭に血がのぼって、

何を言ったか覚えていないが、強い言葉で怒鳴って、追い返した。

 

その事自体は、息子も「まずい」と思ったのか、全く問題にならなかったが、

私は、彼がはっきりと「使う側」にいて、

私は「使われる側」で、

いずれは「使う側」にいる彼が会社の経営を継いで、

私は、使う側である彼の為に働くことになることが思い浮かばれて、

それは絶対に出来ない、嫌だと思って、年が明けて直に辞表を出した。

 

そのあと、二社に入社して働いたが、

どの会社にも不動の「使う側」がいて、

「使われる側」の私は、

今の社長だけでなく次の社長(子息)にも、

「使われる側」として、「使う側」のその人の価値観で、

自分の価値観を押し殺して、或いは「使う側に」従属して働き続けるのか。

それは出来ないなと思って、起業する方向に力を傾けた。

 

だから私は自分が「使われる側」から「使う側」になろうと思った訳ではなく、

「使われる側」であり続けることを止めただけだった。

 

しかし、実際にガソリンスタンド経営者として起業して、

私の店には私と連れ合いと、

もう一人か二人、誰かがいたが、

その誰かは、いつも落ち着くことなくすぐ辞めて、次を入れてもまだ辞めて、

その店舗には、二年間ぐらいはずっと3人~4人のままだった。

その頃の私は完全に「使う側」になっていて、

よく怒鳴っていたし、いつも高圧的だった、

特に私の連れ合いには、

家族だからと言って甘くしたのでは他の者に示しが着かないと、

特に厳しくしていたような気がする。

 

そんなある日、連れ合いが「おなかがすごく痛い。」というので、

病院に行かせたのだが、病院から帰ってきて

先生に「すぐに入院しなさい。なるべく早く手術をします。」

と言われたと、私に告げた。

そのまま彼女は入院した。

それを聞いた時、私は心底から後悔して、店の真ん中に立ち尽くして泣いた。

 

あれほど嫌った「使う側」に、

起業したら自分がなっていて、

「使われる側」に連れ合いを置いて、

気遣いなく、容赦なく使ったのだった。

それで、大切な家族をすぐに入院させなければならない程傷つけてしまった。

 

私は「使う側」として、

主人が使用人を使う事が当然のように、無慈悲に、共感も持たずに使った。

それは私が起業する時に最も嫌ったことだったはずなのに、

起業して自分が社長になったとたんに「使う側」なってしまい、

自分以外を「使われる側」に置いてしまった。

しかし、家族が、自らが傷つくことによって、

私に大きな後悔を持って、その愚かさを教えてくれた。

 

この事があってから、多分、私の中の何かが大きく変わったのだろう。

みんなに対しての態度も言葉も根本的に変わったのではないだろうか、

あれ以来、社員が辞めなくなって、

みるみる社員が増え、

次の店舗を立ち上げていくうちに、コーティングに出会って今に至っている。

 

起業してからしばらく、私は「使う側」になってしまい行き詰っていたが、

使われる側になった連れ合いが自ら傷ついて、私にその愚かさを教えてくれた。

 

今は、従業員が800名ぐらいになったが、

遥か昔、夫婦二人から社員が中々増えず、

家内営業から会社に変われなかった頃の、会社の育ち始めの頃のことです。

 

 

人には、もともと「使う側」と「使われる側」の区別があるのか。

そんなものがある訳がない。考えるまでもない。

生まれつきの「使う側」の人間、「使われる側」の人間なんてある訳がない。

男女平等と全く一緒だ。

余りにも単純で、話にならない。

学歴だってそうだ、高学歴が「使う側」で、

低学歴の者が「使われる側」なんて、まったくもって嘘っぱちだ。

 

あるとしたら、

社長とか、部長とか、課長とか、店長たちの役職者は、

それぞれの段階にあって、

仕事の結果が優秀であったか、人望があるので昇進し、

その職域においての「リーダー」として、

所属の仲間を引っ張って行く役目と、

職域(例えば店舗)をよりよく改善して、進化、成長させていく事。

そのことによって会社全体(みんなが)が成長し、発展していくのだろう。

 

決して、その職域(例えば店舗)において、

「使う側」になった訳ではない。それを勘違いすると

賀来社長が彼のブログの中で言っていた愚かな「バックヤード店長」となる。

“長”を貰ったとたんに、

自分は働かなくなって、自分は楽をして、

他の者達に働かせることが、自分の仕事だと勘違いする者がいる。

店長になったとたん、

「使う側」、「やらせる側」になったと勘違いする者は、

立場を下げるしか、その勘違いを修正する方法がない。

 

 

「蚊」ではありません。

「青トンボ(郡上の人曰く)」だそうです。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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