2025年11月06日(木曜日)
11.06. 常連客が顔を利かしている店は、いつの間にか滅びる。
昔、家の近くに小さな寿司屋さんがあって、
美味しくって、まぁまぁ安かったので、よく行っていました。
その寿司屋さんには、ほとんど毎日通う常連客がいて、
いつもカウンターの一番隅っこでおとなしくお酒をちびちび飲んでいました。
大きな声で騒ぐ訳でもなく、迷惑をかけるような事も一切なく、
田舎の町角のお地蔵さんのように、
いつも皆をニコニコ見守ってくれているような穏やかな存在でした。
亭主も、特にその常連さんを特別扱いする訳でもなく、
客が多くて忙しい時は、その常連さんが頼んだ品を後回しにするぐらいでした。
でも時々、亭主は常連さんに「忙しいんで、ごめんな。」とか、
「これ、つまんどって。」など、
ちょっとした気配りを常に常連さんにしていました。
その仕草と、何気ない声掛けが、
常連さんには心地良かったのでしょう。
私も割とよく行きましたが、それでもせいぜい月に二度で、
セミ常連と言えるかどうかの程度で、いわゆる一般客でした。
その小さな寿司屋は、閑古鳥が鳴くほど暇ではありませんでしたが
お客様でいっぱいになる程には混んでいません。
そして常にカウンターの一番隅っこにはあの常連さんが座っていました。
しかし、ふと気が付いたのです。
亭主は、常連さんをいわゆる身内扱いしていて、
私達一般客はいわゆる客扱い。極端に言えばよそ者扱い。
そんな疎外感を、何かの拍子に感じて、
何となく遠のいてしまいました。
他の客もそんなことを思ったのかどうかわかりませんが、
客がいなくなって、その小さな寿司屋さんは店を閉めてしまいました。
たぶん、あの常連さんは、
客が減れば減るほど「せめて俺が行ってやらなくっちゃ」と通ったのでしょう。
それが余計に店じまいを早くしてしまったのかもしれません。
良くも悪くも一定のお客様を特別扱いすると、
他のお客様が疎外感を持ってしまうのは事実です。
別にエコヒイキをしているつもりはなくても、
普通の他のお客様は疎外感を持って、その店には行かないようになります。
私達のKeePer LABOの店でも、
店舗のスタッフの技術や人柄などを気に入っていただいて、
ご指名をいただく場合があります。
それはそれで大変ありがたいのですが、
基本的に、そういったご指名をいただいて、
そのお客様に指名されたスタッフを充てる事をお断りしています。
決まったお客様に対して決まったスタッフが固定してしまうと、
いい意味でも悪い意味でも慣れ、慣れ合いが生まれて、
他のお客様とは違ったサービスが始まってしまい、
他のお客様が不公平を感じるようになります。
すると、多くの普通のお客様がその店に来ることがイヤになって、
そうなると、
ビックリするほど、たちまちお客様が減ってしまいます。
だから、良かれと思って贔屓にして決まったスタッフをご指名いただいても、
大変心苦しいのですが、ご指名をお受け出来ない事をお詫びしています。
心情的にも苦しいのですが、そのようにさせていただいています。
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