谷 好通コラム

2012年07月24日(火曜日)

やった方がいいだろうは、やってはいけない事 その2

いつもの洗車作業やコーティング作業は、
それぞれ作業マニュアルとしてかなり細かく規定されています。
これは、洗車やKeePer商品を高いレベルで一定に保つ為に、
どうしても必要なことです。
ただ車によって汚れ具合も違いますし、塗装状態も違うので、
必ずしも100%マニュアルどおりに作業を進めれば良いわけではありません。
難しい場合も稀(まれ)にあります。
しかし作業マニュアル自体にその想定も入れて作ってありますので、
よほどのことが無い限りマニュアルに従って作業をすれば大丈夫です。
あまりにもイレギュラーな状態である場合は、
イレギュラーな状態に合わせた別のマニュアルが(注意)としてあります。
最終的には「人間の目」で見てキレイになっていなければなりません。

 

マニュアルが崩れる場合、
それは手を抜く行為から始まるよりも、
多くの場合、マニュアルから外れた「やった方がいいかもしれない」ことを、
良いと思ってやりだすところから始まります。

 

 

たとえば店舗が暇な時、
お客様がいらっしゃって、洗車の注文をされた。
スタッフは洗車作業を進める中で、
塗装面に鉄粉が着いていることに気がついた。
お客様はお車を置いていかれたので、
スタッフは
「今日は暇だし、この鉄粉なら割と簡単に取れそうだから・・・」
と、洗車のマニュアルには入っていない無料の「鉄粉取り」をやってしまった。

 

そして、お客様が帰ってこられて、
最後の作業確認をお客様と一緒にする時、
スタッフが
「塗装に鉄粉が着いていましたので、洗車のついでにとって置きました。」
と言ったら、
お客様はツルツルになった塗装を触り、喜んで、
「ああ、ありがとう、あのザラっとしたやつ、気になっていたんだよ。」
とおっしゃっていただいた。
スタッフは
「ああ良いことをした。あんなに喜んでくれると嬉しい。」
と心の中で思った。

 

次にそのお客様がいらっしゃった時、
店には他のお客様もいっぱい来ていて、忙しい日だった。
そのお客様は、
「また、洗車に来たよ。で、また鉄粉着いちゃったから、取っておいてね」
そう言われたスタッフは、
「すいません、鉄粉取りは有料なんですが、いいですか?」
お客様
「何だ、この間来た時は、ただでやってくれたじゃないか。」
スタッフ
「いえ、あの時は暇で、他のお客様がいなかったものですから。」
お客様
「店が暇かどうかなんて私に関係ないよ。やってくれないなら、もういい。」
と言って帰ってしまった。

 

 

スタッフは、店が暇であったし、
着いていた鉄粉も、
簡単に取れるようだったので、
お客様もお車を置いていったので時間もあるし、
取ってあげても、誰も困らないし、
やって差し上げた方が、
お客様が喜んでくれるだろうから、
“やった方がいいだろう。”
そう思って
鉄粉取りを無料でやって差し上げたのですが、
次に来た時には、店が忙しかったので、やらなかった。
やるとしたら有料であるとお客様に言ったら、
お客様は怒って帰ってしまいました。

 

この場合、店が暇で鉄粉取りをやれたとしても、
また、”やった方がいいだろう”と思っても、
“やってはいけない事”だったのです。

 

少なくとも、お客様に了解を取らずやったことは完全に間違いでした。
親切心でやったものでも、了解を取らずに、黙ってやったことは、
お客様としては、
ここの店では洗車をすれば、
鉄粉を取ってくれるものと勘違いするのは当然です。
それをスタッフから「今日は忙しいから・・・」と言われれば、
「そんなことは私には関係ない。」と怒るのは当然でしょう。

 

店が暇ならば出来るけど、
店が忙しければ出来ない作業が、
お客様に提供する商品の中にあってはいけません。
店が暇でも、忙しい時でも、同じ作業内容と品質だからこそ、
お客様はいつでも安心して来店していただけるものです。

 

店が忙しい時と暇な時ではその作業内容が変わり、
品質が変わるような商品を、お客様は安心して買えるでしょうか。
私なら買いません。

 

作業マニュアルは、「やるべき事」のかたまりであって、
「やった方がいいだろう事」なんてことは何も書いてありません。

 

この場合、
「やった方がいいかもしれない」「やった方がいいだろう」は、
「やってはいけないこと」だったのです。

 

話は変わって、アイ・タック技研の商品開発の場合。
「やった方がいい事」と思われる事は、
すべて「やるべき事」です。
考える限りのありとあらゆる場合と場面を想定して、
あらゆるテストを行い、新商品の性能と安全を確かめます。

 

今日は、ある商品の冬季テスト、寒冷地テストを行った。
あるレンタカー屋さんで「冷凍車」を借りてきて、
マイナス15℃まで冷やせる冷凍庫の中で、
プラスマイナス3℃程度に冷やした、本物の車のボンネットと
同じように冷やしきったケミカルや道具を使ってのテスト。

 

夏季の温度で性能がキチンと出ても、
30℃以上の差がある冬期では何らかの性能の差が必ず出るので、
それを確認してより良い商品に仕上げていくのです。

 

夏季に完成した商品ならば、
今回のように冬季を想定した環境を作り、
冬季に完成する商品ならば、
開発室に付属した車が入る部屋を、
ストーブや加湿器を使って夏季の環境を作ってテストします。
外気が4℃くらいしかない時に、
温度35℃以上湿度60%の部屋で仕事をするのは、
半端ではない暑さです。
ならば、夏季のテスト、
つまり冷凍車でのテストは涼しくていいかというと、
夏季の温度に慣れた体に0℃の温度はこれまた半端でなくきついのです。

 

ここまでやるメーカーは、まず無いと思いますが、
やった方がいいに決まっていますので、やるべきと考え、やります。
商品開発においては
「やった方がいい事は、やってはいけない事」とは全く逆なのです。
技術開発研究所のスタッフは、本当に大変なのです。

 

 

床は、絶対に傷をつけないと約束をしているので
ダンボールでしっかりと保護している。
事情を話した上で、あるレンタカー屋さんが内緒で貸してくれるので、
約束は守らなくてはならない。

 

 

研究所のスタッフは完全防寒です。

 

 

ウィンドブレーカー一つで中に入った私は15分でギブアップ。
気温30℃の外に出ると、メガネが曇り、カメラのレンズも曇ってしまいました。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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