谷 好通コラム

2016年07月21日(木曜日)

7.21.雨が降っているのに濡れていない自分の幸せ

雨が降っている時に、
家の中に居たりすると、
雨が降っているのに雨に濡れない自分を、つくづく幸せだと感じます。
動物ならば、雨が降れば、木下や物の影で雨宿りをするのが精いっぱいで、
そういうものが無ければ、
雨に濡れるにまかせて、じっと耐えるしかありません。
そう思うと、
雨が降っても、家の中で、
暖かく乾いている自分がつくづく幸せだと思います。

 

車に乗っている時ならば、
車の外のものが叩きつける雨に濡れているのに、
目の前のウィンドガラスがワイパーで視界まで確保されながら、
まったく濡れずに暖かい自分が、
何か特別にぜいたくをしているような豊かで幸せな気持ちになります。

 

しかし、その幸せ感は、
過去、特に子供の頃、雨にびしょ濡れになって
寒くつらい目に合ったことがあるからこそ、
雨が降っているのに濡れないことに幸せを感じるものでしょう。

 

私が中学生の頃、
同級生の悪がきの友達と、
南区の実家から20kmくらい離れた日光川に、
自転車に乗ってハゼ釣りに行った時、
潮が悪くてハゼはぜんぜん釣れず、キスも釣れず
昼ご飯は菓子パン一つだけで、腹ペコで
おまけに、昼過ぎには、しとしとと雨が降ってきて、
その内にびしょ濡れになって、
寒くて、ガタガタ震えながら、
自転車に乗って友達と帰ってきたことがあります。

 

それは辛く、空腹で、あったかい握り飯がものすごく食べたいと思いました。
遠い所にまでハゼ釣りに行ったのに、一匹のハゼも持たず、惨めの極致でした。
なのに、そんな時に限って、
途中で、一緒に行った友達の自転車のタイヤがパンクしたのです。
友達は、自転車に乗れず、パンクした自転車を押して歩くしかありません。
私の自転車は無事で乗れますが、雨の中、友達に付き合って歩くしかありません。
友達に怒りあたる訳にもいかず、
でも、寒くて、腹が減って、疲れて、
根気が続かなかった私は、歩く友達をほかって
1人だけ自転車に乗って走って帰ってきてしまいました。
裏切りの後ろめたさにさいなまれながら。

 

私の原体験です。
だから、家の中で、傘の下で、車の中で、
”濡れない”幸せを強く感じるようになったのかもしれません。

 

でもあの時、一番きつかったのは、
寒さでもなく、
空腹でもなく、
疲労でもなく、
友達を裏切った後ろめたさだったのでしょう。
今でも、その罪悪感をはっきりと胸の痛みを伴って思い出します。

ページのトップへ ページのトップへ

  • 最近の記事

  • プロフィール

    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

  • カレンダー

    2024年11月
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
  • リンク集

  • 過去の記事

  • RSS1.0

    [Login]

    (C) KeePer Giken. All rights reserved.