2012年08月29日(水曜日)
貝割れ大根と安ウィスキーの噴水
今は生ビール1杯と焼酎の水割り2杯から4杯で
十分に気持ちが良く酔う。
何年か前まではもっと飲んだ。
20年とか30年くらい前までは、底抜けに飲んだ。
あのころは「酒は男の勲章、男は酒を飲んで何ぼだ。」くらいに思っていた。
大昔、私が20歳の時のこと、
酒を飲み始めたころで、
どれくらい酒を飲んだらどうなるのか、まったく分からなかった頃だ。
何があったからと言うわけではなく、
ただ仕事の仲間と、
仕事が終わったあと午後9時ごろから飲みに行った。
一軒目、二軒目、三軒目は深夜喫茶+居酒屋みたいな飲み屋さんで、
午前4時くらいまで飲んだ。
べらぼうに飲んで、べろんべろん状態。
酒はサントリーレッドのロック、
あの頃のおつまみは、ひたすら「貝割れ大根」。
当時の私の定番であった。
私一人でもサントリーレッド(かなり安いウィスキー)を2本ぐらいは飲んだ。
すでに理性は完全に喪失していて、死ぬほど、苦しかった。
飲んだ場所は名古屋大学の近くで八事という賑やかな場所の辺りだ。
飲み屋さんが閉店で外に出た私たちは、
フラフラしながら、仲間(三人ぐらいだったか)と一緒に、
八事の広い交差点に歩いていった。
深夜というより早朝、車の通りは極端に少なかった。
世界がぐるぐる回っていて、ひどく苦しかった。
苦しくて、苦しいのに、ひどく眠たくもあった。
どうにもこうにもしようがなく、暴れたくなった。
胸がむかむしながら、何を思ったのか、
私は、八事の交差点の真ん中に歩いていった。くるしい。
八事の交差点はあの頃、五差路で、
信号付きの交差点の真ん中に、
右折車のための星のような形のマークが書いてあった。
私はそのマークの中が、妙に、居心地が良さそうに見えて、
ごろんと仰向けに寝た。
大の字である。
40年前の早朝とはいえ、八事は名古屋の中心の一つ。
青信号で、車が猛スピードで交差点を抜けていく。
それでも交差点の真ん中のマークを踏む車は無いので、
轢かれはしなかったが、
交差点の真ん中のマークの上でうごめいている私を見つけた誰かが、
警察に電話をしたのだろう。パトカーがこちらに走ってくるのが判った。
あーやばいなぁ、逃げなくちゃ、
と思って、起き上がろうとしたが起きられない。
ドタバタしているうちに気持ちが悪くなった。
気持ちが悪くなって、
高級住宅街でもある八事の交差点の真ん中で、
私は、仰向けに大の字になって、
口から、貝割れ大根と安物ウィスキーが混じった噴水を吹き上げた。
顔も首周りも、
貝割れ大根と安物ウィスキーの混合物でまみれた。
それが鼻から入ってきてひどくむせた。
到着したパトカーは、
交差点の真ん中に止まって、私を通行車からガードしたが、
貝割れ大根と安ウィスキーが、
いったん胃の中に入って、
出てきた臭い液体で、頭と顔と首から上半身がまみれている私を、
パトカーに乗せようとはしなかった。
つまり逮捕はされなかった。
おかげで、私は無事に、
交差点を自分で歩いて追い出され、
「気をつけて帰りなさい。二度とこんなことしたらダメだ、死んじゃうぞ。」と、
と怒鳴られて、放置されただけであった。
あのあと、
私はどうやって家に帰ったのか、まったく憶えていない。
正直、朝起きた時は、二日酔いで頭が痛く最悪であった。
しかし、
その日の夜、また飲みに行ったのは言うまでもない。
酒は楽しい。飲んで騒ぐのは最高に楽しい。
酒は男の勲章、男は酒を飲んで何ぼである。
男は酒飲んでバカ騒ぎするごとに大人になっていく。
いい加減もう歳を取って、
大昔に飲んだ酒のことを思い出すと、懐かしくて。ため息が出る。
懲りない男