2012年09月25日(火曜日)
9.25.今乗っているスカイマークに何の不満も我慢もない
JALが先日、株式市場に再上場したことには複雑な思いがする。
毎月、北海道から愛知に会議の為に出張する者の経費節減に、
運賃50%割引きの株主優待券数枚がもらえる日本航空の株を
会社で買ったのは、数年前のことだった。
1株280円とかなり安くなっていた頃のこと。
あの頃でも、
日本航空の経営危機は話題にはなっていたが、
あるセミナーで著名な経済評論家が、
「日本航空は国策会社だから、国が潰すわけがない。
日航の株価は今が底値で、買って損はないだろう。」といっているのを聞いた。
その話を聞いたこともともかく、
株主優待券で出張経費が確実に浮くことを勘定に入れると、
これは日本航空株を絶対に買うべきと思って買ったのだが、
ご存知のとおり、見事にはずれて、1株280円がゼロになってしまい、
会社に損をさせてしまったわけだ。
もちろんあの経済評論家が悪いわけではない。
株はギャンブルなので、ただ、負けただけなのだろう。
それはともかく、
日本航空は倒産して、日本再生機構が再建を進めることになった。
カリスマ経営者で有名な京セラの創業者である稲盛さんがその責任者。
私は稲盛さんが何をどうやったのかは、ほとんど知識はないが、
結果として、わずか二年余り(?)で、
千億円単位の利益を出す優良会社に生まれ変わってしまった。
もちろん税金をあきれるほど使ったことも事実で、
株主はすべて大損をし、債権者にも多大な被害を与えて、
それまでの負の遺産をすべて帳消しにしての再建なので、
素直に喜ぶわけには行かないが、
稲盛さんのチームの手腕が見事であったことには違いないだろう。
日本航空の象徴でもあった巨人機、ボーイング747ジャンボ機は、
一機も残さずすべて売却してしまった。
大きなジャンボでも採算の取れる路線がいくつもあっただろうが、
「一機も残さず」に意味があったと思う。
機種をダウンサイズし、
かつ絞ることによって、
合理的なコストダウンをする事だけが目的ではなかった。
社員のマインドの部分で、
日本航空が特別な存在ではなく、
黒字経営が義務である普通の企業であることを、
社員全員に思い知らせるために、
JALの象徴たるジャンボを”無くしてしまう”ことが大きかったのではないか。
だから「1機残らず」であったのだったと思う。
パイロットは社員の中でも最も給料の高い職種で、
その中でも一番の大型機ジャンボのパイロットは給料が一番高く、
日本航空の全パイロットの中でも、
リーダー的な存在だっただろう。
日本航空は労働組合が特に強く、
高い給与水準と、退職後の多額の年金の会社負担が、
経営の大きな足かせになっていた。
だから、ジャンボを無くすと
社員の中でも一番給料が高く、
リーダー的な存在であるジャンボのパイロットは、実質上、職を失った。
この効果も大きかっただろう。
高額な「年金」も会社破綻で、一度リセットされた。
再建の中で、希望退職者、退職勧告、解雇で、
全社員数は、倒産時の2/3まで減った。
人数が2/3になっただけでなく、人件費全体を1/2にまで落とした。
半分だ。
ここが日本航空再建の鍵であった。
それでも日本航空の飛行機は、倒産前の「安全性」は1%も落としていない。
安全性は航空会社の生命線だ。
日本の厳しい航空行政が安全性を落とすことは絶対に許さない。
航空会社が消費者に提供する付加価値とは、
ある地点から、離れたある地点まで、安全に点移動、つまり運ぶことである。
「快適」も付加価値ではあるがそれは「点移動・運ぶ」に付随するもの。
付加価値の本体は「安全に運ぶ」ことである。
「日本の新幹線」が、南は九州鹿児島まで延び、北は青森、
日本海側も秋田、新潟、もうすぐ北陸まで伸びる。
飛行機の国内線需要は確実に減少するだろう。
旅客の絶対数が減れば、
空席が増えた大きなジャンボは、ただの無駄なコストの塊だろう。
日本の航空会社は、
かつてのように、ステータスの塊のような存在ではいられなくなっている。
会社”内”のシガラミで、
信じられないほど高い退職金やその後の年金、
パイロットを筆頭にした社員たちの高い所得、
その会社”内”の待遇を維持する為の会社の支出は、
消費者への提供付加価値の対価、つまり収入が低下しているのだから、
減らすべきなのは当然のことだ。
合理化と社員待遇の低下を実行する必要があるのに、
会社内のシガラミがそれを阻むのならば、
社員の集合体である会社を倒産させて、一旦、オールクリアするしかない。
日本航空は、ああするしかなかったのだろう。
会社内の都合からの倒産で、会社外の人に莫大な損害を与えたのに、
会社内の者が被害者のようなことを言うのは解せない。
すべてをオールクリアして、会社の構造を整理しなおしたら、
即、千億円単位の利益が出るとは、
倒産前がいったいどれほど放漫な経営であったのか。
消費者より、会社より、社内の人間の都合とシガラミを優先させるのは、
これを放漫経営の最たるものとせずに何を放漫といえようか。
私は、今、低価格航空会社のスカイマークエアラインに乗って、
中部空港から沖縄・那覇空港に飛んでいる。
機材はボーイング737-800、
747ジャンボの約1/3のキャパシティの機体である。
今日は気流が乱れているらしくよく揺れるが、
それはジャンボに乗ってもまったく同じ事で、何の心配もない。
ANAのある種のB737の小さすぎる小物入れの座席より、
このスカイマークエフラインの席の方がずっといい。
飲み物サービスがないが、ミネラルウォーターのペットボトルを持っている。
日本航空の子会社であるスカイマークエアラインは、
消費者に提供する付加価値において、なんの不足もない。
我慢すべき点も何もない。
あるとしたら、
日本航空の社員よりは給料が安いであろうスタッフのステータスか。
あるいは、ANAよりも、JALよりも安いスカイマークエアラインに乗るという、
乗る者のステータスか。
そんなものはどっちでもいいことだ。何の足しにもならぬこと。
私は中部空港からスカイマークエアラインで那覇空港へ
新卒高校生の面接会に同行する賀来常務は、
羽田空港からスカイマークエアライン機で那覇空港へ飛んでくる。
日本航空は破綻して、
すべての株主に大きな損を与え、
債権者の損と、多くの失業者を生んだ見返りに、
がんじがらめであった社内のシガラミ、政治家がらみの権益などから
一挙に開放され、優良企業として立ち直った。
でも、スカイマークエアラインや
ピーチエアなどの続出するLCC、格安航空会社との闘いがこれから始まる。
正規の料金で運航する日本航空と、
格安航空会社と割り切った料金で運行するスカイマークエアラインが、
同じ資本の中に、別の形で同居していることがいつまで続くのか。
歴史の中では、
子会社が親会社より巨大に成ってしまい、
子会社が親会社を飲み込んでしまった例はいくつもある。
今は、安全性において、
日本航空の方が、スカイマークエアラインよりも安全性が高い。という
「錯覚」が、消費者の中に消えずにあるが、
それが徐々に錯覚でしかないことに気がついてきた時、
日本航空の子会社であるスカイマークエアラインに、
日本航空は勝てるのであろうか。
今は大幅なコストダウンによって、
優良企業に生まれ変わることが出来たが、
これからは、身内のスカイマークエアラインとの闘いである。
夏休みが終わった平日にもかかわらず、
ほぼ満席に近い中部⇒那覇のスカイマークエアラインに乗って、
そんなことを考えた。
ちなみに、今日の私の中部⇒那覇の料金は12,000円である。
しかも、今乗っているスカイマークエアラインに、私は、何の不満も我慢もない。