谷 好通コラム

2015年02月05日(木曜日)

02.04.「大」は「小」を兼ねないこともある。

スカイマークエアラインが、
民事更生法(?)の手続きをしたと、新聞に書いてありました。
いわゆる「倒産」です。

 

スカイマークエアラインは日本におけるLCC(格安航空会社)の草分けで、
ANA、JAL、の運賃の半額近い安さでスタートし、
当時は、特に若い子たちに圧倒的に受けました。
しかしすぐに、
何本かのスカイマークエアライン便の”前後のANA、JAL便”を、
ANA、JALがスカイマークエアラインの価格に合わせて”安くする”戦法でいじめ、
スカイマークエアラインは、たちまち経営が行き詰りました。
そこに激安ツアーで急成長していた旅行代理店HISが、経営権を取って、
HISの影響力を使ってか、ANAとのコードシェア路線を実現するなど、
経営を立て直していました。

 

スカイマークエアラインの機体はスタート当初は、
中型機のボーイング767だけでしたが、
成長するにつれてLCCの定番である小型機ボーイング-737が増えました。
路線も増え、日本唯一の格安航空会社として急成長し、
日本”第三位の航空会社”になったのです。

 

成長したスカイマークエアラインは、
もっと積極的な経営戦略を考えたのでしょう。
その頃まだ試験中であったエアバス社の二階建て超大型機”A380”を、
6機を総額約1,915億円で発注してしまったのです。
大型機ボーイング747ジャンボジェットをしのぐでかい飛行機です。

 

大型機は、席が埋まれば埋まるほど、乗客一人あたりのコストは下がります。
それに航空関係者にとって超大型機は”夢”です。

 

売り上げを増やす⇒乗客を増やす⇒輸送量を大幅に増やす⇒超大型機の調達
超大型機⇒輸送コスト単価を下げ、運賃を下げれば、いくらでも乗客は増える。
その根底には、
「安くすれば、いくらでも売れる。」の安売りの論理があったのでしょう。
それで6機のA380を予約注文したのは何年前のことだったでしょう。

 

ところが、二年前、
LLCの規制緩和があって、
ピーチエアライン、ジェットスター、エア・アジア・・・などなどの
LLC格安航空会社が一挙に増え、
スカイマークエアラインの運賃は、
別に特に安い運賃ではなくなってしまったのです。

 

安さだけで売っていた商売は、
“もっと安い”をぶつけられるとひとたまりもありません。
安さのメリットは、安さだけであって、
もっと安くする者が表われれば、
よりもっと安くするしか対抗手段がありません。

 

スカイマークエアラインは乗客数も激減して、
経営が厳しくなったのですが、
そうなるとすでに予約注文してあるA380が負担になります。
それを買い取って運行するなんて力は、とうに無くなっています。
だから、仕方なくキャンセルをしようとしたのですが、
発注した時の契約で、約710億円のキャンセル料を払わなくてはなりません。
それでも、スカイマークエアライン側は
話し合いで何とかなるとタカをくくっていたかもしれませんが、
エアバス側はそんな交渉をまったく受け付けずキャンセル料を取ります。

 

それで、スカイマークエアラインの経営は行き詰まり、倒産です。

 

しかし、たとえば、
予約注文していたのが超大型のA380ではなく、
LCCが多く使うエアバスの小型機A320とかA319、A318、
あるいはボーイング737-800などならば、
少しディスカウントすれば、世界中にいっぱいあるLCCが、
取り合いするほど、すぐに売れます。
しかし
超大型機A380ともなると、
国を代表する航空会社、
たとえばエーアフランスとか、ルフトハンザ、シンガポールエアラインとか、
巨大な航空会社しか買い手はいません。
しかしそういう会社は、すでに長期に計画立てた調達予定があるし、
そういう会社は、飛行機を3クラスの独自な自社仕様にしており、
LCC仕様になっているA380は、とても使い物にならず、
つまり、キャンセルしたA380の買い手が全くいなくて、
エアバスもキャンセル料を取らざるを得ないのです。

 

これが超大型機でなくて、小型機だったら、
スカイマークエアラインは倒産せずに済んだはずなのです。

 

超大型機は、席が埋まれば単価コストが低くなるのは解かりますが、
他のLCCが、なぜ、みんな小型機ばかりなのか。
それば事業的リスクが少ないからという理由も大きかったはずです。

 

それでも、スカイマークエアラインがA380を発注したのは、
海外事業への進出計画とか、
色々あるのでしょうが、
やっぱり、
飛行機にかかわる者はでかい飛行機が好きで、
理性では小型機にすべきことが判っていても、
超大型のA380を発注してしまったのでしょう。

 

 

少なくとも、飛行機は、
数多くの航空会社の失敗例を挙げることなく、
断じて大は小を兼ねないことは、明白なのです。

 

今朝、中部空港で見た小型機ポーイング737のスカイマークエアライン。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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