谷 好通コラム

2012年06月09日(土曜日)

一度でいいから、桜を追って北上してみたい。

5月の初めの頃だったろうか
BSテレビで、沖縄から北海道まで桜の開化を追って北上する旅を放映していた。

 

桜を追って日本を北上する旅。
そういうのっていいですね。
一生に一度でいいから、
桜の花を見るだけのための旅を
一ヶ月とか二ヶ月もかけてやれたら、
ものすごく嬉しいだろうなと空想する。

 

何の役にも立たない自分のためだけの旅。
死ぬ前に思い出して、あれは良かったな~としみじみ想い、
生きてきて良かったと涙がにじむのは、そんなことかもしれない。

 

人は、人の役に立ち、人に必要とされていると、幸せを感じる。
人は本来的に、人のことを想い
人に与えることを幸せと感じるやさしい生き物なのだと思う。
エゴもあるが、それは与えた時に、
奪われたと感じさせられたような経験があって、
奪われた悲しさと悔しさが、
奪う心に変化させた心の残骸なのだろうと思う。
本来的に人は、人の役に立ち、
感謝され、愛され、人に必要とされることで幸せになれる生き物、なのだ。

 

それが、人と人以外の生き物との確定的な違いなのかもしれない。

 

しかし、人を思うやさしさが、実は苦悩の元でもある。
やさしさの裏返しである自分のエゴと、
やさしさの裏返しである人のエゴが、ぶつかって苦悩が産まれる。
だから、人を思うやさしさを、意志を持って強引なまでに押し通すと、
解決できないことが解決できるものだが、
それはそれで大きな心の負荷を意志の力で越えたところで得られるものだろう。

 

桜は美しいものの代表であり、はかなさの代表でもある。
そのはかなさの前の美しさだけを次から次へと渡り歩いていくのは、
人のやさしさだけを次から次へと渡り歩くのに似ているのではないだろうか。
何の苦悩も無く、心の負荷も無く、心地よく、
死ぬ前にうつろに思い出したくなるような旅になるに違いない。

 

桜を求めて日本を北上する旅。
本当に、一度でいいからしてみたい。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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