谷 好通コラム

2014年06月10日(火曜日)

6.10.相手の立場に立っても、タフな自分では、意味がない?

商売とは相手の気持ちになれたものが勝つ。と言います。
商売とは、相手からお金をいただくわけなので、
相手がお金という代償を払いたくなるような「付加価値」を、
それが物の形であれ、サービスという形であれ、
いかに、こちらが相手に対して提供できるかどうかに尽きます。
もっと短く言うと、
「商売とは、相手が欲しい価値を提供すること。」

 

だから、提供する側としてのこちら側は、
欲しいと思ってもらう側、つまりお客様側が、
何を、どのように欲しいかを考えるのだが、
何を、どのように欲しいかを”思う”のはお客様側なので、
こちら側の何を売りたいか、という「こちら側の都合」も、
お客様にどう感じていただきたいか、という「こちら側の想い」も、
向こう側のお客様には一切関係なく、
こちら側が売りたい物でも、お客様は欲しくなければ買わないし、
こちら側の想いがどうであろうと、お客様は感じたいように感じる。

 

こちら側の都合も、想いもまったく関係なく、
お客様は、欲しいものを買い、
お客様は、感じたいように感じる。

 

お客様は自由なのだから、それが当然なのです。

 

とすると、販売をする側であり、
提供する側である私達は、
お客様が何を欲しがり、どう感じたいのかを知る必要があります。
アンケートなどで調べるのも一つの方法ですが、
非常に時間と費用がかかるし、
アンケートは質問の設定の仕方で、”答”がいかようにも変わってしまうので、
解釈が非常に難しいのです。

 

そこでよく言うのは、
「相手の立場に立って考えよ。」です。
相手の立場に立って物事を考えるのは、
社会生活を円滑に過ごす為の大切な要素ですし、
良き家庭を築くために必要な、やさしい心の素です。

 

私もみんなと同じように、
それでいいと思っていましたが、
しかし、それだけではダメなこともあるのだということに気づかされました。

 

自分が相手の立場に立ったとして考えただけでは、
考えたり、感じたりするのは、あくまでも「自分」であって、
自分の感じ方でしかないということです。
「相手の立場に立って考える。」
だけではなく、
「相手のその立場で、相手の気持ちになって考える。」が正解なのでしょう。
ややこしい話ですが、そういうことです。

 

会社のスタッフM君が、
社外の仕事のパートナーに対してメールを発信する前に、
書いた文章を送ってくれたので確認をしたのですが、
私がそれを読むと、相手に対して強圧的な感じの文章に読めたので、
「この書き方は失礼だろ。自分がこう言われたら怒っちゃうよ。」
と、伝えました。
すると、
それを書いたM君が、
すごく困ったように、言ってきました。
「すいません。
困ったことに、私が相手の立場だったら、
私は、こういう言い方をされても、
困ったことに、受け入れることが出来てしまうのですよ。
このような言葉を、今までの私の体験として
私は強圧的と感じないのです。
だから、失礼な文章を書いてしまうクセが直らないのかもしれませんね。」

 

M君は実直な男で、信頼に足る人間です。
しかし手紙を書くと、
妙に強圧的な、上から物を言っているような文章を書きます。

 

M君は、学校が硬派で有名なTN大学であり、
それもバリバリの体育会系の部活で国体まで行っています。
たぶん、そんな頃の彼の日常は
「上級生は神様」みたいな、
一方的な上意下達の世界を暮らしてきていて、
多少の強圧的な言葉は、
タフなM君には
普通の言葉でしかなかったのではないでしょうか。
そんな経験が、
仕事のしかも社外のパートナーに対するメールの文章でも、
私から見ると「これはマズイだろう。」みたいなことなのかもしれません。

 

つまり、M君の持っている体験が普通とは違ったものであったので、
タフな彼が普通だと感じている言葉が、
他から見るとあまり普通ではないように感じる。
なんて変な”現象”を作り出しているのかもしれません。
困ったものです。

 

「相手の立場に立って考えよ。」は、
ある場合には、
「相手に立場に、タフな”自分”が立っても、相手の気持ちは伝わってこない。」
だから、
「相手の立場に、相手の気持ちになって立つ。」が必要なようです。

 

これはなかなか出来ないことで、
相手の痛みは、自分の痛みにもなって初めて分かるものです。
ほんの数ヶ月前までは、
人に「腰が痛い。」と言われても、言葉で同情するだけで、
その痛みを痛みとしてはまったく感じていませんでした。
だけど、自分の腰も痛くなって見ると、やっと、
彼が言っていた「腰が痛い」が、痛みとして感じます。
同じように、
人の気持ちになることは、とても難しいことです。

 

だから、せめて、相手の立場に自分を置いてみて、
相手の立場にいる自分だったら、どう感じるのか。
せめて、ここぐらいまでは努力してみなければと思います。

 

硬派のタフなM君は、
奥さんに優しくしてもらう時間が、彼の人生の中で長くなるにつれて、
彼の「私は強圧的と感じないんです。」という変な困った部分も、
じんわりと解消されていくのでしょう。

 

札幌への日帰り出張の、帰りの飛行機の中で、タフな(にぶい?)M君

 

 

昼、最高に美味しかった丘珠空港近くの「豚丼」

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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