2016年10月15日(土曜日)
10.15.落ちるべくして落ちていく店
今日の午前中、珍しく事務所に誰もいなくて、
スタジオに行ったら三人のスタッフがいたので、
デザイナーのデスクを借りてひと仕事をしていたら、
座り心地が良すぎて、
仕事が終わってから一時間余り居眠りをしてしまいました。
そのあと、三人を誘って昼ご飯を食べに行ったのですが、
誰かが行こうと言った定食屋に行く道の途中で、
ずっと昔からあったはずなのに、
初めて気付いたものすごく地味な喫茶店に興味が湧いて、
たぶん失敗だろうと思いながらも、なぜ、こんなに地味なのか、
なぜ、こんなに繁盛していないのか。
なぜ、どこが、あまりにもダメなのか、かえって興味が湧いて、
三人と一緒に入って見ました。
何十年か前までは、これが普通の喫茶店だったのでしょう。
四人掛けとしてはギリギリの大きさのテーブルとベンチシートは、
四人が揃って食事をするにはギリギリすぎて落ち着きません。
テーブルは十卓ぐらいありますが、
半数のテーブルとカウンターには、
食器や何かのビンなどが並べられていて客が使える状態ではなく、
不潔ではないのですが超雑然です。
私はカレーと赤だしを注文し、
三人は三人ともハンバーグ定食を注文しました。
カウンターの中では60歳前後のご主人が、忙しそうに何かを造っていますが、
客は、私達四人と、一人と、もう二人の三組であり、いわゆるガラガラです。
ご主人は忙しそうに働いているのですが、
ちっとも仕事がはかどっていない感じです。
例えば、カウンターの上に定食のどんぶりに飯をよそって並べるのに、
1杯について二十数秒かかっていました。(思わず計ってしまった。)
ご飯をドンブリに入れるだけで1杯につき二十数秒は芸術的な遅さです。
動作がのろいのではなく、
どんぶり入れた飯をしゃもじで十回くらいなでたりして、
いちいち余計な事をして、一つの動作がすさまじく遅くなっています。
最初の私のカレーが出るまでには20分近くかかりました。
明らかにレトルトの温めるだけのカレーです。
それが冷めてしまっているのは、なぜだか不思議です。
温めてからわざわざ冷まして出したのでしょうか。
だから20分もかかったのでしょうか。
しかも甘口なのでしょうか、まったく辛くありません。
ウースターソースをかけ、こしょうを振っても辛くありません。
私が鈍いのかもしれませんが、味もほぼありません。
よく分らないカレーを私が食べ始めてしばらくしてから、
ハンバーグ定食が三つ出てきました。
もう30分近く経っています。
一目見て冷凍食品の製品を買ってきたと判るハンバーグですが、
ひとかけらだけもらって食べたのですが、
妙に後味が苦くて、
美味しくないというより、不思議な変な味で、不気味なハンバーグでした。
四人とも黙々と食べ、
たぶん三人は、私におごってもらうので無理して食べたのでしょうか。
食べ終わって、帰ろうかと立ち上がろうとしたら、
「定食のコーヒーが出ますが。」と言うので、
デザイナーの一條君が、
「まだ造ってないようでしたら、けっこうです。」
と言ったら、
「まだです。」というので、もう遅いので帰りました。
この喫茶店は、感じが悪くない、親切な良い感じの喫茶店でした。
ただ、自分はお客の席に多人数で座ってことがないので
席の狭さに気が付かず、
満席になることがないので、
余っている席のテーブルと座る人がいないカウンターは、
食器や、食材、飲み物のビンなどの置き場所になって、
でも、いつも置いてあると
自分達にはだらしないとは見えず、
それが普通の風景になっているだけでしょう。
いつも忙しくないので段取りが悪く、
無駄な手数が多く、
要領が悪いので、
自分で材料から造っていては料理が遅くなってしまうからなんでしょうか、
レトルトを使い、冷凍食品を使って、
でも、冷凍期間が長すぎるのでしょうか、変な味に変わっていて、
でも出す料理は自分では食べたことがないのか、その変な味に気付かず、
でも、60歳代のご夫婦は感じが良いので、文句を言う人もいず、
でも、私達のような少ない新しい客が、
また来たいとは思わない残念な店になっています。
当然、寂れた店になったのには、それなりの理由はあるのでしょう。
しかし、言えることは、
こうなっているのは、すべて自分たちの都合からです。
お店は、自分たちの都合ばかりを入れて行けば、じきに落ちて行きます。
ごく自然に自分達の都合を入れて行けば、
店というものは自然に落ちるべくして落ちていくのでしょうか。
こういう店は、喫茶店でなくてもよくあります。
落ちるべくして落ちていく店は、私たちの店でも、あります。